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世間に疎い。鈍い。とは言われるけど、紹介されもしない相手のことなど知らないのが普通じゃないだろうか。
「知らないって……隣のクラスに先週……まあ、秋なら知らないか」
教室に入って席に着くと、「やべぇ。俺、次先生に呼ばれたら停学かも」と目の前の席の高橋に言った。
「今のうちに謝りに行って来たら?」
「えっ、やだよ。俺、悪くねぇし」
「どっちだよ」
高橋は笑って、「じゃあ、あいつが先生にチクらないことでも祈ってろよ」と前を向いてしまった。
俺は佐伯秋(サエキアキ)。むちゃくちゃ可愛い母に……似てしまった残念な高校2年生だ。高2にもなって女子に間違えられるなんて、残念でしかない。しかも、背が低い。
顔は仕方なくても、せめて背が高かったら何とかなったかもしれないのに……。
何度間違えられ、何度相手を殴り、何度……先生に呼び出されただろうか……。
元々校則の緩い学校だから俺が金髪だろうが、ピアスがいくつ開いてようが小言程度で収まっている。が、暴力沙汰となるとさすがに怒られる。
理由は……女子に間違われた。痴漢に遭った。ナンパされた……等々。
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