偉人によるデスゲームの始まり

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「さて、ルールについては理解してもらえただろう。諸君もお気づきの通り、ここには異なる時代、異なる国の者が集まっている。言語については自動翻訳するから心配しなくていい。知識についてはあとの時代の者ほど有利になってしまうから、知識差で決着がつかないようにブレスレットデバイスを通して情報を提供しよう。もちろん、他の参加者の情報もだ。素性の分からない者同士で殺し合いをしても面白くないからな。では、検討を祈る」  それを最後に不気味な声は止んだ。 「話は早い。みな、切腹しろ」  それは不遜な男のものだった。偉人と呼ばれる者にこのような人物がいるのだろうか? 龍馬がブレスレット端末を見るとこう表示されていた。 名前:織田信長 経歴:戦国時代の武将。1534年生まれ。…… 名言:「泣かぬなら 殺してしまえ ホトトギス」  なるほど、これがあの織田信長か。龍馬はその振る舞いに納得した。しかし、名言が「泣かぬなら 殺してしまえ ホトトギス」とは。当人が言ったかは別として、誰にでも性格が分かるフレーズだろう。 「ちょっと待った。それは無理ですよ。何せ、ルールで一日に死ななければならないとある。今すぐ全員死んだらルール違反ですよ」と口ひげを生やした人物。  ブレスレットには「ダーウィン」と表示されていた。自然科学者か。「その通り」とアインシュタインが――ブレスレットによれば物理学者らしい――続いた。学者はルールの呑み込みが早い。デスゲームとは言え、武人だけが強いとは言えないかもしれない。ルールを上手く使えば文化人や学者にも勝つ可能性がありそうだ。 「言い争いはそこまでにしましょう」  声の主は聖徳太子だった。名言は「和を以て貴しとなす」。なるほど、不和を嫌う人物らしい言動だ。 「賛成だな。我々の目的は紛れ込んだゲームマスターをあぶりだすこと。そうなれば、リーダーを決め一致団結すべき。織田信長殿がふさわしいと思うがいかがかな」と軍師の黒田官兵衛。  端末にはこう表示されていた。黒田官兵衛の名言は「人は城、人は石垣、人は堀。情けは味方、仇は敵」。そしてこう続いていた。と。
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