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理玖くんからの言葉を聞いた私は思わず唇を噛み締め、にじみ出る涙が零れないように我慢する。
こんな場所で泣くなんて、だめだ。
だけど嬉しさが先行し嬉し涙が止まらない。
そんな私の異変に気づいた理玖くんは私の腕を取ると突然歩き出し、使っていない会議室に連れてきてくれた。
「ここでなら泣いてもいいんじゃない?俺しかいないし」
扉の鍵を閉めながらそう甘く囁いた理玖くんの言葉を耳に私は彼に抱きついた。
爽やかな甘さの含む香りが私を包み込み、理玖くんは何も言わずに私の身体をギュッと抱きしめてくれる。
大きな身体に包み込まれながら私の頬には静かに涙が伝った。
その間、理玖くんはただ何も言わずに私の頭を何度も撫でてくれる。
髪の毛をすくうその指が心地よくて自然と涙が治まってきた。
涙目になったまま腕の中で理玖くんを見上げると、頬を伝った涙をそっと親指で拭ってくれる。
「落ち着いた?」
「うん⋯ごめん。会社で泣くなんて社会人失格だ」
「そんなことないよ。そんだけ一生懸命仕事に向き合ってたってことじゃん」
「理玖くんは私に甘すぎないかな」
「彼女だから甘やかしたくもなるよ」
私の腰に腕を回したままの理玖くんはグッと力を入れるとそのまま私の額にちゅっと触れるだけのキスを落とす。
会社でこんなことをしている私たちはなんて不真面目なんだろう。
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