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10tangle
◇◇◇
ラブホで毛を剃られたあの夜から、チクチクして……痒くて堪らなくなった。
2日経った時にテツに電話して文句を言ったが、何か様子がおかしい。
『ああ、はい、いつもどうも、ええ……、その件ならこちらとしても努力はしてるんですがね、それはお宅の方でカタをつけて貰わなきゃ、下手な小細工をしても損するだけですぜ』
テツはよそよそしい返事をした後、全く関係ない事を言いだした。
誰かと話をしてるのか?
一瞬キョトンとなったが、すぐにピンときた。
多分……翔吾が傍にいるからだ。
だからテツは、俺と話してるのがバレないように、全然関係ない話をして誤魔化してる。
ごめん、またかける……そう言って電話を切ったが、後味が悪かった。
こんな事になったのは、俺が望んだ事じゃない。
テツが勝手にやった事だし、本当に嫌ならいっそ翔吾にバラしたって構わないんだが……。
何故か翔吾に助けを求める気にはなれない。
むしろ、俺はテツと付き合ってる事を隠そうとしている。
そんな事があった後、テツからの連絡が途絶えた。
それから数日過ぎた小雨の降る日曜日、姉貴の使いっ走りで本屋まで行かされた。
姉貴はたまに日曜が休みになるので、こういう日はパシリにされるから憂鬱になる。
本屋はコンビニより遠くにある為、少し時間がかかる。
パーカーを着て自転車に乗り、傘代わりにフードを被ってペダルをダラダラ漕いだ。
10分位走ったところで、見知らぬ車が左側に横付けして来た。
何かと思って見れば、黒いミニバンが歩道側に寄って速度を落とし、俺に合わせるようにノロノロと走っている。
パッと見た時にテツかと思ったが、よく見たらヴェルファイアだった。
何となく嫌ーな予感がしていると、窓が開いて坊主頭三上が顔を出した。
「おい! 友也……!」
何故坊主頭が通りすがりに現れるのか、そんな事はわからないが、坊主頭は馴れ馴れしく俺の名前を呼ぶ。
無視して逃げようかと思った。
だけどテツの時と同じように、逃げる前にどうせあっさり捕まるだろう。
仕方なく止まって聞き返した。
「なんですか?」
「ちょっとこっちへ来い」
坊主頭は車を左端に寄せて止め、偉そうに言ってきた。
「はい……」
関わりたくなかったが、自転車からおりてそのまま押して渋々車の方へ行った。
「お前、テツと続いてるのか?」
「あの……、前にも言いましたが、俺はそんなんじゃないです」
「ほお、だったら構わねーよな、おめぇ……ちょっと付き合え」
「すみません、これから行くところがあるので」
「いいから乗れ! 嫌だというなら無理にでも乗せるぞ」
もうこの手の人達の行動パターンは分かっている。
坊主頭は恫喝してきたが、車に乗ったら……確実にヤバい。
この際、テツとの事をバラそうかと思ったが、翔吾との事もあるし、言えなかった。
──乗るしかない。
嫌々助手席に座ったら、坊主頭はテツがやったのと同じように、俺の自転車を車の後ろに積んだ。
多分、自転車をそこら辺に置きっぱなしにすると、万一警察に見つかったらマズいからだと思う。
「俺の名前は三上豪だ」
坊主頭は自分から名を名乗ったが、俺は黙っていた。
「ふっ、おめぇは若の屋敷で見た時から気になってた、へっ、テツの奴がすぐ邪魔しやがるからな、あの野郎……矢吹め、自分ばっか楽しみやがって、今日はついてた、で、友也……、ひとつ大事な事を聞くが、おめぇは……若とはただのツレか?」
顔を上げるのも嫌で俯いていると、三上は翔吾の事を聞いてきた。
「はい……」
「おい、誤魔化すな、嘘ついたら承知しねーぞ、いいか? 正直に言え、本当にただのツレか」
「嘘じゃありません、本当にただの友達です」
「よーし、わかった、それじゃあ、俺のマンションへ連れてってやる」
俺が答えたら、安心したように頷いて勝手な事を言い出した。
「あの」
「なんだ」
こういう展開になるのはなんとなく予想がついていたが、すんなり応じられるわけがない。
一体俺をなんだと思ってるのか……。
「勘違いしないでください……」
俺は今拉致られたも同然な状況だ。
テツですら拉致られた時は怖かったが、三上は全く気心がしれない。
それで生意気な口をきいたらどうなるか……正直怖かった。
「ああ"?何が」
怖かったけど、言いなりになるのは嫌だし、勇気をだして話をする事にした。
「俺はあなたが言ったような……、売り専とかやってるわけじゃないんで、もしそういうつもりなら、お断りします」
「はははっ…、おめぇな、なにくだらねぇ事を言ってる、んな事ぁどっちでもいいんだよ、ようやく手に入れたんだ、楽しませて貰うぜ」
だが、三上は面白がるように笑って車を走らせる。
窓の外を見たら、ちょうど姉貴に使いを頼まれた本屋の前を通り過ぎていた。
どうにかして逃げられないか、必死に考えたが、動揺して上手く頭が回らず、そうするうちに車はどんどん街から離れて行った。
目に映る景色は、畑や空き地の合間に民家が点在するような場所に変わっていた。
三上はハンドルをきって修理工場の横を曲がり、脇道へ入っていく。
工場を通り過ぎたらすぐにマンションが見えてきたが、5階建てのありがちなマンションだ。
どうやらそこが三上のマンションらしい。
三上はマンションの駐車場に車を止めると、俺に降りるように言ってきた。
俺にはガタイのいい三上に歯向かうなんて出来なかった。
指示に従って車から降りた。
黙って三上について行くしかなく、一緒にエレベーターに乗ったら、三上は5階のボタンを押した。
エレベーターはふわりとした浮遊感を伴って上にあがり、俯いているうちに5階についた。
廊下へ出て三上の後ろについて歩いたら、三上はエレベーターから1番近い部屋の前に行き、鍵を開けて俺を強制的に部屋の中に入れた。
仕方なく部屋に上がって中を見回した。
手前の部屋にソファーとテーブル、壁際にサイドボードがある。
天井付近には棚がいくつもあり、床はフローリングで敷物は何も無い。
奥の部屋に目を向けると、ダブルベッドにサイドテーブル。
部屋にはそれぞれに窓があるが、昼間だと言うのに分厚いカーテンがひかれている。
テーブルの上には封を切ったウイスキーのボトル、ビールの空き缶、つまみの類などが放置され、灰皿は吸い殻が山盛りになっている。
部屋の隅に置かれたゴミ箱も同様だ。
テツが自分の家だと言ったあの部屋は、綺麗に片付けられていた。
案外マメなんだな……と、テツの事を考えていたら、三上は上着を脱いでソファーに放り投げた。
「よし、始めるか」
壁の方へ歩いて行き、サイドボードの上にある扉付きの棚を開けると、中から何かを取り出した。
「へっ、これを使うぞ」
テーブルの上の空き缶を手で払い落とし、出してきた物を代わりに置いたが、置かれたのはガラス製の大きな注射器と液体が入った透明な袋だ。
唖然としていると、三上が俺に向かって言った。
「おい、わかるか?こりゃシリンジだ」
「え……?」
「こっちはグリセリンだ、これをこの中に入れてお前のケツにぶっ刺す」
説明を聞いて俺は顔が引きつっていたが、三上はニヤついた顔でシリンジを手にして早速準備をし始める。
シリンジはテツにやられた浣腸よりも遥かに大きい。
こんなので浣腸されるとか……怖すぎる。
「あの、俺……、腹がめちゃくちゃ弱いんで、そんなのでやられたら……困ります」
いい言い訳が思いつかず、思いついた事を言って逃れようと思った。
「ごちゃごちゃ言わず、さっさと脱げ」
けど、三上は全く聞く耳を持たず、問答無用でパーカーを脱がしにかかった。
「や、やめてください……!」
三上は霧島組の幹部だと思うが、こんな事……無茶苦茶だ。
「おとなしくしろ!」
「ちょっと待っ……! なんで俺があんたに付き合わなきゃならないんですか」
「うるせー!」
テーブルの横で揉み合いになり、抗って身を引いたら胸ぐらを掴まれて顔を平手打ちされた。
「う"っ!」
よろけて床に倒れ込み、咄嗟に両手をついた。
「殴られたくなけりゃ、おとなしく脱げ」
ガタイのいい三上に殴られたら、平手打ちでもかなりきく。
殴られた顔がじーんと痺れたようになっていたが、それでも俺は……ムカついた。
三上は元から知り合いだったテツとは違い、翔吾の家でたまたま顔を合わせただけだ。
それでこんな真似をされる筋合いはない。
こうなったら……翔吾の立場を利用させて貰う。
「こんな事して……翔吾にバラしてやる」
「おお、そうだったな、おめぇは今でも若とはツレなんだよな?」
「そうだ」
「そうか、信頼出来るツレはいいものだ、俺はな、おめぇと矢吹がどういう関係か知ってる、若がおめぇに惚れてる事もな」
しかし、三上の言葉を聞いて絶句した。
「え……」
「驚いたか、なーに、ちょいと調べりゃわかる事だ、さっき聞いたのは、念の為確認したまでだ、おめぇ、若にテツと付き合ってる事がバレたらマズいんじゃねーのか?」
まさか三上がそんな事を調べてるなんて、予想すらしてなかった。
「くっ……」
悔しいが、言い返せない。
「残念だったな、手を出すからにゃ下調べくらいはする、分かったら服を脱げ」
テツや翔吾との関係をぶち壊す覚悟をすれば、この場から逃げられるかもしれない。
だけど……やっぱり俺には出来なかった。
パーカーには財布とスマホが入っている。
パーカーはソファーの背にかけ、Tシャツやズボンを脱いでいった。
俺が全裸になったら三上もシャツを脱ぎはじめたが、三上は俺の股間に目をとめた。
「おめぇ、その毛はどうした、そりゃ明らかに剃られた跡だな」
「元から……です」
「嘘つくな、矢吹に剃られた、そうだろ? くっくっ……あいつ……相変わらずよくやるわ」
三上はテツがやったと決めつけると、シリンジに薬液を入れていく。
「四つん這いになってケツを出せ」
それが済んだら俺に命じてきたが……。
そんな格好、もしテツに言われたとしても嫌なのに、全然絡みのない三上の前でやりたくない。
「で、出来ません……」
恐る恐る断った。
「やれって言ってんだよ!」
「うっ!」
すると腕を掴まれて引っ張られ、また顔を平手打ちされた。
「おい! 俺は矢吹ほど甘かねーぞ、さっさとやるんだ、やらねぇといくらでも殴ってやる」
この三上という男はやたら暴力を振るう。
大きな手で思いっきり殴られたら、痛い上にアザがつきそうだ。
「くっ……」
渋々言う事を聞くしかなく、床に四つん這いになったら屈辱感が込み上げてきた。
「おめぇケツ毛生えてねーのか、っはは、それにしてもこの尻、下手な女より綺麗な尻をしてやがる、今どきのガキはきれーだな、ふーん、穴はまだ使い込まれちゃいねーな」
三上は尻臀を両手で開き、好きな事を言ったが、いくら既にテツに見られているとはいえ……四つん這いでそんな箇所を見られるのは堪らないものがある。
だけど、なんでこんな奴に……って思うと、無性に腹が立ってきて、怒りが羞恥心を上回っていた。
「浣腸はシリンジに限るな、くっくっくっ、たまらねぇぜ」
シリンジの先端部が体内にねじ込まれ、腸内に冷たい液体が流れ込んできた。
「へへっ、グリセリンだ、さあ、しっかり呑め」
「う……」
薬液は腹の中にどんどん流れ込んできて、反射的に体がこわばった。
「よーし、多めに150入れたからな」
三上は150と言ったが、俺は適量など知る筈がない。
シリンジが体内から引き抜かれると、下腹全体がひんやりとして重苦しさを感じた。
「っ……」
いつ便意が襲うか冷や冷やしていたが、大量に注入されたにもかかわらず、テツの時みたいに直ぐに腹がしぶる事はなかった。
案外楽かもしれないと気を抜いた瞬間、アナルに硬い物がねじ込まれた。
「う"っ!」
肩がビクリと震えた。
浣腸は終えた筈だが、一体何なのか分からない。
ヌルッと滑るように入り込んだ物体は、直腸を圧迫する程大きい。
「今入れたのは、アナルプラグだ」
三上の言葉を聞いた直後に、静かだった腸が急に暴れ出した。
「ふっ……! うう"ーっ!」
さっきはテツにやられた時より楽かと思ったが、それは違っていた。
あの時よりも腹の渋り具合が強烈だ。
「おお、効いてきたか、安心しな、へへ、プラグをしてりゃ溢れ出すこたぁねー」
三上は高揚したように声をうわずらせて言ったが、直腸が激しく蠕動して強い便意に襲われる。
「ううう……、ん、んう!」
背中がゾワゾワして鳥肌が立ち、腸がうねってギュルギュル悲鳴をあげた。
「ハァハァ、く、うー! …ハァ、あ」
やっぱり薬液の量が多いせいなのか、腹の中で腸がギューっと締め付けられ、強い痛みとなって襲いかかる。
内側から出そうとする圧力が半端ないが、圧力はプラグによって封じ込められている。
薬液に刺激された腸は死に物狂いでうねり、腹の痛みに襲われる度に総毛立つような寒気を感じた。
「ハァ、あっ、ハァ、くっ……! う"ぅーっ!」
床に顔を擦り付けて呻き声を漏らしたら、三上が目の前にやって来て顎を掴んできた。
「へへっ、苦しーか?」
三上は膝をついて聞いてきたが、腹の中の汚物を出さなきゃ……このままじゃ死にそうに苦しい。
「く、苦しい……トイレに行かせてくれ」
「おお、連れて行ってやってもいいが、その前にやる事がある」
プライドを捨てて必死に頼んだら、三上は俺の口元にナニを押し付けてきた。
「楽になりたきゃ、しゃぶれ」
「う……」
饐えた臭いが鼻について顔をそらした。
「おい、なに顔をそらしてる、さっさとしゃぶらねーか!」
三上は俺の髪を乱暴に掴んで上に引っ張った。
「う"う"っ! い、痛てぇ……」
「口を開けろ!」
髪の毛を思い切り引っ張られ、堪らず口を開けてナニを咥えた。
「お"……ぐっ!」
「歯を立てんじゃねーぞ、もし立てやがったら、夜までそのまんまだ」
臭いも気持ち悪かったが、喉を突かれてえずいた。
「あ"……が……カハッ…ぉ…え"っ!」
えずいた事で涙が滲み出し、口を塞がれて苦しくて堪らなかったが、三上なら本当に夜までこのままにしそうだ。
もしそんな事になったら……想像しただけで生きた心地がしなかった。
この前テツにやらされたとは言っても、2回目で上手くできる筈がなかったが、吐き気を堪えて竿をしゃぶるしかない。
但し、我慢汁が混ざった唾液は飲みたくなかったから、バレないように唾液と一緒に口の端から零した。
「意外と出来るじゃねぇか、テツに仕込まれたのか? あいつはな、てめぇがものにした奴ぁパイパンにしてタトゥーを入れる、毎度それだ、おめぇはタトゥーはまだだな」
繰り返し襲う腹の痛みに鼻水まで垂れてきたが、苦しみの中で耳にした三上の話がちょっと引っかかった。
テツはものにした人間をパイパンにして、タトゥーを入れると言ったが……。
じゃあ俺は、テツにとってコレクションのようなものなのか?
そう思ったら気持ちが凹んだが、すぐにそれを打ち消して、三上の言う事を鵜呑みにしちゃ駄目だと思い直した。
それよりも、そんな事を考えるうちに、しぶる腹がパンパンに張ってそれどころじゃなくなってきた。
「あ"……う"っ……!」
暴れ回る腸が強く蠕動を繰り返し、プラグがひくつく穴に合わせて揺れ動いている。
──もう限界だ。
耐えられなくなって竿を口から出した。
「はあ、はあ! もう…、トイレにっ……! た、頼む、プラグを……!」
あまりの苦しさから、勝手に涙が頬を伝っていた。
「ま、いいだろう、連れてってやる」
三上は一応満足したのか、立ち上がって全裸になった。
俺は苦しさのあまり床に額をつけて呻いていたが、三上は脱いだ服をソファーに投げた後で俺の腕を掴んで立たせた。
「おら、来い」
トイレに連れて行かれ、便座に座った状態で少し尻を浮かせ、三上がアナルプラグを抜いた。
「う"っ……あ……ハァハァ……うぅっ!」
栓が抜かれた途端、勢いよく汚物が噴き出した。
耳障りな音を立てて噴き出す便は、グリセリンで長く浸されたせいか、液状化している。
「汚ねーなオイ、っははっ、な、俺に見られて恥ずかしいか? どうなんだよ、言ってみな」
三上は煽るように言ったが、これって既に経験済みだし、その上、俺は三上の事が嫌いだ。
だからなのか、自分でも不思議な位冷めた気持ちだった。
三上には目を向けず、無言でレバーを動かして水を流した。
「ふーん、やけに落ち着いてるじゃねーか、な、テツは何をした、拘束したか? それとも薬を使ったか」
腹ん中が空っぽになって力が抜け、脱力感に浸りながら答えた。
「何も……普通です」
「ふーん、そうか、おい友也、もうわかってるとは思うが、俺との事は俺とお前、2人だけの秘密だ、わかったな?」
三上は俺に言い聞かせてきたが、俺にこんな真似をした事が翔吾にバレると……相当ヤバイだろう。
そうなれば自ずとテツとの事もバレる羽目になるから、俺はそれを恐れているのだが……。
もしもバレたと仮定して考えたら、翔吾は当然腹を立てるだろうが、テツは補佐兼乳母役だ。
それと比較したら、三上はただの幹部の内のひとりに過ぎない。
テツに対する怒りを上回るんじゃないか?
だから、三上はそれを恐れている。
「はい……」
本心じゃ、翔吾にバラしてズタボロにされればいいのにって思ったが、俺にそんな大それた事ができるわけがない。
「テツに教わってるなら、次にやる事ぁわかってるよな? ほら、立ちな」
三上に促されて立ち上がり、トイレから出て浴室へ行った。
すると三上はシャワ浣を自分でやれと言う。
確かにテツにはやって貰ったが、自分でやるのは初めてだ。
上手くやれるか自信はなかったが、テツにやって貰った時の事を思い出しながら、一生懸命やったら……なんとかできた。
三上はニヤニヤしながら俺を見ていたが、俺はまだ経験が浅いのに、自力でシャワ浣ができてしまった事がショックだった。
それが終わったら、三上は先にベッドで待っていろと言う。
三上の言う通りにするのは腹が立って仕方がなかったが、翔吾やテツとの関係がぐちゃぐちゃに壊れてしまうのは絶対に避けたい。
だから俺は、風呂場から出て洗面台の棚からタオルを出して体を拭いた。
そのままベッドに向かったが、ソファーの横を通り過ぎようとした時に、脱ぎ捨てたパーカーから着信音が聞こえてきた。
──ドキッとした。
焦るようにパーカーのポケットからスマホを出したら、思った通りテツからの着信だった。
出ようか迷ったが、三上はまだ出て来ない。
テツの声が聞きたかった……。
「もしもし……」
『おう、何してたんだ? なかなか出なかったな』
「スマホを置きっぱなしにしてたんだ」
俺は適当な言い訳をした。
『そうか、こないだは折角電話くれたのに悪かったな』
テツはこの前俺が電話した時の事を謝る。
「いや……」
俺はそんな事よりも、助けてくれって言いたかったが、全力で我慢するしかなかった。
『俺もよー、情けねーが、やっぱり若にゃ知られたくねぇ、俺がやった事はある意味ルール違反だ、そんなのは覚悟の上だが、もしバレちまったら若を傷つける事になるからな』
テツは自分が叱られる事より、翔吾の事を心配している。
「そっか……、俺もだ」
俺だってこれ以上翔吾を傷つけたくない。
『おめぇ、今何してる』
すると、テツは思いついたように聞いてきた。
「姉貴の使いで……本屋に来てる」
……咄嗟に嘘をついた。
『そうか、ははっ、また姉ちゃんにこき使われてんだな』
テツは楽しげに言ってくる。
「ああ、うん、まあ……」
悲しくて泣きそうになったが、必死に抑えて言葉を返した。
『で、明後日だが、夜に迎えに行くわ、こないだと一緒だ、19時にあの場所に出て来い、いいな?』
テツは俺に出てくるように言う。
「わかった……」
無理矢理ヤラれたのに、今は誰よりもテツに会いたかった。
『そんじゃ、それまで楽しみにしてな、ま、お前にとっちゃ災難だろうがな、ははっ、じゃ切るぞ』
テツは冗談めかして言うと、そのまま電話を切ろうとする。
「あっ、テツ!」
思わず声をかけていた。
『ん?どうした』
「俺……災難とは思ってねーから」
俺はついテツに縋りつこうとしていたが、すぐに『それは駄目だ、それをやったらおしまいだ』と思って、全然違う事を言った。
『ほお、くっくっくっ、遂に落ちたか?』
テツは意地悪く笑ってふざけたように返してくる。
「そうじゃねー、俺は……」
今自分が置かれている現状と、テツに対する思い。
それらがごっちゃになって何を言ったらいいか、分からなくなった。
『わかったわかった、その辺の事ぁ明後日にじっくり聞いてやる、そんじゃ友也、またな』
テツは明後日の事を言って電話を切ってしまい、俺は激しくガックリきた。
「テツ……」
通信の途絶えたスマホを握ったまま、床に跪いていた。
「矢吹からか? あいつ、今日は定例会に行ってる筈だが、わざわざ電話してくるとは、おめぇの事がよっぽど気に入ってるんだな」
不意に声がして振り返ったら、三上が腰にタオルを巻いて立っている。
電話してたのがバレてたらしいが、三上にそんな風に言われたら……何故俺がこんな奴と付き合わなきゃならないのか、すげー馬鹿馬鹿しくなってきた。
「やっぱり……嫌だ、俺、こんな事やりたくない」
「おめぇ、矢吹に惚れてるのか?」
「そんなんじゃねー」
「なあ友也、俺もバイだが、あいつはあの見てくれだ、付き合う相手にゃ不自由しねー、ムカつくが……奴はどこへ行ってもモテる、で、気に入った相手はとことん落とす、な、悪い事ぁ言わねー、あいつはやめておけ、散々弄ばれて飽きたらポイだぞ」
三上はテツの事を悪く言うが、俺はテツとじかに関わってきたからわかる。
「そんな……テツはそんな人間じゃねー」
「あのな、頭を冷やして考えろ、俺らは人を騙して飯を食ってるようなもんだぜ、お前のような世間知らずのガキを騙すのは簡単な事だ」
けれど、三上はあくまでもテツを悪者にしたいらしい。
「それを言うなら、あんただって同じだろ」
俺からすれば、なんの関わりもない三上なんか信用できるわけがなかった。
「いいや違う、俺なら小遣いもやる、パイパンにしたり、タトゥーを入れさすような真似はしねー」
三上はすぐに金の話をするが、その考え方がイカレてるとしか思えない。
「金はいらねー、それに……テツがやりてーなら……それでいい、頼むから帰してくれ!」
今の俺はパイパンとかタトゥーとかどうでもいい。
三上とやりたくなかった。
「ちっ、どうしようもねーな、オラ来い!」
なのに、引っ張られて無理矢理ベッドに連れて行かれた。
抗って藻掻いたら、紐のような物で両手を後ろ手に縛られた。
「おい、もういっぺんしゃぶれ」
ベッドの上に仰向けに転がされ、三上は俺の顔にまたがって口にナニをねじ込んでくる。
赤黒い竿を再び咥える羽目になり、また嫌な匂いがするかと思ったが、シャワーを浴びたせいかそれはなかった。
但し、やり方が乱暴でグイグイ喉を突いてくる。
苦しくて涙が滲み出してきたが、三上はニヤついた顔で竿を出し入れする。
「喉奥まで咥え込めるようになれ、そしたら矢吹も喜ぶぞ」
三上のはテツのような反った竿ではないが、それなりに太い。
張り詰めた先端が喉を突く度に掠れた呻き声が漏れる。
口の中に唾液と我慢汁が混ざった汁が溜まり、最初にやらされた時のように吐き出したかったが、上に向かされているせいで吐き出す事が出来ず、嫌々飲み込むしかなかった。
涙が滲んで視界がぼやけ、苦しみから解放される事だけを願って竿を頬張っていると、やがて三上は口から竿を引き抜いた。
「あ、はあっ、ハァハァ、あ……」
足りなくなった酸素を必死に吸い込んだが、酸欠になって頭がボーッとなっている。
そんな中で足を抱えられ、足の間に三上が入り込んできた。
「ハァ、ハァ、や、やめて……くれ」
「今更ジタバタしてもどうにもならねぇぞ」
三上はアナルにローションを垂らし、自分の竿にも塗りたくっている。
「こんな……やりたくねぇ……」
体を捻ろうとしたが、後ろ手に手を縛られた状態じゃろくに動けない。
「矢吹が気に入ったぐれーだ、どんな具合か楽しみだな」
三上はやたら楽しげだ。
先端を穴に押し付けられ、嫌で堪らなかったが、ローションで濡れたそこは三上を受け入れてしまった。
「ん、う"ぅっ!」
竿が根元まで埋まり、テツに無理矢理ヤラれた時の何倍も嫌だったし、ひたすら拒絶する気持ちしかない。
「成程……、確かに悪くねーな」
三上は感触を確かめるように言って俺の上にかぶさり、竿を突き込み始めた。
太い竿が容赦なく腹を抉りあげ、背中に悪寒が走った。
「う"っ、くっ、うう"っ!い……嫌だ……、嫌だ……」
嫌すぎて自然と口をついて出ていた。
「おい、そんなに俺が嫌いか!」
三上は声を荒らげ、俺の髪の毛を鷲掴みにして怒鳴った。
「う"っ!」
「ああ"? どうなんだよ!」
「こんな事……されて、好きになれる……わけがねー」
髪を引っ張られて痛かったが、翔吾んちでたまたま遭遇した坊主頭にヤラれるなんて、理不尽すぎて許容できる筈がない。
「ふん、矢吹に優しくして貰ったのか? おめぇに教えてやる、俺らはな、なんの特にもならねぇ事にゃ手を出さねー、おめぇのその見てくれなら結構稼げそうだ、飽きて捨てられるだけならいいが、下手すりゃウリ……客を取らされるぜ、体を売るんだ」
三上は動きを止めて俺の真正面で言ったが、そんなの嘘に決まってる。
「そんな……わけ……ねー」
「信じねーか、だがな、現に過去にあいつが付き合ってた女で、今はソープで働いてる女がいるんだぜ、可哀想によ、だから言わんこっちゃねぇんだ」
俺は聞く耳を持つまいとしたが、三上は具体的な話を出してきた。
「う、嘘だ……」
でも俺は『嘘だ、テツがそんな酷い真似をする筈がない』って、そう信じたかった。
「嘘なもんか、なんならその女に会わせてやろうか?」
だが、三上はその女に会わせるとまで言う。
「おめぇはテツが初めての相手だろ? 夢中になるのは分かるが、やめておけ、頭を冷やして俺と付き合え」
三上は真面目な顔で言うと再び体を動かし始めた。
大きな体が揺れ動く度に怒張したナニがアナルを突き上げて往復する。
「ふっ……、俺のも満更じゃねーだろ、食わず嫌いはよくねぇ、よし、そろそろ出してやる」
体が三上の動きに合わせて揺れ動き、薄ら笑いを浮かべる顔を見てイラッときたが、快楽を覚えた体は……意志を無視して勝手に感じ始めてしまった。
「ハァ、ハァ、ハァ、う、ぁ」
息が乱れ、為す術もなく目を泳がせていると、ぐっと深く貫かれて声が漏れた。
「っ、あっ、ああっ!」
三上の竿が体の中で脈打って体液を飛ばし、股間の竿がそれに応えるように脈打っていた。
腹の中から痺れるような快感が湧き出してくる。
「うぅ、ハァハァ」
俺は襲いくる快楽に耐えながら、快楽が早く過ぎ去るのを願った。
「おい友也、トコロテンまでしやがって、益々気に入ったぜ、矢吹と被らねーように連絡する、必ず出て来いよ」
三上は満足するまで出して俺の上から退いた。
それから俺をひっくり返して手首の紐を解きながら言ったが、こんな事はもうたくさんだ。
「もう……これっきりでいいだろ」
「逃げても無駄だぞ、暇を持て余したチンピラならいくらでもいる、そいつらを使って拉致るからな」
けれど、三上は1回きりでは終わらせてくれそうにない。
「そんな……」
「いいか? この事は絶対口外するな、それが互いの為だ、余計な事を言ったら……俺だけじゃなく、矢吹を破滅に導く事になるんだからな、おい友也、俺と楽しもうぜ、そのうち俺の方がよくなる、くっくっくっ……」
またテツの事を言われて脅され、結局、三上と付き合う事を承諾するしかなかった。
俺はシャワーを浴びた後で三上に送って貰ったが、拉致られた場所ではなく、行く予定だった本屋の近くで降ろしてくれるように頼んだ。
三上は俺の頼みを聞いてくれたが、車を降りる前にまた念押しをしてきた。
誰にも言わない事を約束して車から降りたら、三上は手早く自転車を降ろして直ぐに車に戻った。
三上も俺を気に入って目をつけたんだろうが、テツとは明らかに態度が違う。
最初っから金だなんだと言ってたし、三上は俺に『テツに弄ばれて捨てられるだけだ』と言ったが、俺の事を玩具感覚で弄んでるのはテツじゃなく、むしろ三上の方なんじゃないのか?
俺は走り去る車から目をそらし、スマホで時刻を確認した。
もう5時をすぎている。
おつかいを頼まれたのは昼頃だったから、姉貴に文句を言われるのは覚悟するしかないが、取り敢えず本屋に立ち寄って頼まれた本を買った。
自転車に跨って家に向かったが、途中で何気なく床屋が目にとまり、スマホの電源を切って床屋に入っていた。
このやりようのない感情……。
怒り、悔しさ、情けなさ……それらを少しだけでもすっきりさせたかったからだ。
夕方で空いていた事もあるが、カットだけなら早い。
30分もかからずに終わり、床屋を出て再び家に向かってペダルを漕いだ。
髪は前髪を長めに残したショートカットにしたので、前髪はちょっと邪魔だったが、後ろはかなり短くなっている。
風が当たる度に首がすーすーしたが、ちょっとだけ気分が軽くなった。
ただ、三上の話を信じたくはないが、過去にテツが付き合った女の話。
それが無性に気になった。
多分彼女だったんだろうが、だとしたら……何故今ソープで働いてるんだ?
テツが女を金づるにするとは思えない。
その元カノの事を考えると、果てしなく気分が重くなったが、俺は三上の言う事に惑わされたくなかった。
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