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(コルセット……すんごく苦しい!)  カルミナが、私はこんなに太くない! とぎゅうぎゅう締めてきたせいで、いまや浅くしか息ができない。ただ歩いているだけで頭が朦朧としてきた。    きっと、慣れないスカートとパンプスのせいもあるだろう。エントランスから外に出るとき、ミネットは自分の家なのにツンッと段差で躓いてしまった。 「あっ」 「ミネット……! 大丈夫か」  先輩の肘に掛けていた手が外れた瞬間、すかさず腰を支えてくれた。はぁはぁと荒い呼吸を繰り返し、ミネットは苦しさと恥ずかしさに顔を赤くしながら謝罪する。  掛けられた言葉の違和感には気付かなかった。 「ごめんなさい……せ……レヴリー様。少し、あちらのガゼボで休んでも……?」  ぼうっとしていて、思わず先輩と言ってしまいそう。ミネットが庭の中にあるガゼボを伝えると、先輩は「ちょっとごめんね」とひと声かけてから身体を横抱きにしてきた。 「ひゃああ」    婚姻予定だとしても、初対面の男女の距離感ではない。でも今のミネットでは、ガゼボへたどり着く前にキュウ……と力尽きてしまう可能性が高かった。    申し訳なさに縮こまりながら、間近の顔を見上げる。先輩はまっすぐ前を向いていた。いつも冷静沈着な先輩はこんなところでも頼もしい。でも…… (耳、赤くなってる)  ミネットはきゅん、と胸が締め付けられるのを感じた。コルセットとは違う、甘い痛みだ。先輩も好きな子と接近して、緊張しているのかもしれない。  
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