1.触手……? そんなの本当にいるのか?

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 ◇◇◇   「こんな隠し部屋みたいにして、ひぃ爺さんは何をしまっていたんだろう?」    屋根裏の床に散らばるのは書物が多いが、箱やらなんやらも散らかっている。下に収納できなかったあまり使わないものをこっちに入れていたのだろうかと思い、一冊の書物を手に取って開いてみた。   「え!」    これは曽祖父の日記のような記録だった。一階ニ階にあった他者の著した書物や曽祖父がきちんと書き上げた書物ではない記録。ここに来てそのようなものを見たのは始めてだ。  しかも、内容は『触手』についてだった。   「しょ……触手? そんなの存在するのか? ひぃ爺さんの妄想……とか」    そんなことを思いつつも、未知の生物への探究心というか妄想日記でもいいから先が読みたいという気持ちに支配され、片付けもそこそこに手についた一冊をその場で読み出してしまった。    日記によると、触手の見た目は多肉植物のようだけど動物で知能があると書かれていた。害獣や魔獣と違って人間に襲いかかってくることは殆どなく、仮にあったとしても自身を傷つけられるとか子どもを守る場合などであるとのことだった。   「やたら詳細に毎日記録しているみたいだけど、俺はこんな生物の話なんて聞いたこともないけどな……」    俺は屋根裏に座り込んで日記を読み始めてしまったため咳と鼻水が激しくなってしまい、一旦近場にある数冊を持って下に降りて読むことにした。   「あ、これかなりバラバラだな……やっぱ片付けないとだめか」    パラパラと中身に目を通してみたけど三冊の日記はかなり日付が飛んでいた。どうせ読むならやっぱり古い方から順に読みたい。育成日記みたいなものなら尚更だ。  研究所を捨てて街に出た曽祖父が屋根裏に隠した日記なのだから、読むのはほんの少しだけ罪悪感があるが、もう時効だろうと勝手に言い訳を作り上げて――いや、単に俺の好奇心が上回っただけだ――屋根裏を片付けつつ日記を全て読もうと決めた。    一階ニ階にあった書物とは違って、屋根裏には魔術陣が施された収納棚はなかったので日記は一部劣化していたりインクがかすれていたりするものもある。   「ああ、もう! 大事な記録のところじゃないといいんだけど……」    俺は掃除が嫌いだが、日記が読みたい一心で一階ニ階の掃除のときより必死で掃除と片付けをした。  本の他に散らかっていたのは空き箱やら古い鉱石絵の具やら。あと見つけたのは魔導札が貼ってある宝箱のような箱だ。結構重い割に軽く揺すってみるが音はほとんどしない。こんなのが貼ってある箱だからヤバいものかもしれないと、とりあえずは階下に持って降りるだけにした。   「まずはこの魔導札の効果から調べないと……これも日記に出てくる?」    魔導札について書かれているものを探したいけど、それをするにもとりあえずは屋根裏の掃除と整理だ。  日記のようなものはまとめて一階に積み上げ、日記でない書物はまた別のところに積んでいく。まずは大雑把に分けて、そのあと日付順や書物の種類別にわけようという作戦。とはいえ、俺は触手の記録が読みたくてしょうがない。  つまりどうしたかというと、またしても寝食を忘れて片付けをしてしまった。掃除で寝食を忘れるなんて俺っぽくないけど、目的は日記や書物を読むことだからしょうがないとも言えるかな。
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