0人が本棚に入れています
本棚に追加
♬~♪~
『はい。今週も始まりました~。ラジオで告白!今週の告白は一体どんな内容なのでしょうか』
毎週土曜の夜に放送されているお気に入りのラジオ番組。
いつものようにお風呂を済ませ、ベッドで横になりながら聞いていた。
『なんと今週はゲストをお招きしております!』
――ゲスト!?今までゲスト出演なんてなかったのに……。これはきっと神回になる予感!
『お招きしているゲストさん、なんとこの生放送で告白をしたいことがあるそうで、番組に熱烈なオファーをしてくださったんです!すごいですねぇ。番組史上初の試みで、我々もドキドキしております』
――私も熱狂的なファンです、って言えば番組に出演できるのかな……。ゲストの人、羨ましいなぁ……。
『それではご登場いただきましょう~。どうもどうもこんばんは~』
『こんばんは。よろしくお願いします』
『色々とお聞きする前に、まずはもう、告白内容を言っちゃいましょうか!』
『……いいんですか。わかりました。……僕が想いを届けたい人は、このラジオ番組が大好きな人です。学生の時に知り合い、彼女と付き合うようになって、僕もこのラジオを聞くようになりました。社会人になって以降はお互いの仕事が忙しく、デートする時間もほとんどありませんでした……。メッセージのやり取りで寂しさを紛らわせていますが、本音を言うと……寂しいです。なので僕はこの場をお借りして、彼女に伝えたいことがあります。この放送が終わる夜21時30分、2人の思い出の場所、丸山公園に夜桜を見に行きましょう』
――この声……丸山公園……桜の木……。まさか!
『いやぁ……なんとロマンチックな告白!……丸山公園はお2人にとって思い入れがある場所なんですか?』
『はい。僕が彼女に告白した場所です。ちょうど今日みたいに桜が綺麗に咲き誇っているときでした』
『そうなんですね。事前に伺ったお話だと、つい最近戻って来られたとか』
『はい。この番組に間に合うか賭けでしたけど、なんとか間に合いました』
『戻られることは彼女には伝えてたんですか?』
『えっと……、実はまだです。きっとこのラジオを聞いてびっくりしていると思います』
『とてつもないサプライズですね~。番組を聞いておられる彼女さん、お出かけの準備は大丈夫ですか?もう間もなく我々スタッフがお迎えにあがりますよ~』
――えっ!?嘘っ……!?待って……。
慌ててベッドから起き上がりワンピースに袖を通す。
着替え終えた頃、来客を知らせるインターホンが鳴った。
――化粧……してないけど、もういいっか!
「は~い」
扉を開けると目の前には番組スタッフではなく、彼が跪きながら小さな箱を開けていた。
「華、僕と結婚してください」
「……っ……はい!」
聞きたいことは山ほどあったが、それよりも今は久々に再会した彼の温もりを感じようと抱き着いた。
これから時間はたくさんある……、だからラジオからじゃなく、近くで想いを届けてね。
最初のコメントを投稿しよう!