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突き飛ばしてやろうかと腕を振り上げたが、ひらりとかわして自転車でクルリと回って元のところに帰ってきた。
「何度も殴られちゃかなわないなぁ。暴力沙汰に巻き込まれたら俺の内申書に傷が付く」
「何だよ。チクるのか?」
「そんな子どもみたいなことしないって。まあ、次から殴られないから大丈夫」
「な、何でだよっ」
「ん? 俺の方がでかいし、きっと秋ちゃんより強いよ?」
「ちゃん付けするなっ」
もう一度殴りかかったが日高は俺のグーを握り込んで、「ほら」と笑ったから、反対の手に持っていた学生カバンで自転車ごと殴ってやった。
日高は、「おっとぉ」と言いながらぐらついた自転車ごと倒れたが、俺のグーを握ったままで後ろに引いたため、カバンの重みも加わって自転車の上に俺が倒れた。
で……日高は自分だけ自転車の向こう側へ非難して無事だった。
「ってぇえっ。何すんだよっ」
「いや。今のは俺、悪く無いし」
起き上がって叫ぶと日高は笑っている。自転車の上に転んで打った膝や脛が痛い。制服も土埃が付いて汚れてしまった。
「お前が引っ張ったんだろうがっ」
「お前がカバンで殴ったのが悪いんだろ」
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