105Best partner(友也21才~、出産祝い)

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105Best partner(友也21才~、出産祝い)

◇◇◇ バズーカは仕方がないと諦めてくれたが、テツはまた我儘を言い出した。 寺島がいるのにヤルと言う。 当たり前に嫌だと言ったが、一旦言い出したら言う事を聞かないのはテツの十八番だ。 仕方なく承諾した。 寺島は先に寝たので、シャワーを浴びるついでに用意を済ませた。 テツは俺と入れ替わってシャワーを浴びに行ったが、寺島はイビキをかいて寝ている。 目を覚ます心配はなさそうだ。 ソファーをくっつけてるから、横は背もたれでガードされているし、両端には肘掛けがあるので、無茶をしてジャンプでもしない限り、豆太郎が落ちる心配もない。 少ししてテツがベッドに上がってきたが、龍王丸が俺の横に陣取っている。 テツはお構い無しに反対側から布団に潜り込んできた。 俺もテツも腰タオルで浴室から戻ったから、互いに全裸だ。 「うっ……重っ」 勢いよくのしかかられ、重みで息が詰まった。 「ニャー」 龍王丸が不機嫌そうな顔でテツを睨んでいる。 「また引っ掻かれるよ」 忠告したら、首に唇が触れてゾクッとした。 「なもん、かまうか……」 荒らげた息遣いがかかり、鼓動が高鳴ってくる。 「元気だな、真夜中なのに」 昂りを見透かされるのが嫌で喋り続けた。 「あたりめぇだ、勃たなくなったら終わりだからな」 胸に唇が触れ、体の奥から熱気が込み上げてきた。 「次は……いつ? 昼に出るの? それとも夜か……」 その気なんかなかった筈だが、抑えようとしても息が乱れる。 「夕方だ」 テツは質問に答えて乳首をカリッと甘噛みした。 「いっ……!」 体がバネのように反応し、ビクンと震えた。 「ピアスの穴は塞がったが、相変わらず感度抜群だな~」 舌先が動き回り、下腹部に熱が集まってくる。 「っ……、んんっ……」 河神にやられた後、一時異様に感じるようになっていたが、あれは落ち着いた。 それでも元から感じやすいから、舌先でグリグリやられたら堪らない。 「こっちもだ」 無骨な手が熱く勃ちあがる竿を掴み、カリ首を引っ掛けるように扱く。 「うっ……うくっ」 竿がビクビク脈打ち、先走りをトロリと零した。 「おめぇはよー、抱かれる為に生まれてきたようなもんだ、みろ、こんなに濡らして……、なのによー、俺を掘った」 テツは不満げに言うが、それはおかしい。 「あんたも……OKしただろ?」 「ああ、しちまった、だからよー、もう終わりだ」 何が終わりなのか知らないが、手はしっかり動かしている。 「なんだよ……終わりって……、酷くね?」 やられっぱなしは悔しいから、ナニをギュッと握り返してやった。 「う……、やりやがったな」 テツは怯んで手を離したが、さっきから龍王丸が狙っている。 「ニャウーッ!」 龍王丸はテツの腰の辺りにいたが、無防備な肌に向かって鋭い爪を振り下ろした。 「痛てぇ~! ケツに突き刺さった」 テツはガクッと前のめりになり、俺の上に倒れ込んだ。 「へへっ、参ったか」 嫌々掘られたような事を言うから、龍王丸が俺の代わりにやってくれた。 「くう~、クソ~、ケツに爪なら……ケツにナニだ~! 待ってろよ、このっ」 テツは勇んで起き上がり、さっさと準備を始めた。 「なんだよ~いきなりかよ」 「いいから、足を曲げてな」 ローションを塗り込んでいったが、どうもやっぱり引っかかる。 「俺は……あんたを抱くからな」 リバOKだと言った筈だ。 「聞こえねー、なんにも聞こえねーぞ」 なのに、すっとぼけてナニをあてがってくる。 もっと追求したかったが、反り返った竿は反則だ……。 「ううっ……!」 正常位だから急所をまともに突き上げ、淫靡な痺れが湧き出してくる。 「オラ、いっくぜ~」 体が強ばったが、テツはお構い無しだ。 膝をついてリズミカルに腰を動かし始めた。 「あっ、あっ、ちょっ、ちょっ、待っ、待っ」 突かれる度に自然と声が漏れる。 「へへっ、なんだよそりゃ、新手のラップか?」 確かにラップだ。 「ぷっ……、くっ、うう~」 つい吹きそうになったが、急所を叩かれちゃ笑う余裕なんかなかった。 「う、あっ、わっ、あっ、あっ、あっ」 結局、ラップ調になっていた。 「おめぇ、もれなくメスイキするようになったな、へへっ、どうだ、たまらねぇだろ、ラップでメスイキだ、なははっ!」 悔しいが……当たりだ。 やむを得ず色んな経験をする羽目になり、体の感度は更に上がっている。 「たっ、タイ、厶っ、うっ、あっ、あっ」 連打は勘弁して欲しかったが、テツはまた俺をおちょくって意地悪する。 「いいぞ、なかなか上手いじゃねーか、ラップデビュー出来そうだな」 途切れなく快感が襲ってきて、あっという間に我慢出来なくなった。 「ううーっ、テツ!」 起き上がってテツの肩を掴んだ。 「お、おい……! 倒れるじゃねーか」 テツは前に倒れそうになったが、咄嗟に俺を抱きとめた。 「ちょい待て、よっと……」 そのまま足を崩して座位の体勢をとったが、毎度毎度……性懲りも無く意地悪する癖に、いざって時はちゃんと抱きとめてくれる。 こんな調子だから……憎めない。 「テツ、あんた……ムカつく、でもズリぃ、初めっからそうだ、だから俺……あんたに」 思いっきり抱きついて、思いつく事を口走った。 「へへっ、なあ友也」 「な、なんだよ」 「どっちかがくたばるまで……ずっと一緒に居ようぜ、こうして抱き合ってっと、気分がいい、だからよー、取り敢えず……このままだ」 テツは笑って言う。 「そうする……、マジだからな」 そんなの……言うまでもない事だ。 「じゃ、ぼちぼちイクぞ」 大きな手が両側からケツを掴み、激しく突いてきた。 手が離れ、倒れそうになって後ろに手をついたら、先端がモロ急所を叩いてくる。 「ふあっ、も、もう……う"ぅっ……!」 張り詰めた竿がビクビク脈打って、体液が飛び散った。 「おお、よーし、じゃ、いっちまうぞ~」 テツは一度竿を引いて深く突き上げ、そのまま動きを止めた。 「っう! はあ、テ、テツ、こっちに……」 快感でむせ返り、堪らなくなって手を伸ばした。 「おお……」 のしかかる重みに息が詰まったが、無我夢中で汗ばんだ体を抱き締めた。 吐き出した体液がヌルヌル滑り、オス臭い匂いに塗れながら逞しい腕に抱かれる。 脈動を感じたら、永遠にこのまま繋がっていたいと……いつもそう思う。 ◇◇◇ 翌日、寺島は先に部屋を出て行った。 テツはその後で出かけて行ったが、俺はバイトの時間まで好きに過ごした。 夕方迎えに来たのはケビンとイブキだったが、イブキは話がしたいと言って後部座席に座ってきた。 「ねー友也君」 「ん?」 「俺さ~、寺島の兄貴は諦めた」 「あ、そうなんだ……」 いきなり寺島の話題がくるから焦ったが、割り切ったような事を言う。 「付き合ってた人も~別れた」 イブキは暴露したが、イブキが付き合ってたマネージャーというのは、俺は全然知らない奴だ。 「あ~、そうなんだ」 返す言葉がない……。 「へへ~ん、でさ~、今ケンジと付き合ってる」 「ええっ……」 だが、ちょっとびっくりした。 「ふふっ、あのね~、ケンジ、背中にタトゥー入ってるんだ」 という事は……ケンジと寝た……かもしれない。 というか、確実に寝ただろう。 「へえ、そうなんだ、で、タトゥーはどんなの?」 まぁでも、別に大した事じゃないし、俺はタトゥーが気になった。 「髑髏、呪われそうな絵だよ~」 「そっかー、髑髏か……」 タトゥーだからきっと洋風なんだろう。 「友也君の鷹、また見たいな~」 「えっ、ああ、機会があれば……」 「今、だめ?」 「えっ? い、今はちょっと……」 イブキは鷹を見たがったが、いくら車の中でも、肌を露出して墨を見せるのは抵抗がある。 適当にはぐらかしたら、イブキは再びケンジの話をし始めた。 どこに行ったとかそんな話だが、同じ立場だし、今度は長続きしそうな気がする。 2人に送って貰い、何事もなく店に到着した。 テツは竜治の事を用心しているが、もし2人に護衛された状態で襲撃してきたら……笑える。 そんな馬鹿な事は有り得ないだろう。 店に入ったら、すぐにミノルと会って一緒に仕事を開始したが、今日も三上が憑依していた。 割烹着と三角巾を身につけて掃除をしていると、ハルさんがやって来て動画を撮り始めた。 本人はこっそり撮ってるつもりらしいが、俺は気づいていた。 「なあオイ、あいつ……また動画撮ってるぜ」 三上も気づいたらしく、小声で言ってきた。 「まあ、個人で楽しむなら、別にいんじゃないですか」 実害はなさそうだから、別にいい。 「楽しむって……、あいつ、マジでおかずにする気か? クックッ……、変わってるよな~、あんな執事みてぇなナリしてよ~、ビシッと礼儀正しい癖に……、あいつも変態だ、コアな部類だがな、なははっ」 三上は面白がって笑ったが、今はやる事をさっさと済ませたい。 聞き流してモップを滑らせた。 「ハルさん、やだぁもう~、また隠し撮り?」 すると、マリアが控え室から出てきてハルさんの側へ行った。 「何を言ってる、私がそんな事をするわけがないだろう」 ハルさんは何食わぬ顔でスマホをポケットにしまい込み、メガネのフレームを片手でくいっと引き上げてとぼけた。 「ハルさ~ん、あたしの目は誤魔化せないわよ、ふふっ、ね、そんな物を撮るって事は欲求不満なんじゃない? マネージャーって疲れるから~、たまにはあたしが癒してあ げ る」 マリアは毒気を撒き散らしながら、ハルさんに迫った。 「な、なにを言ってるんだ……、私はマネージャーだよ、君達を束ねる立場だ、君は従業員、私はマネージャー、立場を弁えなさい」 ハルさんは壁際に立っているが、正面から迫るマリアに手の平を向け、背中を壁につけて抵抗している。 「またまた~、堅苦しい事は言いっこなし~、ね~、たまにはいいじゃない」 マリアは背が高いし、威圧感たっぷりにハルさんを追い詰める。 「マリア、あ……頭を冷やしなさい」 ハルさんは逃げだそうとしているが、マリアはハルさんを両腕で包み込み、ゆっくりと顔を近づけた。 「うお……、エグイな、おい……」 また三上がやってきたが、顔を顰めるわりには、しっかりと成り行きを見ている。 「なっ、 なにを……! よせ、私はマネージャーだぞ、離せ!」 ハルさんは藻掻きまくり、隙をついてなんとかマリアから脱出した。 「キャハハッ~、貰ったぁ~!」 マリアはパッと離れたが、手にスマホを持ってはしゃいでいる。 「あっ、コラ……! 返しなさい……、返すんだ」 ハルさんは胸ポケットを探り、慌ててマリアを追いかけた。 「あいつ、相当慣れてるな」 三上は感心したように言ったが、確かに今、マリアがハルさんからスマホを盗んだのは全く分からなかった。 マリアのスリの腕は神レベルだ。 けれど、俺は俺だし、やる事をやらなきゃならない。 マリアとハルさんのおバカな戯れあいを横目に見ながら、黙々と掃除を続けた。 シャギーソルジャーは花車とは違う。 ニューハーフ達のやる事をいちいちを気にしてちゃ、この店じゃやってけない。 ◇◇◇ 店内ではマリアに絡まれたり、久しぶりに堀江が来たりしたが、もう腹を括っている。 小さな諍いや困り事をこなしつつ、同じような毎日が過ぎていった。 気づけば俺は21才になっていたが、テツは相変わらず、昼夜関係なく出かけて行く。 カオリとは近所づきあいをしている。 一緒に料理を作ったりするうちに、段々姉貴みたいな感覚になってきた。 実の姉貴はというと、あれから赤ん坊が無事に生まれ、ちょうどハイハイし始めたところらしい。 俺は赤ん坊が生まれた時、忙しくて病院へは行けなかった……というのは口実で、実は行かなかった。 病院へ行けば、母さんと顔を合わせる羽目になるからだ。 子供は男の子だったらしく、名前は蒼介。 古風な名前だが、火野さんは自分の名前が源三郎だし、水垢離や鍛錬をするような人だ。 古臭い名前をつけるんじゃないかと思っていたが、蒼介ならおかしくはないと思う。 姉貴は退院してそのまま実家へ行き、ずっと向こうで過ごしている。 俺は行ける筈がないから、火野さんから話を聞くだけだが、母さんは初孫にメロメロになってるようだ。 火野さんは母さんには気に入られてるし、夫だから当然実家に通っているが、火野さんが言うには、父さんが祝いをしてやると言ったらしい。 あんな父さんでも、やっぱり孫は可愛いようだが、火野さんの事を見下してる癖に……悪い意味で笑える。 テツは火野さんに祝い金を渡したようだが、俺はまだ何も渡してない。 弟だし、現金を渡すのは気が引ける。 かといって……何がいいか悩む。 姉貴はあと3日したらマンションに戻ってくる。 赤ん坊と初対面は何気にドキドキするが、それよりもまず祝いだ。 今日はバイトが休みだから、何か買いに行かなきゃ……そう思いながらソファーでゴロゴロしている。 「ニャ~ン」 龍王丸はまだ預かっているが、最近ようやくテツを攻撃しなくなった。 「あ~あ、龍王丸~、なにがいい?」 俺の脇で寝転がってるから、腹を撫でながら聞いてみた。 「ニャッ……ニャッ……」 喉を鳴らし、短く鳴いて甘えている。 「えへへ……」 可愛いから、もうちょいまったりする事にした。 「あとちょっとか~、寂しいな~」 姉貴が帰ってきて龍王丸を返却しても、隣だからいつでも会える。 だけど、常に側にいる訳じゃない。 元々ひとりだったんだから……とは思うが、居るのが当たり前になってしまった。 「猫、飼おうかな~」 ぼんやりと考えていると、ドアが開いてテツが帰ってきた。 「おめぇ、姉ちゃんの祝い、まだ買ってねーんだろ?」 上着を翻してやってきたが、帰った早々聞いてくる。 「あ、うん……」 グラサンをかけたまんまだが、かがみ込んでるせいでズレている。 「連れてってやる、用意しろ」 俺は猫の事を相談したかったが、取り敢えず出かける用意をする事にした。 ◇◇◇ 車に乗ったらテツはやけに楽しそうだ。 「なあ、蒼介よ~、写真見せて貰ったんだがな」 「あ、ズリぃ」 「お前、火野に言わなかったのか?」 「うん、忘れてた……」 父さんの話を聞いて、そこまで頭が回らなくなっていた。 母さんの事もだ。 火野さんの話を聞く度に、2人が孫を前に浮かれる様子が目に浮かび、胸がズキンと痛む。 正直、写真どころじゃなかった。 「火野も見せてやりゃいいのによ、気が利かねぇ奴だ」 テツは火野さんを責めたが、火野さんも忙しいし、度々会うわけじゃないから忘れてたんだろう。 「まあーいいじゃねぇか、どうせこれから先、嫌というほど見られるんだしよ」 黙っていると、テツが慰めるように言った。 「うん……」 そういうちょっとした気遣いが嬉しい。 「自分は息子なのにって……、そう思うか?」 だが、ギクッとするような事を聞いてきた。 「いや、別に……」 咄嗟に誤魔化したが、大当たりもいいとこだ。 親と縁を切ってテツを選んだのは自分なのに……息子として蒼介に嫉妬している。 「ならいいが、あのな、蒼介だが……、最初は猿だった、今は……イケてる方じゃねぇか? ま、両方あれだからな、お前にも似てるぞ」 「え、俺に?」 「そりゃそうだ、伯父なら似る事もあるだろ」 「あ、そっか……」 俺に似てる俺の甥……。 と言っても、俺にはなんの実感もない。 俺の父さんと母さんは、両方とも親族との折り合いが悪く、俺は親戚付き合いがなかったし、甥だ姪だとか言われてもよくわからない。 まして、赤ん坊はまるっきり未知の生命体だ。 暫く走ったところで、テツはある店の駐車場に入った。 看板を見てみたら、赤ん坊~子供用品を扱う店らしく『アカマツヤ』と書いてある。 「こんなとこ、よく知ってたな」 「そりゃ通りがかりに何気なく見るだろ、そういやここにあったなと思ってよ、よし、行くぜ」 テツは車をとめてさっさと行こうとするが、激しく戸惑った。 「ちょっと待って、俺達こんな格好だし……、こんな店入りにくいよ」 俺はもしかしたらブランド店に行くかも? と考えていたので、念の為誂えたスーツを着てきたし、テツはいつも通りの格好だ。 こんなヤクザみたいな服装の男2人が、クマの絵がついた看板の店に入れるわけがない。 「な事関係あるか、客は客だ、ほら、降りろ」 けど、テツは毎度ながら平常運転だ。 まったく気にしてない。 「けどさ、他行こう、な? ここじゃなくてもいくらでもあるから」 なにもガキ専門店じゃなくていいと思う。 「お前な……、グズグズするな、ったくよー、引きずりおろすぞ」 行きたくないが、気を変えてくれそうにない。 「わかった……」 仕方なく車から降りたら、早速親子連れに出くわした。 店から出てきた母親と子供だ。 テツは親子連れを見もせずに入口に向かったが、母親は俺達をチラ見してハッとした顔をすると、小さな子供の手を引いて足早に車へ向かう。 なにも悪い事はしてないが、申し訳ない気持ちになった。 入口近くに来たら、店のガラスには動物の絵が描かれていた。 恐ろしく敷居が高い……。 なのに、テツは普通に入って行った。 後に続いて中に入ったら、レジの店員がいらっしゃいませーと言ったが、俺達を見て顔をひきつらせた。 場違い感が半端ない。 店内にはチラホラ客がいたが、若い夫婦やさっき出くわしたのと同じような、幼子を連れた親子連れだ。 広々とした店内は棚で区切られているが、テツの後について店の端から歩いて行ったら、ベビーカーに押し車、ベビーベッド……色んな物が置かれている。 「おい、何にするんだ」 「わかんね、決めてない……」 商品をゆっくり見る気持ちにはなれず、辺りを見回しながら歩いていると、奥の方で若い夫婦が俺達に気づいて2度見した。 俺がそいつらを見たら、即目を逸らして立ち去った。 これじゃまるで……針のむしろだ。 できるだけ目立たないように、それとなく誰も居ない通路へ歩いて行った。 両側には棚があるからここなら安心だ。 「おー、これで背負うのか、へへっ、お前、これ使え」 ホッとしていると、テツが商品を手に取って見ている。 「ん? なにそれ」 「こりゃなかなかいいぞ、これ買ってやるからよ、ガキをもりしろ」 覗き込んで手にした物を見てみたら、パッケージに赤ん坊を背負った母親の写真がついていた。 「おんぶするやつじゃん、なんで俺なんだよ、姉貴がいるのに」 「友也ぁ、遠慮するな、可愛い甥っ子をおぶってやりてぇだろ? その気持ちはよーく分かる、これは俺の奢りだ」 テツはまた訳の分からない事を言い出した。 「いらねぇって」 「お前な、これは買ってやるから早く決めろ」 本気で買うつもりらしいが、おんぶ紐なんかガチで必要ない。 「いや、だからさ、それいらねぇ……! かして」 「へへー、そうはいくか、これをつけるんだ、見ろ、前から見たら縛りじゃねーか、このペケになってるのがなんとも言えねーな」 どうも変だと思ったら、やっぱりそういう事だ。 「あのさ~、こんなもんでなに想像してんだよ、いいから貸せって!」 そんなものを変態プレイに利用されちゃ堪らない。 「なははっ、取れるもんなら取ってみやがれ~、あははっ!」 意地でも奪ってやろうとしたら、揶揄うように商品を持って手を上げる。 「くう~、もう馬鹿じゃね? かせって、この~」 しがみついて腕を引っ張ったが、背が高いから届かない。 ジャンプして何とか掴もうとしたら、横から視線を感じた。 「あ……」 通路の端に親子連れが立っている。 「ママ~、楽しそう、遊んでるの?」 「あっ、こら……、こっちに来なさい」 4、5歳位の男の子がはしゃぐように母親に聞いたが、母親は男の子の手を引っ張ってそそくさと姿を消した。 今のをどう思われたのか……想像すらつかない。 「マジかよ……」 「な、諦めろ、ほら、はえーとこ何か決めろ」 軽くダメージを食らっていると、テツが能天気に言ってきた。 「あんた……、メンタルつえーな」 「あたりめぇだ、そんなもん気にしてるようじゃ、こんな稼業やってられっかよ、それより真面目に考えろ」 「ああ、まあー、うん……」 言われてみれば……な話だが、こんな店にわざわざやってくる神経を疑う。 だけど、これ以上ここで揉み合うのはマズい。 下手をしたら通報される。 諦めて真面目に探す事にした。 とは言っても、生まれてすぐならまだしも、数ヶ月も経っていたら姉貴や父さん母さんが必要な物を買い揃えてるだろうし、何にすればいいか難しい。 ひとまず店を回ってみる事にしたが、俺はもう人目を気にするのはやめた。 テツが言うように、客だと開き直ればいい。 ただ、色々見て歩いたが、これと言ってピンとくる物がない。 「どうすんだよ、もうなんでもいいじゃねーか、気持ちだ、気持ち」 ひと通り見終わる頃にテツが投げやりに言ってきたが、通路の一番奥を見たら、他とはちょっと雰囲気が違う物が置いてある。 「ん……?」 何かと思って近くに行ってみると、円盤型の掃除機だった。 「こりゃあれだな、勝手に掃除してくれるやつだろ」 テツが言った通り、ロボット掃除機だが……。 姉貴は実家じゃ相当楽をしてると思う。 マンションに戻ってきたら途端にひとりだ。 俺は昼間は暇だし、できるだけ姉貴を手伝うつもりでいるが、夜はバイトがあるからずっとついてるわけにはいかない。 「これに決めた」 このロボット掃除機はきっと役立つ。 「これにするのか、結構な値段だが、いいのか?」 価格は7万位だったが、金は貯めてるから大丈夫だ。 「うん、俺、金はそんなに使わねーし、これさ、俺のも買う」 気に入ったから、自分のも買う事にした。 「お前も買うのか、洗濯も掃除も……動かずに済むな、太るぜ、筋トレしろ、親父んとこに連れてってやる」 テツは何かと言えばすぐ筋トレだ。 「バイトしてるし、料理やってるじゃん」 俺は鍛えられた肉体は好きだが、自分が鍛えようとは思わない。 それに、テツと一緒に親父さんちに行ったら、翔吾やその他諸々な人達と顔をあわせる事になり……無駄に気を使う。 「おう、まあな……、じゃ、決まりだな」 掃除機を2台買って帰途についたが、姉貴のはプレゼント用にラッピングして貰った。 「へへー、いい物を手に入れたぞ、たまにゃああいう店にも行ってみるもんだな」 テツはハンドルを片手で握り、くわえタバコでご満悦な様子だ。 「いや、用がねーと、行かねーだろ」 あんな店に行く機会は、多分この先ない。 「まあーいいじゃねぇか、無事姉ちゃんのプレゼントを買えたんだしよ、俺は日が暮れたら出るが、それまではのんびりできる」 「そうなんだ、じゃあ、何か作るよ」 もうとっくに昼を過ぎてるが、一緒にいられると聞いて嬉しくなり、何か作ろうと思った。 「いや、何か食いに行こう、そうだな、フレンチ、イタリアン、それとも焼肉か」 でもテツが誘ってきた。 「じゃ、ラーメン」 折角だから乗る事にした。 「ラーメン? デザートねぇぞ、お前、ケーキやらアイスやら食いてぇだろ」 「いや、別にラーメンだけでいい」 「じゃあれだ、帰りがけに買おう、確か……道沿いにケーキ屋があった」 有り難い事を言ってくれるが、言う事が矛盾している。 「ふっ……」 俺に『太るぜ』とか言っておきながら、ケーキをオススメするのは可笑しい。 「なんだ、なにニヤついてる」 けど、せっかく機嫌よく言ってくれてるのに、そんな事はどうでもいい事だ。 「いいや、なんでもない」 ラーメン屋に寄り、脂っこいやつを腹一杯食べて満足した。 次にケーキ屋に寄ってチョコレートケーキを買って貰い、夕方には部屋に戻って来た。 プレゼントはサイドボードの上に置き、早速自分のを出して床に置いてみた。 「おお~、動いたぞ」 掃除機は静かな音を立てて自走し始め、テツと一緒に働きっぷりを観察した。 「あっ、ぶつかった」 初っ端からソファーにぶつかったが、コツンとぶち当たってバックし、方向を変えて進んで行く。 「ほお~、賢いな」 テツは感心しているが、龍王丸が掃除機の向こう側から歩いて来た。 「フゥゥーッ……」 唸り声をあげて背中を丸めている。 「あ、なんか……やばくね?」 最近はめっきり見なくなった、臨戦態勢のポーズだ。 「ニャウーッ!」 思った通り、掃除機に猫パンチをおみまいした。 「おい、喧嘩ぁ売ってるぞ、なははっ!」 テツは笑っているが、掃除機は龍王丸に向かって行った。 「シャアァァァァーッ! ニャウ~ゥ……」 龍王丸は体を斜めにすると、ぴょんぴょんと連続で横っ飛びした。 きっと、生き物と勘違いしてるんだろう。 毛を逆立てて背中を丸めているが、怖いのか、攻撃出来ずにいる。 「あははっ……、龍、ビビってる」 最近はすっかり自分ちのペットと化している為、龍王丸の事を龍と呼ぶようになった。 龍王丸は目をつり上げて必死に対抗していたが、掃除機はくるっと向きを変えて龍王丸から離れた。 「フゥウウ~……」 龍王丸の興奮は若干おさまったが、唸り声を漏らして掃除機について行く。 「よーし、龍そのままいけ、猫パンチだ、やっちまえ!」 テツはソファーに座ってけしかけているが、最近は躾と称した強制抱っこもやらなくなった。 仲良く……とまではいかないが、無難に過ごすようになっている。 やっぱり俺が言ったように、そっと静かに接するのが正解だったんだろう。 だけど、こんな風にけしかけるテツを見るのも、後少しだ。 そう思ったら、ふと保留した相談事を思い出した。 「なあテツ」 「ん……?」 「姉貴が帰ってきたら、龍王丸返すんだよな?」 「おお、そのつもりだが」 「俺……、猫飼いてぇ」 龍王丸が居なくなったら、寂しすぎる。 「あぁ"? 猫を飼うのか?」 テツは俺の方へ向き直ったが、あんまりいい顔をしなかった。 「いいだろ? 龍王丸居なくなったら……寂しいし」 「お前、寂しいって……、ガキじゃあるまいし」 「俺が世話するから、な? いいよな?」 「あのよ~、って~事は、子猫だろ、やめとけ、めんどくせぇ」 龍王丸は仕方なく預かったが、新しく猫を飼うのは嫌なようだ。 「大丈夫だ、俺がちゃんと面倒みる」 どうせ世話をするのは俺だし、構わないと思う。 「面倒みるっつってもよ~、うーん……」 テツはソファーの背もたれに寄りかかり、難しい顔をする。 「なあ、いい? いいよな? 」 兎に角頼み込んだ。 「龍王丸をこのまま置いとけ、新しい猫はいらねぇ、折角慣れたのによ、また別の猫とか……うんざりだ」 テツは龍王丸を見て言った。 「フウゥゥ~……」 龍王丸は掃除機から一定の距離を保ち、唸り声を漏らして掃除機を尾行している。 そんな様子をのんびりと眺めていられるようになる迄には、結構時間を要した。 あれだけ引っ掻かれたら、テツがうんざりして、新たに猫を飼うのを嫌がる気持ちはわかる。 新しく飼うのは諦めるしかない。 「そっか……、わかった、だったらいい、その代わり……火野さんがいいって言うまで龍王丸を置いといていい?」 火野さんに預かりの延長を頼む事にした。 「ああ、構わねー」 テツはOKしてくれたし、これでいい。 「さてと、じゃ、テストだ」 俺なりに納得したら、テツは足元に置いた袋をとった。 「ん、テスト?」 中にはおんぶ紐が入っているが、そっちは俺が掃除機を買った後で、テツが自分で買っていた。 「ほら、つけてみろ」 テツはおんぶ紐を俺の方へ差し出して言ったが、テストとはつまり……そういう事らしい。 「やだね、誰がつけるか」 そんな物をいかがわしい事に使用しちゃダメだ。 「へへー、それが……そうはいかねぇんだよな~」 テツは悪魔顔でニヤつき、おんぶ紐を持って立ち上がった。 「ちょっ……またかよ、冗談じゃねー!」 久々に出た悪魔顔だが、この顔をする時はタチが悪い。 俺は床に座っていたが、すかさず逃げる体勢をとって隣の部屋目掛けてダッシュした。 「待てコラァ~! 懲りねぇ奴だ、どこに逃げるってんだ? なはははっ!」 けれど、俺のようなズボラな人間には……変態筋肉悪魔に打ち勝つ術はない。 「うわっ! ちょっと、やめろよ」 呆気なく、とっ捕まってしまった。 「オラ、手を通すんだよ!」 何故おんぶ紐をつけなきゃいけないのか、理不尽にも程がある。 「ちょっと~、あんま引っ張ったら上着破ける、大体、意味わかんね~!」 なのに無理矢理おんぶ紐をつけられた。 「っしゃー! 思いっきし締めてやる」 ぎゅうぎゅう締めるから、胸が苦しい。 「う"~っ、締めすぎぃ~」 「よし、出来たぞ」 「うう……さいて~」 肩を落として床に膝をついたら、テツは真ん前に立って俺を見下ろした。 「ふっ……、やっぱりなんとも言えねーな」 「はあ~……」 こういう事は散々やられてきたが、何がおもしろいんだか……。 「スーツにおんぶ紐か、なるほどな~」 テツは感心したように言う。 「つーかさ、苦しいんっすけど~、もういいだろ、外すからな」 おんぶ紐に手をかけたら、ニヤニヤしながら後ろへ回り込んだ。 「へへー、まあそう言うな、なんなら全裸でやるか?」 両肩を掴み、顔を近づけて馬鹿な事を言う。 「何言ってんだよ……、テストはもう済んだ、納得しただろ」 「いーや、まだ終わってねー」 首に息がかかり、ざらつく髭が肌を擦った。 「ちょっと……、まさか、マジで欲情してるんじゃねーよな?」 「いいじゃねーか、へへー」 両手を上着の中に突っ込んできた。 「う"っ……」 無理矢理手を入れるから、紐が余計に体を締め付ける。 「キツイって……、つか、なんなんだよもう……」 「ちょいとやりずれぇが……見つけたぞ」 指先がシャツの上から乳首をカリカリ引っ掻く。 「この~変態っ……」 「と言いつつ、勃ってんじゃねーのか?」 ヤバい……。 こんな意味不明な事をされてるのに、首にキスされたら……気分が昂ってくる。 「うう~、ああ~、もうやだ~」 感じる自分が嫌になる。 「どれどれ、下はどうだ?」 テツは片手を抜いて股間を握ってきた。 「ちょっと~、やめろよ」 抗ってはみたが、力がどんどん抜けていく。 「へへっ、ビクついてっぞ、可哀相によ~、解放してやらなきゃな」 テツはベルトを抜いてズボンをズラしたが、俺はもう抵抗しなかった。 「なあ、これ外していいだろ? おんぶ紐が邪魔だ」 「やる気になったか?」 「ああ」 その気にさせたのはテツだ。 「わかった、外せ」 許可を貰っておんぶ紐を外したら、浴室でやろうと言い出した。 先にテツが浴室に入り、俺はやることを済ませて浴室に入った。 するとテツは湯に浸かっていたが、洗ってやると言ってザバッと勢いよく出てきた。 腕に抱かれ、茹で上がった肌が密着した。 濡れた肌に気分が高まったが、体から立ち上る湯気が鼻に入って……くしゃみが出そうになった。 「ふあっ……」 けど、ムードが壊れるから口を塞いだ。 「ふっ、くしゃみを我慢したな」 テツはニヤリと笑った。 「あ、うん……」 「へへっ、ほら」 ニヤついた顔でナニを擦り付けてくる。 「んじゃ、遠慮なく」 折角だから握った。 「どっちが上手いか、競走するか」 テツも負けじと俺のを握って扱いてくる。 「嫌な競走だな~」 滾る竿は熱い。 血管を浮かせてビクッと脈打ってるが、それはお互い様だった。 「かしてみな」 無骨な手が2本纏めて扱き始めた。 「うっ……」 俺はつま先立ちしてやりやすいようにしたが、竿が擦れ合うと体に力が入り、乳首が視界に入ってきた。 そんな物を目にしたら、放置出来るわけがない。 小さな突起を摘んで、指の腹で押し回すように摩擦した。 テツは耳にキスしてきたが、息が荒くなるのがモロに伝わってくる。 膝を曲げて少しだけしゃがみ込んだら、兜合わせは出来なくなったが、構わずに乳首を舐めた。 このままイケると思ってやる気になっていると、テツは不意に体を離してしまった。 「座れ……、洗ってやる」 言われるままにスケベ椅子に座ったが、あわよくば……と目論んでいただけに、ちょっと残念だ。 いつものように体を洗われ、湯船の中で抱き合い、キスをして……繋がった。 肩を抱いて体を揺らしたが、湯の中じゃ上手く動けない。 テツが下から突き上げてきたが、感じる箇所を摩擦されたら堪らなくなり……。 俺はあっさりイキ果てた。 「くっ……う……うくっ!」 奥を突かれ……体の中に体液が飛び散った。 「へっ……、種つけだ」 イった状態から逃れられない。 「ふはっ、ハァハァ、あ、熱っ……」 湯の中に倒れそうになったが、グイッと引っ張られて抱き寄せられた。 ぐったりと肩に寄りかかり、汗の匂いが混ざった湯気を吸い込んだ。 「ニャ~」 龍王丸が浴室の外にやって来たらしい。 「龍が……鳴いてる」 「ほっとけ、邪魔は……させねぇ」 唇が重なって息が詰まったが、荒っぽいやり方が興奮を煽る。 龍王丸はずっと鳴いていたが、テツは離してはくれなかった。
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