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美夢は昔から、睡眠時間が長い。対して、周りの人達は揃いも揃ってショートスリーパーだった。
両親も、祖父も、姉も、幼馴染達も、4時間あれば元気に活動できる人だった。
美夢は8時間寝ただけでは疲れも眠気も取れず、すっきり起きられた日が極めて少ない。
小学生のときは20時には就寝し、6時に起床した。中高生のときは睡眠時間を削らないと勉強が追いつかず、常に眠い状態だった。
大学生になって東京で一人暮らしを始めると、講義もアルバイトもない日は、24時間気絶したように寝る日もあった。昔から睡眠と隣合わせの生活をしてきたこともあり、卒業後は寝具メーカーに就職した。
社会人になると、睡眠時間を確保することの大変さがわかった。なるべく自由な時間を増やして休息に充てることを目指した。栄養ドリンクや乳酸菌飲料は体に合わなかった。病院で診察してもらったが、病気ではなく睡眠不足だと言われた。
疲れやすいロングスリープ体質は、人間関係にも影響した。仕事終わりの飲み会の途中で深く寝入ってしまい、急性アルコール中毒を疑われて救急搬送されたこともある。
昔から変わらずに美夢と接してくれたのは、幼馴染の3人である。美夢は疲れやすく睡眠時間が長いくせに、アウトドアは大好きなのだ。幼馴染達は、美夢が疲れやすくロングスリーパーであることを理解し、遊びに行くときも美夢に配慮してくれる。
旅行に行くときは、美夢が起きられる時間に待ち合わせしてくれて、車の運転は絶対に美夢にさせない。むしろ、美夢は車内で寝ることを強要される。夜遅くまで起きていることもせず、幼馴染達も早く寝る。
この前のゴールデンウィークに、優しい幼馴染達を後悔させるトラブルが発生した。
バンジージャンプの順番待ちの最中、美夢は立ったままうとうとしていた。そして、美夢の番が来たとき、美夢は完全に爆睡してしまったのだ。気がつくと、美夢は病院のベッドにいた。意識不明と判断されて救急搬送されてしまったらしい。美夢としては、バンジージャンプを楽しめなかったことが悔しかったが、幼馴染達は美夢を連れ回したと誤解して平謝り状態だった。
盆休みとシルバーウィークにも、キャニオニングやグランピングの予定が立ちそうだったが、盆休みは地元でバーベキュー、シルバーウィークは未定になった。
美夢は、幼馴染達に申し訳ないと思ってしまった。疲れやすいロングスリープ体質が、幼馴染達の楽しみを奪ってしまったのだ。
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