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「今、予備校の帰りで、ここ通ったらお前のカバンが落ちてたから変だと思ったんだよ。キーホルダー見覚えがあったし」
地面に落としたカバンは日高が拾ってくれたらしく、「これ」と掲げられたカバンには俺のお気に入りのアニメのキャラクターのキーホルダーが揺れていた。
「大丈夫……そうに無いな。お前、体操服は?」
勝手にカバンを開け出す日高。
「ああ、ねぇな。どうする? そのまんまじゃ帰れないよな」
日高はどうしようかと考えて……「これ巻け」と自分の着ていた半そでのパーカーを脱いで俺の腰に巻きつけた。
スカートのように見えなくは無いが……そんな格好で外を歩きたく無い。
「この雨だし、もう遅いから誰もいないだろ。送ってやるから家どこだよ」
「…………」
「秋?」
「……痛くて……立てない」
搾り出した声は震えている。日高は、ポンポンと軽く頭を叩いて、「早く言えよ」と言いながら俺を軽々と背負った。
「顔、なるべく伏せとけよ」
言われることがよく分からなくて戸惑っていると、「彼女みたいにしか見えないって」と付け足した。
茂みの中から出てくると傘をかぶせた自転車が止まっていた。
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