罪悪感と救済の幻想

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やがて、拓也は目を覚ました。そこは見慣れた部屋の中だった。彼はベッドの上に横たわり、天井を見つめていた。だが、何かが違っていた。周囲は静まり返り、窓の外には夜の闇が広がっていた。彼は自分がどこにいるのか分からなかった。 「ここは……現実か?」 彼はベッドから降り、部屋を見渡した。だが、その部屋には何もなかった。家具も、窓も、ドアもない、ただの空間だった。彼は不安に駆られ、再び罪悪感が心を締め付け始めた。 その時、彼の耳にあの老人の声が聞こえてきた。 「これは君が望んだことだ。君は罪悪感から逃れたいと願ったが、真実から逃れることはできない。現実と幻想は表裏一体。君がどちらを選ぶか、それは君次第だ」 拓也はその言葉に動揺し、部屋の中央で膝をついた。彼は悟った。罪悪感から逃れることはできない。彼が求めていた救いは幻想に過ぎなかった。 彼は顔を覆い、嗚咽を漏らした。罪悪感に苛まれ続ける人生から逃れることはできないのだと理解した時、彼の心には新たな絶望が生まれた。救済とは何か。答えは、どこにもなかった。 その日以来、拓也はその部屋で過ごすことになった。外界との繋がりを断たれた彼は、罪悪感と向き合い続けることを強いられた。それが現実なのか幻想なのか、彼にはもう区別がつかなかった。 そして、時が経つにつれ、彼は自らが作り出したこの世界に囚われ続けることになった。救いは、どこにもないのだと悟りながら。
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