1、私といふもの

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1、私といふもの

 どうしてこうなってしまうのだろう・・・  私は美人ではない。でも、性格は明るい。無口な方だけれど、ニコニコするを心がけている。ニコニコしているから、私に何を言っても大丈夫だと周りの人は決めつけている。 たとえ、冗談だとしてもバカにされているような言い方をされると凹む。 外に見せている笑顔の裏には、泣いている私が居る。誰も気が付かない。  私は未だ22歳の社会人1年生。男子学生から、まともに女扱いをされた事も無い。彼氏もいないまま大学4年間は終わった。  男の人を好きになったことはある。 でも、相手は誰一人として私が女に見えていなかった。  そんなことを考えながら、滝川真白(たきがわましろ)は、清滝駅のホームに降り立った。 高尾山に来たのは二度目だった。前回はケーブルカーに乗って高尾山駅まで行った。軽いハイキングだった。今日は山裾の一号路から山頂まで登る。  一人で最後まで登る。元々、運動は得意ではない。山登りなんて興味もない。これは、結構な修行だなと思う。  でも、今の真白には、この行為が必要だった。 「区切り」を付けたかったのだ。  季節は冬に近づいていて、行楽シーズンとは言えなくなっていた。流石の有名観光地、高尾山も人が連なるという感じではなかった。
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