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#7共に
「......え? 」
突然のことということもあるし、何を言っているかわからないということもあった。
「なに? どゆことなの? 」
マリナも理解はできていなかった。
エージはまだ話す。
「まんまの意味だ。今までの自警団は、正直に言ってお遊びレベルだった。でもオレは今から、本物の自警団をやる」
するとエージは立ち上がって、二人に言った。
「悪人が正しく裁かれないこの国に、牙を剥くんだ。政治家だって、警察だってその対象だ。分かりやすく言えばそうだな、テロリスト」
いきなり話が飛躍しすぎて、二人は何が何だか分からなかった。
「て、テロリストってお前......俺達はただの高校生だぞ? そんなのやれるわけ」
「いや、オレはやる。本気だ」
「ちょ、ちょっと、話についてけないんだけど......」
マリナも相当困惑している。しかしエージは話を続ける。
「オレは一人でもやるつもりだけど、お前らが付いてきてくれるって言うんなら、これ以上に頼もしいことはない。どうする? 強要はしない」
二人は顔を見合わせた。ここが運命の分岐点だと、分かりやすすぎるぐらいの選択だったのだから。
一方はかなり危険だが、成功した暁にはこの国がもっと過ごしやすい国になる。もう一方はこのままの平和な日常が流れ続ける。
「......明日」
「ん? 」
ゲンは言う。
「明日まで、待ってくれ」
エージは少し頷くと、言った。
「......決まったらオレの家に来てくれ」
そう言うとエージは、屋上から出ていった。
取り残された二人は、少し呆然と立ち尽くしていた。すると、マリナがゲンに詰め寄った。
「ねえ、ねえ! どうすんの!? エージは本気だよ!? どうやって説得すんの!? 」
マリナはエージの考えをやめさせる方向で話を進めているようだ。
しかしゲンは知っている。
「あいつは、決めたことは絶対に曲げない。俺と違ってな。死んでも実行するぞ」
「......そんな」
マリナはその場にへたり込んだ。一方でゲンは、一生懸命に考えていた。
(あいつが考える理想の世界は多分、政治家が頭良くて、警察が優秀で、犯罪がすべて正しく裁かれる世界なんだろうな......あれ? )
悪いところ、なくね?
(い、いやいや待て待て。あいつがやろうとしてるのはテロだ。人も殺すんだ。そんなんでいい国なんて作れるのか? )
すると、ゲンの頭の中にある映像がフラッシュバックした。
エージが、目を輝かせながらスマホの画面を見せてきてる。その画面には、勧善懲悪のバナー漫画の一コマが映ってた。
「エージ......」
その時、ゲンは決心した。
「マリナ、俺はエージと一緒に行く」
「......は? 」
信じられないようなものを見る目でゲンを見るマリナ。しかし、ゲンは覚悟を決めたようだった。
「お前は無理して付いてこなくていいんだ。自分から乗りかかった船だろ? 自分で降りる権利はあるんじゃないか? 」
「......もう、イミわかんないイミわかんない!! 」
今にも泣き出してしまいそうなマリナ。しかし、ゲンと同じように景色がフラッシュバックした。
エージが自分を、自殺という運命から救ってくれた。
もしかしたら、マリナも最初から決まっていたのかもしれない。
「......行く」
「え? 」
「行くの! ウチも行く! エージにまだ、全然恩返せてないもん!! 」
それを聞いたゲンは、少し嬉しそうに、少し悲しそうに言った。
「じゃあ、一緒に行こう」
「......うん」
-エージ宅-
インターホンを押すと、さっきまで準備をしていたであろうエージが出てきた。
「早いな......」
エージがそう言うと、ゲンとマリナは口を揃えていった。
「「一緒に行く」」
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