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張り紙
清掃作業員のAさんは、某所の公園の公衆便所で作業中、妙な張り紙を見つけた。
その張り紙は便所の手洗い場の鏡に貼り付けられており、そこにはこう書かれていた。
『※※(住所)の※※(恐らくホストの源氏名)こと※※(氏名)に私の恨みが届きますように』
うわぁぁ、と思ったが、Aさんは清掃作業員である。こんなものに手を触れたくも無かったが、泣く泣くAさんは張り紙を剥がした。
その張り紙の裏には赤字でデカデカと、『死ね』と書かれていた。
うわぁぁ、とAさんは再度泣きそうな声を漏らした。
と、その時、Aさんは唐突に視線のようなものを感じた。
顔を上げると、今しがた張り紙を剥がした鏡に、何かが映っているのが見えた。
便所の個室から、顔面を血だらけにした女が顔を覗かせていた。
Aさんは大声で悲鳴を上げ、その場に尻餅をついた。
「それから数分、私はまったく動くことが出来ませんでした。その後、私は何とか気を持ち直し、鏡を再度覗いてみたのですが、そこにはもう何も映っていませんでした」
しかし、今見たモノが幻だったとはとても思えない。
一分一秒でもその張り紙を手にしていたくなかったAさんは、ダメなことだと知りつつも、張り紙をくしゃくしゃにして便所に流してしまった。そして仕事を放棄し、足早にその公園を立ち去った。
数日後。
その公園の近くのマンションで男性の変死があった。
いかなる原因によるものなのか。男性は自宅の便所の中で、下半身の『管』を排水管に何メートルも吸い込まれた形で亡くなっていたそうだ。
「私は、恨みを届けてしまったようですね・・」
Aさんは、陰鬱な顔をしてそう呟いた。
<了>
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