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理玖くんと指を絡めてしっかり手を繋ぎ、並んで一緒に会社に向かうが、会社の同僚たちには私たちの関係を公にしていないため、近づくにつれてその手はいつも離さなければならない。
それが少しだけ寂しいと感じているのはどうやら理玖くんも同じようで、いつも離す前に駄々をこねる。
「最近陽葵ちゃんそのピアスずっと着けててくれるね」
「まあね。誰かさんが着けてほしいって駄々こねてうるさいからね」
「まぁまぁそう言わないでよ。それを陽葵ちゃんが着けてくれてるだけで俺のって感じがグッとくるんですよ」
私の耳に着いているピアスは耳たぶに沿うようなサイズのフープピアスだ。
それは実は理玖くんの耳に輝くピアスとお揃いになっている。
これは私たちが大学生の頃に付き合っていたタイミングで記念日にお揃いで購入したものだ。
お互いにこのピアスを捨てられず、ずっと持っていたようで再び活躍する日が来るなんて思ってもいなかった。
「陽葵ちゃんも捨てないでいてくれたのがすごく嬉しかった」
「理玖くんこそ。ずっと持っててくれたんだね」
「そりゃ大好きな陽葵ちゃんとお揃いのピアスだからね。簡単に捨てられるはずないよ」
「だいぶ引きずってくれてたんだね」
「だいぶなんて言葉で片付けられないくらいには引きずってたよ。俺相当重たい彼氏だからね」
「それは十分すぎるくらい伝わってます」
理玖くんの見た目の整った顔立ちや人当たりのいい性格は完全に外仕様となっていて私の前では全然違った。
本当は嫉妬しいで、まるでお母さんのように世話焼きで、私をダメ人間にさせたいのかと思うくらい甘やかしてくれる。
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