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「夏季休暇に入ったら、ご挨拶に伺うんだ」 「フルヴィエール家かぁ、さぞ大きなお屋敷なんだろうな」 「きっとね。ああ、早く会いたい。きっとすごく可愛いんだろうな……」 「はぁ? レヴリー。俺はお前に引いている。いや、もともと引いていたが……ここまで来ると……」    フルヴィエール家。その言葉が出てきた瞬間、ミネットは頭をガン! と殴られたような心地だった。  ふらふら、おぼつかない足取りで来た道を戻る。試験勉強のために教科書を取りに来たことなんて忘れていた。もうこれ以上聞いていられない。 「……カルミナだったの? そんなことって、ある?」    フルヴィエールはうちの家名だ。彼が我が家に結婚の挨拶に来る。ミネットは家族からなにも聞いていないし、妹のカルミナは『すごく可愛い』。つまり……そういうことだ。  背中まで伸ばしたプラチナブロンドの髪と、勿忘草(わすれなぐさ)色の瞳。白い肌に、お人形のようだと言われてきた顔立ち。どれも双子の妹と共通しているものだ。ミネットとカルミナはとても似ている。  貴族のオメガは学校に通わず、家庭教師から学ぶことが一般的だ。しかしミネットには魔法のセンスがあると、家庭教師が魔法学校への進学を勧めてくれたのだ。  兄らしいところを見せたかったミネットは、家のためにも学校へ行きたいと家族に主張した。  アヴニール魔法学校は七年制の名門校である。卒業するだけでも箔が付く上、複雑な魔法を使えるようになればきっと家の役に立てる。  妹が背中を押してくれたおかげで、ミネットは発情期の周期が落ち着くやいなや編入試験に合格し、六年間の学校生活を得たのだ。
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