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午前中の授業が終わると、まだ教科書を片付けている途中のわたしのところへ、瑛里華が笑顔でやってきた。
「真優、お昼どこで食べる?」
「嬉しそうだね?」
「お腹すいてるから~」
「図書館前がいいな」
「あそこ好きだね」
オープンキャンパスで来た時、入学したら図書館前のスペースでお弁当を食べてみたいと思っていた。
高校に入ってからいろんな夢が叶っている。
「どこでお弁当食べてもいいとか、青葉高校って、そういうとこいいよね」
「校則もゆるいもんね。わたしのこの髪の色も先生に何も言われない」
「え? 地毛、なんだよね?」
「地毛だよ。でも中学の時は地毛証明出してても、時々知らない先生に注意された」
「それってひどいね」
「だからこの高校入ったんだぁ」
「わたしもここに入れて良かった。瑛里華にも会えたし」
テーブルの上にお弁当を広げながら瑛里華が言った。
「真優の隣、葉月くんだね」
本当だったら葉月くんは瑛里華の隣だった。
「そのことなんだけど、瑛里華は今の席、どう?」
「どうって?」
「実はね――」
クジのことを話そうとした時、テーブルの上に2つの影が落ちた。
「1年? かわいいね。名前何て言うの?」
見るからに1年じゃない、大きな男子が立っている。
「堀北……」
「下の名前は?」
「……瑛里華」
「あの――」
「瑛里華ちゃんじゃない方には聞いてないから」
「俺らバレー部なんだけど、マネージャー探してるんだよね。瑛里華ちゃんみたいな子がなってくれたら、練習もがんばれるんだけどさ」
「部活には入る気ないので」
「なーんで?」
「理由は、個人的なことなので言う必要ないと思います」
「すみません、瑛里華はやる気ないみたいなので、他をあたっていただけませんでしょうか?」
「だからー、瑛里華ちゃんじゃない方には聞いてないから」
いわゆる不良っていうわけじゃない。普通の生徒なんだけど、背が高いし上級生だから怖く見える。
周りに先生がいないか見渡したけど、生徒しかいない。
それにこっちを見てる人もいなくて、どうしたらいいのかわからなくなってしまった。
こうしている間にも、「どこ住んでるの?」とか「彼氏は?」とか、瑛里華は質問攻めにあっていた。
瑛里華は適当に受け流していたけれど、そういうのを察してどこかに行ってしまう気配もない。
困っていると、葉月くんと、同じクラスの背がやたら高い池田くんが、その人たちの後ろに立った。
先に声をかけたのは池田くんだった。
「先輩、何やってんですか? その子ら、オレのクラスの子なんですけど」
「お前、誰だよ?」
「昨日、バレー部に入部届け出した者です」
「なんだ1年か。今俺らが話してるんだからあっち行けよ」
「先輩、そんなこと言って大丈夫ですか?」
池田くんの隣にいた葉月くんが明るく話しかける。
「何だ? お前もバレー部かよ?」
「いえ、違いますけど、こいつとは友達で」
「だったらまとめてひっこんでろよ」
「そういう言い方、池田先輩嫌いなんじゃないかな、ってちょっと思ったりしたんですけど」
「池田って……」
「3年の池田義正と2年の池田基樹はオレの兄貴です。嫌がる1年をナンパしてたって伝えときます」
「あ、いや、違う。ナンパじゃない」
「じゃあ、何ですか?」
「いやいやいやいや、絶対ナンパじゃない」
「世間話」
「うん、世間話してただけ」
「もう、2人に近づかないでください」
「近づかない。話かけないから」
先輩が2人ともいなくなるのを見送ると、葉月くんはにっこり笑った。
「俺らも、ここで食べていい?」
「どうぞ」
返事をしたのは瑛里華だった。
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