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俺の名前を呼ぶ声が聞こえた気がした。恐怖に幻聴でも聞こえたのかと余計に頭を振った。
男の指は容赦なく俺の中に入り込み、かき回す。
『パタ、パタ………』
大粒の雨が降り出す音がした。
「秋っ……てめぇっ何やってんだっ」
凄みのある大声が聞こえて、身体にかかっていた重みが退いた。うつぶせているから何が起こっているのか分からない。
罵声と叩きつける音が続いて雨がザーッと降り出す音が耳に入る。
「秋っ、秋っ。大丈夫か?」
「………んっんん?」
「ああ。ちょっと待って」
声がする方に返事をするが棒が邪魔で振り返ることができない。
ぎゃあぎゃあと叫ぶような声がした後、走り去る足音が聞こえた。
もうだめか……。
きっと日高は逃げ出したんだ。あんなひょろひょろじゃ大男を追っ払えるはずが無い。
「秋っ。おいっ。大丈夫か?」
日高に顔を覗き込まれた。
「ひっでえ顔。今解くからちょっと待て」
日高は俺の口を塞いでいたズボンを解いて手足の紐も解いてくれた。
ザーザーと降り続く雨にすでにお互いずぶ濡れだ。
「……酷いな」
解かれても立ち上がれない。恐怖にまだ唇は震えていて声も出せない。
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