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 ミネットの初恋は儚く散った。卒業式の日に告白しようと、ずっと大事にしてきた想いなのに。 「うそ……うそだ。先輩……っ」    ずっと大好きだったレヴリー先輩。彼が卒業後すぐに婚約するつもりだと友人に話しているのが、壁一枚を隔てた教室から聞こえる。たまたま、魔法物理学の教室に置き忘れた教科書を取りに戻ったミネットだが、その足は廊下で縫い留められたように動かなくなった。 「本当かい? 玉の輿じゃないか! おめでとうレヴリー」 「ありがとう。先にご両親の承諾を得られてよかったよ……この四年、本当に長かった」 「執念だな」  玉の輿……そうか。レヴリー先輩は男爵家の次男だ。家の力は大きくなくとも、彼自身は魅力あふれる人材といえる。  卒業後はその類まれなる魔法の才能で魔法省に入り早々と官職を得るか、有能なアルファを欲しがる高位貴族の家に婿入りするか、どちらが早いかと噂されていた。 (婿入り……するならうちでもよかったのに……)  ミネットは伯爵家の長男だ。自分も、双子の妹もオメガだから、いつかは婿を取らないといけない。  でも結婚のことなんて、学校を卒業してから考えるものだと思っていた。家にいる妹でさえ、まだ結婚はしたくないと手紙に書かれていたし。    卒業式に当たって砕ける覚悟でレヴリー先輩に告白して、もし上手く行ったらお付き合いしたかった。二年後に自分も卒業したら親から結婚を打診してもらって……なんて淡い期待が甘すぎたことは今、冷や水を浴びせるように思い知らされたのである。
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