8、退職の日

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8、退職の日

 12月31日付で真白は退職することになっていた。 その前に有給休暇の消化をした。最後の日は仕事納めの12月27日。  その日は、午前中で業務を終え、午後は後片付けをする。午後3時に部署の皆と「良いお年を」と言い、終わりだ。  そう思っていたら、意外なことに、たったの8ヶ月で会社を去る真白のために同じ班のメンバーが送別会の席を設けてくれた。場所は、会社近くの居酒屋だった。  真白は、先輩たちの前で挨拶をした。 「少しの間でしたが、いい勉強をさせていただきました。楽しかった。でも、私は私の国に帰ります。ありがとうございました。」 「クニって、何処の出身よ?青森だっけ?」と一番年が近い男性社員に混ぜっ返された。  真白は「変な人の国」と笑って答えた。 山口班長から花束を渡された。真白は、みんなに向かって敬礼をした。 「お世話になりやした!」  挨拶が終わると只の宴会になった。 山口が真白の側に近づいて来て小声で「後で、話せない?」と囁いた。 真白は、こくんと頷いた。 花束を持って、真白が店を出ると道路の向こう側で山口が待っていた。二人で駅までの道を歩きだした。歩きながら山口は小さな声で言った。 「私のことが好きだったの?」 「知ってたくせに・・・過去ですからね。今は分かりません」
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