3、趣味じゃない

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3、趣味じゃない

 真白をスパイとして使っている女に派遣の松原美沙という女がいた。 美沙は美人だ。一般企業仕様の美人だ。控えめな感じで、さり気なく「お嬢様感」を醸し出していた。ブランドのロゴ入りバッグにスカーフ。仕事には不向きなエレガントな長い髪。化粧もベーシックだ。 27歳で「そろそろ結婚した~い」と冗談めかして言う。  美沙が、やたらと「山口班長」の事に探りを入れてくるので真白はイヤな予感がした。美沙が「恋愛の猛者」だということは分かっていた。  この会社の男は理系おぼちゃま+オタクが多い。  美沙の手に適ったら、ひとひねりだ。陰では今まで渡り歩いてきた派遣先の男を扱き下ろして、自分を「高嶺の花」だと言い切る嫌な女が美沙だ。  真白が危惧した通りに、ひとひねりで山口さんは陥落した。 数か月で婚約までしてしまった。  本当に美沙はイヤな女だった。真白に言ったのだ。 「ごめんね。横取りして。でも、彼もあなたの気持ちに気付いていたみたい。趣味じゃないって・・・それじゃあ仕方ないよね」  なによりも、この美沙の言葉に真白は傷ついた。 山口に真白が思いを寄せていたことがバレていたのも恥ずかしかった。  それよりも山口が上から目線だったことに言いようのない気持ちを抱いた。
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