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紫陽はこの後新しい彼氏とデートの予定があるらしく、あっさり帰ってしまった。
「蘭は帰らないの?」
「私も菜花ちゃんと話したいもの」
「帰って」
そう言って紅真は蘭をグイグイ押し出す。
「ちょっと、なんでよ!」
「もういいでしょ」
「なんで兄さんばっかり菜花ちゃんを独り占めするの?」
「僕のだから」
「喧嘩しないで!」
兄妹喧嘩が始まってしまい、菜花は呆れながらも笑ってしまう。
まるで玩具を取り合う子どものようだ。
「ごめんね、蘭ちゃん。これから紅真くんと予定があるの」
「ええ~~」
蘭はわかりやすく不満そうに唇を尖らせる。
「また一緒にお買い物行こうね」
「絶対よ? 私にも構って欲しい」
「うん、絶対行こうね」
少しむくれながら蘭は先に帰って行った。
普段はしっかりしていてカッコいいのに、時々妹らしく甘えてくれるところがかわいい。
菜花は思わずニコニコしてしまう。
「かわいいよね、蘭ちゃん」
「菜花の前では猫被るから」
「……紅真くんと蘭ちゃんって仲良いよね」
「そうかな」
さっきのように喧嘩になることもあるが、対等な仲でなんでも言い合える関係なのだと見ていて感じる。
幼い頃からずっと二人で切磋琢磨しながら、華道に打ち込んでいたからだろうと思った。
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