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予告された通り、朝のホームルームで席替えが行われることになった。
木崎先生はわざわざクジを作ってきたらしく、箱の中の紙を順番に取っていくようみんなに言った。
「クジ引いたらまだ見ないように。『いい』って言ってから見るんだぞー。見た後は、速やかに黒板に書いてある数字と同じ場所の席に移動すること。目が悪いとかそう言うのは後で調整するから」
出席番号が1番の人から順番に教卓まで行ってクジを引いた。
先生が「いい」と言うまでクジを開けないから、誰がどこに座るのか、自分の席がどこなのかもわからない。
教室内はザワザワし始めた。
わたしの番になって、箱の中の残り少なくなったクジを一つ引いた後、席に戻る前に先生をチラっと見たら、みんなを見ながら嬉しそうな顔をしていた。
同中で仲の良かった友達が1組にいて、1組の担任の先生は、若くてかっこいいと喜んでいたけれど、木崎先生も悪くないとわたしは密かに思ってる。
みんながクジを引き終わったのを見て、木崎先生が言った。
「自分の番号見たら、静かに移動して」
小さく折りたたんである紙を開いて、黒板に書いてある数字と見比べる。
わたしは窓際の一番後ろだった。
これはアタリ。
振り返ると、瑛里華が自分の番号を見せてくれた。
瑛里華は真ん中の一番後ろだった。
葉月くんはどこになったんだろう?
「真優、またね」
「うん。瑛里華も」
荷物を持って新しい席に移動した。
葉月くんはどこなのか探していると、瑛里華の隣に立っているのが見えた。
みんながガヤガヤと席を移動する中、わたしの隣に立った男子が言った。
「何だ、堀北じゃない方の隣か。ハズレ」
話したことのない男子だったけれど、そう言われてしまったら、愛想笑いしかできない。
一番端っこの席だから、次に席替えがあるまで、隣はずっとひとりしかいない。
コイツがずっと隣の席ということになる。
コイツの隣はずっとわたしということになる。
ごめんね、「じゃない方」で。
本当は名前を覚えてたけど、ずっと「コイツ」って呼んでやると決めた。
「変えてやるよ」
その声と同時に、その男子が持っていた席番号の書かれた紙を葉月くんが取ると、自分の持っている紙を代わりに渡した。
自分が渡された紙に書かれた番号と、黒板の番号を見比べ、次にその場所を見てから男子が言った。
「え? これ? マジ? アタリじゃん!」
「言うなよ」
「神!」
「声、おっきぃ」
「ごめん」
嬉しそうに瑛里華の隣に向かう男子に変わって、隣に葉月くんが座った。
「よろしく」
「いいの?」
「何が?」
「瑛里華の隣だったんじゃないの? それアタリなんでしょ? わたしは……ハズレって」
「何それ? アタリとかハズレとか変なの」
「……うん……変、だよね」
一番端っこの席は、次に席替えがあるまで、隣はずっとひとりしかいない。
だから、隣はずっと、葉月くんになった。
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