59人が本棚に入れています
本棚に追加
朝、「おはよ!」と声をかけてきてくれたのが堀北瑛里華。
出席番号順で座っている今、藤代の「ふ」で始まるわたしの後ろに、堀北の「ほ」で始まる瑛里華が座っている。
瑛里華は、目が大きくて、まつ毛も長い。そして二重。
おまけに手足も長くて、スラっとしていて、テレビに出てる女優さんよりきれいなんじゃないかと思う。
話し方も、ちょっとした仕草も、女の子の中の女の子って感じ。
だから男子が、みんな瑛里華を好きになるのは仕方がない。
わたしが男子なら間違いなく瑛里華を選ぶ。
青葉高校の入学式の日、瑛里華に話しかけられたのが仲良くなったきっかけ。
後ろからトントンと指先で肩を叩かれて、振り向くと、少し恥ずかしそうに、瑛里華が聞いてきた。
「堀北瑛里華です。良かったら連絡先交換しませんか?」
なんで敬語?
一番最初にそう思って、
「うん。交換しよ!」
そう答えた後、次に向けられた笑顔に、同性なのにどきんっとしてしまった。
「初めて話した日、今日、今、この教室で学園ドラマの撮影中?って、思ったんだから」
「そんなこと思ってたの?」
「だって瑛里華、くるってしてる茶色の髪の毛も、きれいな茶色い目も、とにかくかわいかったから。そんなんで笑顔とか反則」
瑛里華が笑う。
「何もあげられるもの持ってないよ~。髪の色と目はね、祖母がイギリスの人だから、隔世遺伝。このせいで小さい頃、男の子によくいじめられたよ。髪の毛引っ張られたり。だからずっとベリショにしてた」
きっとその男の子は、瑛里華のことが好きだったんだろうな、って想像がつく。
わたしは、瑛里華とは正反対の、真っ黒でストレートの髪の毛に、その他大勢の中で埋もれちゃうくらいの平凡な顔。
だから、瑛里華といつも一緒にいるわたしのことを、男子たちは『堀北じゃない方』って呼ぶようになった。
葉月くんを除いて。
最初のコメントを投稿しよう!