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オリエンテーション
オリエンテーション出発の朝は、普段の制服姿と違って、みんな私服姿だった。
行くのが山の中の施設だから、ほとんどの子がTシャツに長袖パーカー、ジーンズという服装だったけれど、いろんな色でいっぱいだった。
「真優!」
呼ばれた方を向くと、瑛里華がにこにこして立っていた。
瑛里華は、グレーのジップアップパーカーに中は黒いTシャツを着ていて、下も黒いジーンズだった。
どんな服を着ていても、瑛里華は目立つしかわいい。
でも、地味すぎない?
わたしですらボーダーのTシャツに水色のジップアップパーカーなのに。
まるでわざと目立たないようにしてるように見える。
「髪の毛、お団子にしてるの初めて見た!」
「おろしてたら邪魔だからね」
瑛里華の茶色い髪の毛は器用にまとめられて頭の先端にかわいくお団子になっている。
わたしはというと、ただ一つに結んでポニーテールにしているだけだった。
「真優もやってみる?」
「わたしの髪の毛、ストレートでまとめるの難しいから」
「やらせてくれる?」
「いいよ」
隅っこに移動すると、瑛里華はわたしのポニーテールを一度ほどいてから、また結びなおし、慣れた手つきでくるくると巻いてお団子を作ってくれた。
「お揃い!」
そう言って見せてくれた小さな鏡の中には、瑛里華と同じ髪型の自分が映っている。
「ありがとう!」
集合場所でクラスごとに点呼済ませると、バスに向かった。
2人揃ってバスに乗ろうとした時、隣のクラスの男子が瑛里華とわたしを見て「じゃない方が真似してる」と言うのが聞こえた。
せっかくいい気分でいたのに!
そいつのことは今度から「名前を知らなくていいヤツ」と呼ぶことにした。
バスに乗ると、空いている席を探しながら奥へ進んでいった。
既に座っていた葉月くんの横を通り過ぎる時、目が合った。
葉月くんが「それかわいい」と言ってくれた。
あのね、葉月くん、いろいろいろいろ、ホント、反則だよ!
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