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4.可愛い触手……からの、驚愕の事実
水と肉は少量でいいと書いてあったけど、本当に少しで大丈夫だった。だから罠を毎日かけなくてもいいのは助かった。それに意外と大きくなるのが早い。孵化してニ週間で俺の膝下くらいまでの大きさになっている。
「触手ちゃん、俺またひぃ爺さんの日記読んでるから自由にしててねー」
俺が声をかけるとワサワサと揺れて窓際に移動していった。触手ちゃんは日中窓辺でじっとしていることが多い。暖かいのが好きなのかなと思ったけど、あれは日光に当たってるんだなっていうのがわかった。餌も食べるけど、植物みたいに光合成もしているのかもしれない。
触手ちゃんとの生活が始まってから俺の生活はだいぶ規則正しくなっていた。一応餌を用意しなきゃって思ったり、触手ちゃんが家の中を動くからって掃除をしっかりするようにもなったり。それに言葉での返事はないとしても、俺が話しかけるとなんらかの反応がある生き物が側にいるのってなんかいいな。
なんとなく、この研究所にこもっていた曽祖父が、着いてきた触手と暮らし始めた気持ちもわからなくないななんて思う。だって本当におとなしいし。
触手ちゃんは真ん中に球体みたいな本体があって、そこからニョキニョキと一本ずつの触手が生えているといった感じだ。普段は触手を上に伸ばしていてエアプランツみたいにも見える。本体の上のところに口があるんだよな……。小動物の肉を丸飲みするのはちょっと最初はビックリしたけど。
曽祖父の日記を読み進めていると、いつの間にか触手ちゃんが足元に来ていた。
「ん? どうした?」
俺のズボンの裾を引っ張るようにしていて、何か言いたそうだった。引っ張っているようだったから立ち上がってそっちに歩いてみると、玄関まで来てしまった。なんなんだろうと思って触手ちゃんを見ると、今度は玄関ドアをペチペチとしている。
「外に出たいのか?」
俺は今まで触手ちゃんを裏口から出てすぐの、水が湧いているところ以外には連れて行ったことがない。小さい触手ちゃんが野生動物に襲われたらどうしようとか色々と考えてしまって……。でも出たそうなら出してあげたほうがいいのかなぁ。
「ちょっと待っててな」
俺は腰に短剣を装着して触手ちゃんと散歩に行くことにした。だって、触手ちゃんが誘ってきてるんだから行ってあげないと可哀想だし。俺も本とか日記を読んでばかりだから、たまには外を散歩するのもいいかなと思って。
「よし、いいよ。俺から離れないでね? あと、あまり遠くにも行かないでね」
俺はそう声をかけると玄関を開けた。触手ちゃんは一本の触手で俺のズボンをつまみつつ、俺の少し前を歩いている。これじゃどっちが連れられてるのかわからないな……可愛いからいいけど。
触手ちゃんの気の向くままに家の周囲を歩く。どうやらちゃんと建物を中心として一定距離だけを散策しているようだ。賢いな。
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