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今日も僕は生き延びてしまった もうずっとご飯も食べていないから元気が出ない ひとりぼっちで水槽の中を漂うように泳ぐ 室内の電気も消えて、今晩も彼が帰るのを見送る と思っていたのに… 何故か彼は僕のいる水槽の前に椅子を持って来て座った 「お前一匹だけにしてしまってごめんな…」 椅子の背を僕の方に向け、その上に顎を乗せてじっと僕の方を見ている 僕に話し掛けているのかわからず、辺りを見渡すけど、今この水槽の中にいるのは僕一人だけ 誰か他に人がいるわけでもない 「お前は本当に綺麗な目をしているな… 怖い思いをさせずにさっさと食ってやるのがいいんだろうが…なんか、愛着が湧いちまってな…」 彼がまた眉を下げて笑ってくれた 僕が彼を好きになった最初の顔 この顔をもっと見たくて、笑って欲しくて、沢山、たくさん泳ぎ回った 「腹減ってるよな…。本当は胃を空っぽにしとかなきゃいけないんだけどな…」 そう言って、彼は水槽の上から何かを落としてくれた すっごく良い匂いのするご飯 お腹がずっと空いていた僕は夢中になって食べた 僕が美味しそうに食べる度、彼も嬉しそうに笑ってご飯をくれる 久しぶりに満腹になるまでご飯を食べることが出来て、元気も出てきた 「いっぱい食ったか?さっきまで死んだ目の魚だったけど、嬉しそうだな」 僕が元気に水槽内を泳ぎ回っていると、彼も嬉しそうに笑う うん。彼が喜んでくれるなら… 彼に捌かれるなら、僕はもういいや 最後は彼に食べて欲しいけど、彼が僕たちを食べるところは見たことないから… きっとお客さんに食べられるんだろうな… 彼に殺されて、捌かれて、綺麗に盛り付けて貰えるならそれでいい ただ、一言だけ、伝えられるなら伝えてみたいな 「名前、教えて欲しかったな…僕には、名前なんてないけど…」 彼の帰った室内で、僕は一人心に決める もう怖くない 胸を張ってその日を待とう 彼が「おすすめですよ」って僕のことを言ってくれるその日を待とう
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