友達、始めます

5/5
前へ
/30ページ
次へ
予告された通り、朝のホームルームで席替えが行われることになった。 木崎先生はわざわざクジを作ってきたらしく、箱の中の紙を順番に取っていくようみんなに言った。 「クジ引いたらまだ見ないように。『いい』って言ってから見るんだぞー。見た後は、速やかに黒板に書いてある数字と同じ場所の席に移動すること。目が悪いとかそう言うのは後で調整するから」 出席番号が1番の人から順番に教卓まで行ってクジを引いた。 先生が「いい」と言うまでクジを開けないから、誰がどこに座るのか、自分の席がどこなのかもわからない。 教室内はザワザワし始めた。 わたしの番になって、箱の中の残り少なくなったクジを一つ引いた後、席に戻る前に先生をチラっと見たら、みんなを見ながら嬉しそうな顔をしていた。 同中で仲の良かった友達が1組にいて、1組の担任の先生は、若くてかっこいいと喜んでいたけれど、木崎先生も悪くないとわたしは密かに思ってる。 みんながクジを引き終わったのを見て、木崎先生が言った。 「自分の番号見たら、静かに移動して」 小さく折りたたんである紙を開いて、黒板に書いてある数字と見比べる。 わたしは窓際の一番後ろだった。 これはアタリ。 振り返ると、瑛里華が自分の番号を見せてくれた。 瑛里華は真ん中の一番後ろだった。 葉月くんはどこになったんだろう? 「真優、またね」 「うん。瑛里華も」 荷物を持って新しい席に移動した。 葉月くんはどこなのか探していると、瑛里華の隣に立っているのが見えた。 みんながガヤガヤと席を移動する中、わたしの隣に立った男子が言った。 「何だ、堀北じゃない方の隣か。ハズレ」 話したことのない男子だったけれど、そう言われてしまったら、愛想笑いしかできない。 一番端っこの席だから、次に席替えがあるまで、隣はずっとひとりしかいない。 コイツがずっと隣の席ということになる。 コイツの隣はずっとわたしということになる。 ごめんね、「じゃない方」で。 本当は名前を覚えてたけど、ずっと「コイツ」って呼んでやると決めた。 「変えてやるよ」 その声と同時に、その男子が持っていた席番号の書かれた紙を葉月くんが取ると、自分の持っている紙を代わりに渡した。 自分が渡された紙に書かれた番号と、黒板の番号を見比べ、次にその場所を見てから男子が言った。 「え? これ? マジ? アタリじゃん!」 「言うなよ」 「神!」 「声、おっきぃ」 「ごめん」 嬉しそうに瑛里華の隣に向かう男子に変わって、隣に葉月くんが座った。 「よろしく」 「いいの?」 「何が?」 「瑛里華の隣だったんじゃないの? それアタリなんでしょ? わたしは……ハズレって」 「何それ? アタリとかハズレとか変なの」 「……うん……変、だよね」 一番端っこの席は、次に席替えがあるまで、隣はずっとひとりしかいない。 だから、隣はずっと、葉月くんになった。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

59人が本棚に入れています
本棚に追加