罪悪感と救済の幻想

2/4
前へ
/4ページ
次へ
数日後、老人は拓也をある古びた教会へと導いた。そこは、かつて人々の祈りの場であったが、今では廃墟と化していた。老人は教会の奥へと彼を誘い、そこで奇妙な儀式を始めた。 蝋燭の明かりが揺らめき、怪しげな呪文が老人の口から紡がれる。拓也はその光景を見つめながら、何かが変わることを期待していた。だが、次第に現実が歪み始めた。 教会の壁が揺らぎ、床が裂け、地面から闇が這い上がってくるようだった。拓也は恐怖を感じたが、同時に罪悪感から解放されるかもしれないという期待が心を支配していた。 儀式が進むにつれ、拓也の意識は次第に朦朧としていった。彼の視界に現れたのは、過去の記憶――プロジェクトの失敗、仲間たちの失望、そして失ったものたちの顔だった。彼はそれを見て、もう一度その苦しみを感じた。 「どうして……どうして救われないんだ……?」 彼は叫びながら、地面に倒れ込んだ。老人の声は聞こえなくなり、彼は完全に暗闇の中に閉じ込められた。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加