喧嘩っぷる

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 玄関に俺を背負ったまま日高は、「おじゃましま~す」と言ってから靴と靴下を脱いだ。ついでに背負ったままの俺の靴と靴下を脱がせて、「後で掃除したらいいか」と言いながら中に入った。 「まず風呂に入ったほうがいいだろ?」 「……うん」 「風呂どこだ?」 「そこ。突き当たり」  廊下の突き当たりのドアを指差す。背負われたまま連れて行かれて、脱衣所の電気を付けられた。脱衣所の洗面台の鏡に写る自分に驚愕する。 髪は雨に濡れているし、頬や鼻にも擦り傷ができている。日高の首に回した腕も泥だらけだった。 「ひ、日高。ごめん。汚れただろう」 「ああ、いいよ。これくらい。それより大丈夫か?」  ゆっくりと床に降ろされて立ち上がる。見下ろした足も泥だらけで、何か分からないドロドロした液体も雨と一緒に足をつたっている。  ガタガタと震え出す膝と指先。 「秋?」  名前を呼ばれて顔を上げると日高も雨に濡れていて真っ黒な髪が頬に張り付いていた。 「ひ、日高……」  声は震えて言葉が繋がらない。 「もう大丈夫。帰ってきたから」  日高が濡れた俺の髪を撫でる。その手に温もりを与えられて、俺はぽすっと日高の腕の中に倒れた。
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