8、退職の日

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「私は年が離れているから趣味じゃないんじゃないの?」 この言葉に真白は驚いた。 「山口さんこそ、私は趣味じゃないんでしょう?」 「・・・二人とも騙されていたみたいだ。松原美沙に」 真白は、ああ、そうだったのかと思った。思っただけだった。 「山口さんは、それでも松岡さんと婚約までしたんでしょう?それがどうだって言うんですか。今更ですよ!」 「そうだな。今更・・・だな」 真白は、山口を睨むと吐き捨てた。 「私を見下しておいて、なにを今更言ってるのよ!高尾山で美沙と一緒になって私を見て笑っていたでしょ!あんな笑い顔をする人は、それだけで嫌いになります!」 「ごめんなさい。調子に乗っていた・・・ああ・・・俺、何やってんだろ」と言うと、山口は頭を抱えてしゃがみ込んでしまった。 自分よりずっと年上の男が、叱られた子供のようになってしまった。 真白は、どうしようかと考えた末に一つの提案をした。 「高尾山に登りませんか?薬王院に初詣です」 山口は、顔を上げて下から真白を見上げるとポカンとした。 「初詣?」 「はい。1月3日にしましょう。朝早くから1号路を登って行くんです。人気なんですよ。高尾山の初詣は。人が沢山です。だから3日。山登りしながら話しましょう」
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