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「お前んち近いか? 俺んちはここから自転車で5分はかかんだけど」
「公園出た向かいの赤い屋根」
「近っ」
日高はそう言って俺を背負ったまま自転車を脇に移動させて傘を肩に乗せて歩き出した。
「さっきの知ってるやつか?」
聞かれて首を横に振る。全く身に覚えは無い。
俺は制服の半そでシャツに日高のパーカーで簡易的に作られた巻きスカート姿でおんぶされて家まで送ってもらった。
玄関先で、「電気付いてねぇけど親いないのか?」と日高に聞かれて、「……共働き」と返した。
「ひ、日高……寄って行け」
背負われたままギュッと日高にしがみ付いた。
「……濡れてるし」
「じゃあ、タオル貸して」
日高は言いながら、「鍵は?」と続けて、「キーホルダーに付いてる」とさっきのカバンのキーホルダーを指差した。
キーホルダーは鍵が中に仕舞えるようになっている。日高は鍵を取り出すとガチャッと玄関を開けた。
「秋。立てそうか?」
「無理……あちこち痛い……」
「でも、お前泥だらけだし……」
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