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歪められた信念
広間にいる全員の目が聖徳太子の腕に集まった。血が滴るワイヤーに。
「いきなり腕をつかむとは、どういうことだ!」聖徳太子は怒鳴るが、龍馬が腕を離すことはない。
「信じていたのに……。まさか、あなたが犯人だなんて」
「犯人? 私が?」
「そうです。紙片を見て確信しましたよ」
「ちょっと待った。坂本殿、私たちにも分かるように説明してくれるかな」
龍馬は足利尊氏の言葉に頷いて応える。
「どこから話せばいいか……。そうまずは紙片からにしましょう。あの紙には『一対一で会いたい』と書かれていた。これが意味するのは一度会ったが再度会いたいということです。これで一緒に行動していた黒田官兵衛は除外されます」
龍馬は一息つくと続ける。
「次に織田信長の殺され方です。服に乱れがなかったことから、反撃する間もなく殺されたことになります。では、不意打ちをできるのは誰か? 彼が武将や軍人に対して油断するはずはありえません。すると残るのは聖徳太子、あなただけです」
「それは坂本、お前の想像にすぎない!」聖徳太子は食い下がる。
「では、その血の付着したワイヤーの説明はできますか?」
「それは……。分かった、これ以上言い訳しても無駄だろう。認めよう、私が犯人だ」
広間中がどよめく。
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