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13.触手と俺らの奇妙な関係
しかしまあ本当にきれいな顔だな。抱いて余計にわかったけど、男の肌というよりも若々しい女性みたいなしっとりもっちりした肌だった。でも声は聞き慣れたハルロスのもので、あの眼差しも。
「うーん……混乱するなあ」
ハルロスを見下ろしながらガシガシと頭を掻く。すると、裏口から入ってきた触手はチビが九体になっていた。全部孵化したらしい。みんながハルロスの周りに来て、触手さんがハルロスに蜜を与えている。
「お前さんがいるならハルロスは大丈夫だよな。俺はここに居続けないほうがいいだろ? 思い出作らせてくれてありがとな」
そう言って立ち上がろうとしたら、触手が膝裏に直撃してがくんと床に崩れ落ちる。
「いったぁ……なにを」
ぐるぐると胴体に絡みついた触手で宙に持ち上げられ、もがいても抜けられない。どんなに力を入れても外れないのに、決して苦しくもきつくもない絶妙な力加減だ。
「触手さんよぉ……そろそろ下ろしてくれないかな?」
俺の足が床につかないように持ち上げられたまま、たまにあの甘い粒を口にねじ込まれている俺。話しかけている内容はわかっているはずなのに、下ろしてくれない。ハルロスが目覚めないと無理ということかと諦めかけたとき、目の前のハルロスの瞼が動いた。
「うう……へ? マカル? 何してんの?」
「おはよう……俺を下ろしてくれるようにお前のパートナーに言ってくれないか?」
「ええ!? パートナーって……」
「触手と番なんだろ?」
顔を真っ赤にさせるハルロスはやっぱり可愛い……いや、美人? どちらもか。それはいいとして、このニ週間の痴態を思い出してしまったのか、きゅっと唇を噛んでいる仕草がまた色っぽい。
「それは……興味本位と研究心が……」
「うん。いいんじゃないか?」
「なんで……」
「ハルロスは健康になって子どもたちに囲まれて幸せなんだろ?」
俺は精一杯この状況を受け入れようとしてると伝えているのに、ハルロスはうつむいてしまった。それに、触手に少しブンブン振られているんだが。酔う……酔うから……やめて。
「少し……違う。触手は生涯でニ回しか交配しないから、もう終わり。子どもたちにも、もう俺は触手のパートナーは作らないって宣言してるし。賢い子たちだからわかってくれてると思う」
「そう、なのか。でもその、子作り……はしなくても番ってことは変わらないんじゃ」
そう言った途端、触手は俺をハルロスの上に落とした。
「いってぇ……って、ハルロス! 大丈夫か?」
「ん。へ、いき……」
「泣きそうな顔してるじゃないか。ぶつけたか? 痛いのか?」
「ぶつけてないし痛くない……大丈夫。わあ!」
今度は俺とハルロスごと抱え上げた触手は、きゅきゅっと触手を締めてきた。近い近い! というか、俺のブツがハルロスに当たるからやめてくれ。また勃っちまう……。
「さっきからこんな調子で、触手さんがおかしいんだって。ハルロス何かわからないのか? ……ハルロス?」
びっくりしたような顔で俺と触手を交互に見ているハルロスがちょっと可愛い。涙目で真っ赤で……庇護欲をかきたてられる感じだ。
「…………だと思う」
「ん?」
「俺がっ……マカルに! 帰ってほしくないって思ってるのがバレてるからだと思う!!」
なんて?
「もう! ばかばか! 触手ちゃん、ひどいだろ……こういうのは勝手にバラさないでくれよぉ」
「ハルロス?」
「交配を見られたのだって、すごく嫌だったんだからな!」
「ハルロス?」
「マカルがこうやって年にニ回来てくれるのだって奇跡なの! 俺はそのささやかな楽しみと研究だけが生きがいなんだから、マカルがドン引きして来なくなったらどうしてくれるんだよ! 適切な距離ってもんがヒトにはあるんだぞ! そりゃ俺が快楽への興味に流されたのは認めるけど、絶滅寸前の触手ちゃんの種を残すためでもあったし、そこはデリケートな問題だろぉぉぉぉぉ! ばかぁ」
ハルロスがブチ切れている……にしては可愛いけど。
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