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「そろそろオリエンテーションのグループ分けじゃね?」
池田くんがぼそっと言った。
いつも声のトーンが均等だから、池田くんは他の男子より大人っぽく感じる。
「行事予定で見たけど、1泊2日で、確かバーベキューするんだったよね?」
「男女でグループを作って行動するらしいよ。わたしも近所のお姉さんに聞いた」
「肝試しもあるよ」
「肝試し? そんなの学校パンフレットに載ってなかったよ?」
「先生たちがマジで怖がらせてくるって兄貴たちが言ってた」
「俺も勇の兄さんからそれ聞いた」
話しながら教室に入ったところで、誰かが囁くのが聞こえた。
「葉月くん、堀北さんと一緒」
だから、池田くんもわたしも一緒だってば!
池田くんの予想通り、朝のホームルームで木崎先生がオリエンテーションのプリントを配って、グループ分けの説明をした。
「オリエンテーションはグループごとに行動しまーす。時間作るので、このクラスは22人だから、4人グループが3組と5人グループが2組な。4人グループは男子2、女子2になるように。5人グループは、男子が多いから男子3、女子2だな」
男女のグループと聞いて教室内がざわざわする。
こういう青葉高校特有の行事を知らない子たちもいるみたいだった。
「センセー、これはくじじゃないんですか?」
誰かが声をあげた。
「一番最初の行事が、全然話したこともないもん同士のグループになったらキツいだろ?」
木崎先生は腕時計を見ると話を続けた。
「今、9時15分だから30分までに話し合って決めるように。席立っていいけど、声は小さく。じゃあ、始め!」
中学に入ったくらいから、何となく男子と女子は話さなくなったけれど、青葉高校は男女の仲がいいことで有名だった。
それは、他の学校ではないようなイベントが多くあって、その度に男女でグループを作ることで、話さずにはいられない環境になるからで、夏休み前くらいには自然と男女が仲良くなっているらしい。
近所に青葉高校に通っていたお姉さんがいて、それを聞いて楽しそうだと思ったのが、青葉高校を目指したきっかけでもあった。
「ちょうど4人だよね? お昼食べてるメンバーで」
葉月くんがそう言って声をかけてくれた。
「いいの?」
「逆にだめなの?」
そんなわけない!
「い、池田くんはいいのかな?」
「あいつは多分、何も考えてない」
「瑛里華に聞いてくる」
瑛里華のところには男子がいて、どうやら同じグループにならないか誘われてるっぽかった。
ある意味これって、公開ナンパみたい……
間を押しのけて、瑛里華の前に出た。
「お昼のメンバーでグループにならないかって。どう?」
「うん!」
瑛里華が笑顔を見せたので、そのまま自分の席の方まで連れて来た。
葉月くんの席の横には既に池田くんがいて、わたしと瑛里華に気が付くと、「よろしく」と言った。
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