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青の世界へ
今夜、浩太に逢えるかもしれない。いや、なんとしても逢う。私の心は浩太への想いで溢れている。
八月の終わり。日は落ちたというのに蒸し暑い。だけどそんなこと気にならないほど、今の私は浩太のこと以外は何も考えられなくなっている。
アパートを出て真っ直ぐに進んでいき突き当たりを東に折れる。そこには細い川に沿った道があり、進んで行くと公園の照明灯が見えてきた。
私は公園の前で立ち止まりうす暗い空を見つめた。
今日は曇りだった。月が見えるとは限らない。
徐々に夜が深くなっていく。
月はまだ姿を現さない。
時間だけが過ぎていく。
焦れる思いで胸に手を合わせて祈る。
月よ。どうか、どうか、早く現れて。
祈りながら、じっと空を見つめていた。
やがて、闇のなかを薄く照らす微かな月明かりが見えた。
雲がゆっくりと流れていくと、まんまるな月が姿をみせた。
願いが通じた!
ほっとして月を眺めている私の前に、すっと、案内人が現れた。
髪の毛が微かに揺れて、彼の全身は青く光って見える。
夢じゃなかった! 浩太に逢える! 私の胸が躍る。
夜遅いが公園にはカメラやスマホで月を撮影している人々や眺めている人々がずいぶんいる。その中で青光りしている案内人は異様だが、私以外の人には見えていない様子だ。
誰も彼を気にする人はいない。
案内人は私を一暼すると公園のなかへと進みどんどん登っていく。
遊具のある公園を抜けて登っていくと桜の木の公園に出た。案内人は私が追いつきそうになると前へと進む。さらにその上の公園の名前が刻まれた石碑がある頂上まで来た。息が切れる。
眼下には街並みの夜景が煌いて見える。
私が息を整えていると、案内人は城跡公園の奥にある林の中へと姿を消していった。
待って。
私は慌てて跡を追う。
獣道のようなところを必死に見失わないように追いかけると、案内人が止まって待っていた。
私は辺りを見渡した。林の中から微かに公園の灯りが見える。
「ここ?」
私の問いに案内人は頷くと、ふっと消えてしまった。
ここで逢えるのかな? と思っていると、ふんわりと私の身体は浮いていった。吸い寄せられるかのように上へ上へといく。
恐怖感はなく、ふわふわとして背中に羽が生えて飛んでいる感じでむしろ気持ちがいい。
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