#7共に

1/1
前へ
/8ページ
次へ

#7共に

「......え? 」 突然のことということもあるし、何を言っているかわからないということもあった。 「なに? どゆことなの? 」 マリナも理解はできていなかった。 エージはまだ話す。 「まんまの意味だ。今までの自警団は、正直に言ってお遊びレベルだった。でもオレは今から、本物の自警団をやる」 するとエージは立ち上がって、二人に言った。 「悪人が正しく裁かれないこの国に、牙を剥くんだ。政治家だって、警察だってその対象だ。分かりやすく言えばそうだな、」 いきなり話が飛躍しすぎて、二人は何が何だか分からなかった。 「て、テロリストってお前......俺達はただの高校生だぞ? そんなのやれるわけ」 「いや、オレはやる。本気だ」 「ちょ、ちょっと、話についてけないんだけど......」 マリナも相当困惑している。しかしエージは話を続ける。 「オレは一人でもやるつもりだけど、お前らが付いてきてくれるって言うんなら、これ以上に頼もしいことはない。どうする? 強要はしない」 二人は顔を見合わせた。ここが運命の分岐点だと、分かりやすすぎるぐらいの選択だったのだから。 一方はかなり危険だが、成功した暁にはこの国がもっと過ごしやすい国になる。もう一方はこのままの平和な日常が流れ続ける。 「......明日」 「ん? 」 ゲンは言う。 「明日まで、待ってくれ」 エージは少し頷くと、言った。 「......決まったらオレの家に来てくれ」 そう言うとエージは、屋上から出ていった。 取り残された二人は、少し呆然と立ち尽くしていた。すると、マリナがゲンに詰め寄った。 「ねえ、ねえ! どうすんの!? エージは本気(マジ)だよ!? どうやって説得すんの!? 」 マリナはエージの考えをやめさせる方向で話を進めているようだ。 しかしゲンは知っている。 「あいつは、決めたことは絶対に曲げない。俺と違ってな。死んでも実行するぞ」 「......そんな」 マリナはその場にへたり込んだ。一方でゲンは、一生懸命に考えていた。 (あいつが考える理想の世界は多分、政治家が頭良くて、警察が優秀で、犯罪がすべて正しく裁かれる世界なんだろうな......あれ? ) 悪いところ、なくね? (い、いやいや待て待て。あいつがやろうとしてるのはテロだ。人も殺すんだ。そんなんでいい国なんて作れるのか? ) すると、ゲンの頭の中にある映像がフラッシュバックした。 エージが、目を輝かせながらスマホの画面を見せてきてる。その画面には、勧善懲悪のバナー漫画の一コマが映ってた。 「エージ......」 その時、ゲンは決心した。 「マリナ、俺はエージと一緒に行く」 「......は? 」 信じられないようなものを見る目でゲンを見るマリナ。しかし、ゲンは覚悟を決めたようだった。 「お前は無理して付いてこなくていいんだ。自分から乗りかかった船だろ? 自分で降りる権利はあるんじゃないか? 」 「......もう、イミわかんないイミわかんない!! 」 今にも泣き出してしまいそうなマリナ。しかし、ゲンと同じように景色がフラッシュバックした。 エージが自分を、自殺という運命から救ってくれた。 もしかしたら、マリナも最初から決まっていたのかもしれない。 「......行く」 「え? 」 「行くの! ウチも行く! エージにまだ、全然恩返せてないもん!! 」 それを聞いたゲンは、少し嬉しそうに、少し悲しそうに言った。 「じゃあ、一緒に行こう」 「......うん」 -エージ宅- インターホンを押すと、さっきまで準備をしていたであろうエージが出てきた。 「早いな......」 エージがそう言うと、ゲンとマリナは口を揃えていった。 「「一緒に行く」」
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加