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卒業後、俺は地元で就職した。
職場でもボッチで、嫁もいない俺は、一人でできる趣味の登山を始めた。
いくつもの山を登り、俺は日本で最も難しいとされている、北アルプス南部にある北穂高岳と南岳を結ぶルート登頂に挑戦した。
しかし、登山中に足を滑らして骨折する事故を起こしてしまった。
病院に運ばれて、骨折カ所特定のためにCTスキャンを受ける。
「今回とは関係ない部位ですが、腎臓に腫瘍があります。骨折治療後、すぐに内科で見てもらってください」
CT結果を見た医師が告げるが、骨折の痛みに意識が飛びそうになっていた俺は、それどころではなかった。
ましてや退院して、実生活に戻ると溜まっていた仕事に忙殺され、そんな注意も忘れていた。
それから2年、俺は身体の倦怠感と血尿で病院で診察を受ける。
「腎臓がんです。それもステージ4。脳に多発転移しています。この状態だともう手術は無理ですので、化学療法をしましょう」
医師はこちらを見ずに、CT画像を見たまま告知した。
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