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「でも、どうして分かった? 凶器がワイヤーだと」
「遺体を観察したときに気づいたんだ、切断面がギザギザになっていることに。普通、刃物で切ったら直線になるはずだ。刀で切ったように。それに事件前は紫色だったブレスレットの装飾が緑色に変わってた。その時思ったんだ。一度ブレスレットを分解する必要があったのはなぜか? それは凶器を隠すためではないかって」
「すべてお見通しですか……。そうなると『一対一で会いたい』という紙片を渡したタイミングも?」
「おおよそは。織田信長が北条政子を襲った時、あなたは織田信長に反抗した。そして、胸倉をつかまれた、その瞬間では? あの時、織田信長の顔に一瞬困惑が浮かびましたから」と龍馬。
聖徳太子はうなだれた。「うまくいったと思っていたのですが……。私の『和を以て貴しとなす』という信念を歪める織田信長を葬れたのに」とつぶやいて。
「二人で話しているところに割り込んですまないが、聖徳太子はどうなるんだ? 異次元だったかに永遠に飛ばされるとのルールだったはずだが……。まさか、ゲームマスターがのこのこと出てきて『今から異次元に飛ばします』と宣言することはあるまい」
アインシュタインは周りを見るが、誰も答えるものはいない。静寂が続いた。しかし、その静けさはすぐに破られた。聖徳太子のブレスレット型デバイスから流れる音声によって。
「さあ、聖徳太子はこれで脱落だから、早速異次元に飛んでもらうよ」
聖徳太子の体が徐々に透明になる。おそらく、ゆっくりと異次元に飛ばされているのだろう。龍馬はそう考えた。
ついに顔も透明になり始めた時、聖徳太子はこう言った。「織田信長の顔を……」と。龍馬たちがその続きを聞くことはなかった。
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