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「俺は男だっ」
目の前にいる同じ制服を着た男を俺は思いっきり殴りつけた。
奴は尻餅をついて俺を見上げた。
「ってぇ、いきなり何すんだよ」
立ち上がるなり俺の襟首を掴んだ。
「お前がっ、『女子棟はあっちだ』なんて言うからだろうがっ」
「どう見たって、女だろうがっ」
「馬鹿かお前っ同じ制服着てるだろがっ」
俺は相手の襟首を掴んだ。お互いに掴んでにらみ合う。
「ちょっと、ちょっと、秋。止めとけって」
同級生の高橋に止められて俺は手を離した。相手も手を離したが、「何でいきなり殴るんだよ」とぼやいた。
「お前が俺を女と間違えるからだろっ」
もう一度殴ってやろうと手を上げると、さっき止めに入った高橋に再び止められた。
「もう、ほっとけよ。行くよ」
「二度と間違えんなよ」
俺は捨て台詞を残して教室に向かって歩き出した。
「もう。秋も手が早いんだよ」
「だって、あいつが」
「それでもいきなり殴ったりしたらダメだよ。もう何回目だよ」
高橋ははぁっとため息を付いて、「あいつ、日高だろ? この間編入してきたってやつ」と俺に同意を求めてきた。
「知らない」
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