歪められた信念

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「みんな、なんで喜ばないのかしら。ライバルが二人減ったのよ?」  無神経すぎると龍馬は思った。人が二人死んだのに、北条政子の考えが理解できなかった。同じ考えの持ち主もいたようで、黒田官兵衛が北条政子の頬を叩く。「さすが尼将軍、物騒な考えだ。次は貴様の番だ」と黒田官兵衛は捨て台詞を吐くと広間を去る。龍馬は二人の会話を聞きつつも、関心は違うものに向いていた。「織田信長の顔」という聖徳太子の残した言葉の意味に。異次元に飛ばされる間際に残したのだから、重要な意味があるに違いない。 「信長の顔、ですか」ダーウィンは首をかしげる。「死者の顔に価値があるようには思えませんが」 「私も同意見よ。それよりも、死者を丁重に弔うべきよ。ずっと廊下にいたら可哀想だわ」とナイチンゲール。  龍馬は「看護婦らしい考えだな」と思うと同時に、床にポツンと落ちているブレスレット型端末に目をやる。それは敗者――つまり、聖徳太子のものだった。どうやら、敗者は異次元に飛ばされるが、デバイスは違うらしい。聖徳太子がいたという証に龍馬は懐に入れる。必ずゲームマスターを暴いて見せると誓って。
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