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 ミネットとしては「いいの?」と両親に問いたいが、「二人はお庭でも散歩してきたら?」と母上が言うので従うことにする。なんとなく、拒否することを許さないような口調だった。 「お手をどうぞ、お嬢さん」 「あ……は、はい」  手を差し伸べられて、どきどきしながらグローブをはめた手を重ねた。レヴリー先輩の大きな手と比べれば、レースで覆われた手は華奢に見える。  グローブの中はきつきつだったけど、ちょっと夢のような心地だ。  ただ、浮かれている場合じゃない。ミネットはこれから先輩を誘惑するという、人生を賭けた使命があるのだ。 「庭園は私がご案内しますわ」  高めの声を出してみても、女言葉には違和感がありすぎる。必要以上に喋らないようにしながら、先輩と歩く。  四年間学校でたくさん一緒に過ごしたけれど、自分の家に先輩がいるというのは変な感じ。それどころじゃないのに……やっぱり嬉しくて、心がこそばゆかった。  こっそり俯いて、笑みをこぼす。この人が自分の旦那さんだったら、どれだけ幸せなことか。 「ここへの道すがら、広大な葡萄畑を見たよ。俺はワインが好きだから、結婚したらここの高級ワインがたくさん飲めるかと楽しみにしてるんだ」  レヴリー先輩は二人きりになったとたん砕けた話し方になり、まるで学校で過ごした日々が戻ってきたかのようだった。軽い冗談にミネットはくすくすと笑ってみせる。  しかし――ここで大問題が起きていた。歩くにつれて、別のことで頭がいっぱいになってきたのだ。
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