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11tangle
◇◇◇
テツと会う約束をした日、学校で休み時間に突然翔吾が話しかけてきた。
「友也」
「あっ、ああ……翔吾」
久しぶりだったので、びっくりして狼狽えた。
「髪切ったんだ」
「ああ、うん」
「似合ってるよ」
「ありがとう……」
「なんか……無視したみたいになって、ごめん」
「いや、いいよ……、気にしてないから」
「親父がね、また友也と話がしたい、顔が見たいって言ってた」
「えっ……そうなんだ、あははっ、嬉しいけどごめん、それは……」
「うん、分かってる、僕ね、あれから色々考えて……やっぱり真面目に若頭やろうかなーって、そう思って、今、親父について回ってる」
「そっか、翔吾スーツ似合ってたし、きっと上手くやれるよ」
「だといいけど……、でね、テツも大抵一緒に行くんだけど、テツはめっきり友也の事を言わなくなった、あんなに絡んでたのにね、僕に気を使ってるのかな?」
「そうなんだ……」
「今日も出かけてるけど、こないだ集まりで出かけた時はやけに帰りが遅かった、誰かいい相手でも出来たのかなー」
「へえー、いい相手か……」
「友也は彼女とか欲しくないの?」
「えっ、あ、まあ……今はいいかな」
「そっか、僕は今組の若い奴と付き合ってる」
「そうなんだ」
「だけど、やっぱつまんない、何を言ってもハイハイって……、ただ従ってるだけだし」
「そりゃあ……仕方がないような……、あっ、じゃあ、はっきり言ってみたら? 立場抜きで付き合おうって」
「無理無理、絶対向こうが意識しちゃうもん」
ヒヤヒヤしながら話をしたが、話題が翔吾自身の事に及んだあとは、翔吾はテツの事を口にする事はなかった。
翔吾と仲直りできて良かったが、例の広間の1件のほとぼりが冷めたと思ったのか、翔吾は『またうちに遊びに来てくれないかな?』と誘ってきた。
今はもう、あの時広間で見た光景なんかどうでもいいし、三上との事はバレる心配はないと思うが、翔吾とテツの2人を前にして、上手く誤魔化せる自信はどこにもない。
やんわりと断った。
その日の夕方、学校から帰宅したら姉貴が忙しそうにバタバタしてる。
彼氏から電話が入って急に会う事になったらしい。
──それを聞いて、テンションが上がった。
姉貴に『今夜は俺も出かけるから、姉ちゃんが電話したついでに、母さんに俺の事を伝えといて』と言ったら、姉貴はあっさりOKした。
更に『こないだより遅くなるかもしんないけど、よろしく言っといて』と言ったら、姉貴は『また……? もうしょうがないわねー』とぶつくさ言ったが、わかったと言って慌てて家を出て行った。
今日はついてる。
姉ちゃんが先に家を出たから、俺はこないだみたいに遅れる事なく、19時ピッタシに待ち合わせ場所に行く事が出来た。
細い脇道から抜け出たら、黒いアルファードが止まっている。
もうテツが窓を開けて声をかけなくても、そうするのが当然のように俺は助手席に座った。
「ん、髪切ったのか?」
テツは直ぐに車を出したが、俺を見て目ざとく髪を切った事に気づいた。
「うん」
「へっ、悪くねー、短いのもいいな、俺も散髪したぞ」
短くなった髪を褒めてくれたが、これ見よがしに髪を掻き上げながら言った。
「ん、ホントだ、短くなってる」
改めて見たら、確かに元のソフトモヒカンに戻ってる。
「どうだ?」
「なにが?」
「髪だよ、おめぇ、どう思う?」
「うん、いいと思う」
「そんだけか?」
けど、やけにしつこく聞いてくる。
「ん? なに? どういう意味……?」
「ったくよー、イケてるか? って聞いてるんだろ」
何かと思ったら、もっと褒めて貰いたいらしい。
「ああ、うん……、カッコイイ」
翔吾の事、三上の事、それに例の女の事……。
色んな事が頭の中でぐるぐる回り、その上でテツとの事を考えたら……気が重い。
ヘアスタイルをじっくりと眺める気分じゃなかったが、カッコイイのは嘘じゃない。
一応褒めておいた。
「なんだ、なんか元気ねーな、どうした、具合でもわりぃのか?」
俺はいつもと同じ顔をしているつもりだったが、やっぱり不安な気持ちって表に出てしまうのかな? テツは心配そうに聞いてくる。
取り敢えず……翔吾の事を伝えておこうと思った。
「いや……あの……、今日、久しぶりに翔吾が話しかけてきたんだ」
「若が? へえ、そうか、で、若はなにか言ったか?」
「いい相手ができたんじゃないかって」
「ん……? 誰にだ?」
「テツに……」
「ふーん、そうか……そんな事を」
「もしかしたら、気づかれてるんじゃないかな?」
「それらしい事を言ったのか?」
「いや……」
「だったら気にするな、あれから暫く経つ、気持ちが落ち着いて、それでおめぇに話しかけたんだろう」
翔吾の事はやっぱり気になってしまうが、心配したところで今更どうしようもない。
「うん、まあ……、そうかもな」
「友也、それよりな、タトゥーを入れてやる、来週の金曜にスタジオに連れて行く、お前……学校休め」
今ひとつすっきりしない気持ちで窓の外を眺めていると、テツは不意にタトゥーの事を言い出した。
「本気でやるつもりなんだ、というか、休めって言われても」
まさかこんなに早く入れるとは思わなかった。
「仮病でも使え」
テツは三上と比べたら、大分優しい方だと思う。
だけど時々、やっぱりヤクザなんだなって感じる。
タトゥーの事も、勝手に決めて無理にでもタトゥーを入れさせようとする。
抗っても無駄だと分かってる。
それに……嫌だと思う反面、既に諦めモードな自分がいる。
三上が余計な事を色々言ったせいで、テツを疑う気持ちがチラッと生じていたが、こうしてテツと会っていると、三上が言った事など全部嘘のように思えてくる。
それよりも三上に腹が立つ。
なのに、これからも会わなきゃならない。
だから、こうなったら……逆にテツを信じてるって事を三上に示す為に、タトゥーを入れてやる。
「分かった」
「な、友也、その代わりと言っちゃなんだが……、何かありゃ遠慮なく言え、おめぇを泣かす奴がいたらぶん殴ってやる、おい、どうだ、俺がついてりゃ心強ぇだろ? あははっ!」
テツは冗談か本気か分からない事を言って笑い飛ばしたが、三上の事があるだけに……俺は笑えなかった。
「あ、ああ、そうだな……」
「さてと、そんじゃぼちぼち目的地に向かうか」
「まさか、またラブホテルじゃねーよな?」
「なんだぁ嫌そうに言いやがって、おめぇ色々見て楽しんでたじゃねーか」
「そりゃ初めてだし、珍しいだろ?」
「ま、そりゃそうか、わりぃな、今日はラブホじゃなくて前に行ったアパートだ」
テツは煉瓦造りのあのアパートに行くと言った。
あのアパートは雰囲気が好きだ。
ラブホテルは面白いが、やっぱり生活感のある部屋の方がいい。
夜だから景色は見られないが、道路沿いは街灯で照らされている。
オレンジ色と青い色の街灯がある。
それをぼんやりと眺めているうちにうっかり眠っていた。
「おい、着いたぞ」
テツの声で目を覚ました。
「あ……うん、もう着いたんだ」
「おめぇ、前もここに来る途中で眠ってたな」
「ああ、そういえば……、なんか眠くなる」
車の僅かな振動と安心感。
テツの横に座っていると、やたら穏やかな気持ちになれる。
それが眠気の原因だったが、テツには内緒だ。
洒落た部屋に上がり込み、前に言われたようにソファーに座るテツの横に腰を下ろした。
「へっ、ちゃんと約束を守ったな、いい心掛けだ」
テツは直ぐに肩を抱いてきた。
前に来た時は肩を抱かれて変に意識してしまったが、今は妙にドキドキする。
「ほら、来な」
強引に抱き寄せられてテツの方へ倒れ込んだが、自然とテツの背中を抱き締めていた。
「やけに素直だな」
「なあテツ」
「ん?」
「俺の頭がおかしくなったとしたら……、全部あんたの責任だからな」
俺はどうかしてしまったんだろう。
テツの匂いを嗅いだら、異様に気分が昂ってきた。
黒い上着はいつもボタンを止めてない。
シャツも開襟シャツだから第2ボタンまで外されている。
テツは出会って間もない頃はちょくちょく金のネックレスをしていたが、気紛れにつけたりはずしたりするらしく、今夜はまた外していた。
だらしなく開かれた白い襟から逞しい胸板がのぞき見え、それを見たら堪らなくなった。
「おお、わかってら」
テツは文句を言う俺の背中を撫でてくる。
本気で言ったわけじゃない。
ただ、意地悪な事を言ってみたかっただけで、本当は肌に顔を近づけたくてうずうずしていた。
「ごめん、俺……本当にどうかしてる」
遂に我慢出来なくなって、胸元から見える浅黒い肌にキスをした。
「謝るこたぁねー、手ぇ出したのは俺だ、お前をそっち側に引きずり込んだんだからな、責任はきっちりとるつもりだ」
テツは片手を俺のTシャツの中に潜り込ませてきた。
肌を弄られたら、ゾクゾクするような昂りを感じる。
「ハァ、なんか……興奮する」
「催淫剤を飲ませた覚えはねーが、エロいのは歓迎だぜ」
「俺、今だけ……、自分じゃねー自分になる」
「おお、いいじゃねぇか、好きにやれよ」
「はあ、テツ……」
こんなに欲しくなるのは、きっと三上のせいだ。
あいつにやられた記憶を消したいって気持ちが、異様に気分を昂らせる。
テツの肩を抱いて食むように首筋にキスをしたら、テツは俺をソファーに押し倒した。
「俺が欲しいか?」
「……欲しい」
「そうか、もっと欲しがれ」
そのままキスされたけど、俺はやり返すようにテツの唇を吸った。
上着の中に両手を突っ込んで背中を弄ったら、薄い生地を通して体温が伝わってくる。
「なあ、堪らねー」
興奮がおさまらなかった。
「へへっ、ちょっと待て」
テツは嬉しそうにニヤつき、起き上がって上半身裸になると、俺のTシャツをガバッと捲りあげて胸に顔を埋めた。
媚薬とローターで開発されたせいか、それとも気持ちがテツに傾いてるせいなのか、小さな突起に舌が触れただけで体が反応する。
「あ、ああ……、なんか……くる」
「おお、乳首感じるようになったな、よしよし」
テツはしたり顔でニヤリと笑い、突起を舌先で弾くように転がして虐めていたが、片側づつ交互に弄られるうちに股間が起立してきた。
「ん、んんっ……」
この部屋に入った時、テツはスポットライトだけつけた。
白い壁はライトで黄色っぽく染まって見えるが、そこに黒い階段の影が写り込んでいる。
一体何人がこの部屋に招かれ、ここでこうしてテツに抱かれたんだろう。
影を見ながらそんな事が頭に浮かんできたが、何だか急に妬けてきた。
俺は……俺の知らない誰かに嫉妬していたが、三上はテツはモテると言っていたから、男女関係なく何人も連れ込んだに違いない。
俺もそのうちのひとりに過ぎないのか?
もしそうならガッカリだが、俺だってテツに対して恋愛感情を抱いてるつもりはない。
だったら、テツがどう思っていようが……気にする必要はない筈だ。
テツは色んな事を知っているし、表向きは強面なヤクザでも、個人的に付き合ったら兄弟みたいなそんな気分になる。
もし俺に兄貴がいたとしたら、こんな兄貴だったら楽しいだろうなって、そんな風に思えるから……だから会いたくなる。
「テツ……」
居た堪れない気持ちになって、テツをギュッと抱き締めた。
「はははっ……、やる気十分だな、よし友也、その前にあれを済ませよう」
テツは上機嫌で笑い、ヤル準備をするように促してきた。
起き上がって一緒に行こうと言ったが、もう手伝って貰わなくてもひとりで出来る。
ムカつくが……三上のせいだ。
三上にヤラれた事をきっかけに、俺はそっち系の事をググッて調べた。
ドライイキやトコロテンの事、シャワ浣のコツとかも。
腹は立つけど、テツとやる時に役立てば……と思ったからだ。
「いい、自分でやる」
「ひとりで大丈夫か?」
「ああ、うん、大丈夫、あれから練習したんだ」
練習まではしてなかったが、嘘をついてベッドで待っててくれと言ってベッドからおりたら、テツは俺の背中に向かって『必要な物は洗面台の棚にある』と言った。
返事を返して洗面台へ行き、棚を開けて必要な物を取り出した。
最初に浣腸からやっていったが、もう惨めさや屈辱感は感じなかった。
それから体の準備を済ませ、仕上げにシャワーを浴びた。
腰にタオルを巻いてベッドに戻ったら、テツは起き上がってニヤついた顔で俺を見た。
「その格好、まるでおっさんだな」
テツはまだ上半身裸になったままだったが、俺に向かって言いながら服を脱いでいく。
「フルチンよりマシだろ」
ベッドに上がったら、全裸になって俺の上にかぶさってきたが、テツも昂っているらしく息遣いが荒い。
「おい、ボディソープで洗ったな? 前にラブホで洗ってやったが、俺はな、ほんとはそのまんまの匂いが好きなんだ、だからよ、ボディソープはあんまり使うな」
抱き合って足を絡めると、腰に巻いたタオルが取れて起立したナニが擦れ合い、思わず吐息が漏れていた。
「そのまんまって……、汗臭いの嫌だろ、なあ、それより……早くやろう」
待ちきれず、項を引き寄せて自分からキスを求めたら、テツは俺の頭を押さえてストップをかけた。
「友也……、その前に……ちょっと待て」
「ん……?」
「何故急にそうなった、自分からやりたがるとかおかしいだろ」
何かと思ったら……俺が豹変した事を変に思ったらしい。
「さあ……、わからねー、テツの変態が伝染ったんじゃね?」
「おい、真面目に答えろ、俺とこういう事をし始めてまだそんなに経ってねぇ、お前はあんなに嫌がってたじゃねぇか、いくらなんでも変わりすぎだろ、何かあったのか?」
ふざけて誤魔化そうとしたが、勘が鋭いのか、何かを感じ取ったかのように追求してくる。
真顔で聞かれたら、本当の事を明かして助けを求めたくなったが……。
「何マジな顔して言ってるんだよ、テツのせいだって言っただろ? そんな事より……、なあ、早く……、もう我慢出来ねー」
すっとぼけてテツのせいにして、最後に耳元で囁いた。
「コイツ……、そんな事を言うのか……? しょうがねぇな、わかった、用意するから待ってろ」
テツは困ったような顔をしてぶつくさ言うと、起き上がってローションを塗り始め、俺はほっとする反面辛くなった。
「よーし、そんなに欲しけりゃくれてやる、いいか?」
どうやら前置きなしでやるらしく、ナニの先端がアナルに当たってきて、エロい気分が急上昇した。
「ああ、うん……」
「それじゃ、遠慮なくいくぜ」
テツは膝をついて腰をぐいっと突き出し、竿を一気に突き入れた。
「いっ……あっ!」
先端が前立腺を強く擦り上げ、変な声が漏れて股間のナニが脈打った。
「ん? おめぇ……まさかいったのか……? おい嘘だろ、いきなりか?」
テツは俺がトコロテンした事に驚いていたが、俺はそれどころじゃなかった。
弾け出す快感に伴って腹の中が疼きだし、体の内と外、両方からくる快感に苦悶した。
「ハァハァ、っ……あっ、はぁ……う……」
この疼きをどうにかして欲しい。
「は、腹ん中が……、た、頼む……動いてくれ」
「おう、そうか……、止まったままじゃつれぇよな、へっ、いくぞー」
テツは俺の上にかぶさって動き出し、先端が疼く箇所を押し上げるように摩擦する。
「んうっ、た、たまらねぇ……、ああ」
頭が馬鹿になってヤル事しか考えられなくなった。
「いい、さ、最高、ハァ、ああ、そ、そこ、そこを……もっと強く」
「ここか」
テツは腰を器用に動かして、感じる箇所をグリグリやってくる。
「んう……! ああっ、ふあっ、ハァ、あっ、体がビクビク……する、んくっ、ハァ、あ、死ぬ、気持ち良すぎて……死にそう」
腹の中がぎゅっと締め付けられるように痺れ、湧き出す快感が身体中に広がっていく。
「こら、そんなに締めたら……出ちまうぞ」
「そんな事……言っても、き……気持ちいい! 腹の中がぁ……ああ、ぁ……、テツー、気持ちいい、ああ、もっと突いてくれ」
気持ち良すぎて、狂ったように口走っていた。
「おめぇ、エロ過ぎだろ、くっ……、もう……もたねぇ」
テツは俺を抱き締めて体を大きく揺らし始めた。
「はう、あ、あぅっ! あっ、あっ、あっ……!」
「出すぞ!」
ナニの切っ先が奥をグリっと抉りあげ、熱い体液を撒き散らした。
「あ"っ……、ああすげー……あ……あ……あ」
体内の脈動に合わせて俺のナニがピクピク痙攣し、頭がクラクラして快楽の海の中で溺れ死にそうだ。
「へへっ、ったく、おめぇってやつぁ……たまらねぇな、オラ、こっちぃ向け」
むせ返るような熱気の中でキスをされ、俺は貪るように吸い返して舌を絡めた。
とろっとろに蕩けた気分から抜け出した時には、テツの腕に抱かれていた。
「お前……抱く度によくなるな、ふっ……、やっぱり俺の仕込みが良かった、それに尽きる」
テツの得意げな呟きを聞きながら、俺はふと我に返った。
体の熱が冷めてすっきりした途端、急に冷めた気持ちになっていた。
確かに俺はテツを求めた。
けど、今俺は……テツに腕枕をして貰い、片手を胸板に添えている。
なんだこれは……まるで女みたいじゃないか。
「あのっ……、ごめん」
ひとこと詫びてテツから離れた。
「おい、なに離れてんだよ」
「俺、なんか妙に興奮してつい……、だからこんな事に」
「バカ、さんざ乱れといて、なに今更照れてんだよ、来い」
テツは腕を掴んできて、無理矢理腕枕をされてしまった。
「わっ……!」
「な、まだ拘ってるのか? いい加減そういうのは捨てろ、俺は男も女も気に入ったら同じように抱く、おめぇが俺に惚れてるなら、素直に甘えりゃいいんだよ」
そのまんま説教されたが、この腕枕はさっきとは違い……ほぼヘッドロック状態だ。
首を絞められて苦しい。
「う"っ、腕……! お、俺は……テツを好きかもしんねーけど、そういうのじゃ……」
「おお、わりぃ、つい力が入っちまった、で、なんだぁ? 惚れてねーとでも言うのか? よく言うぜ、俺を欲しいっつったよな? キスしたらバリバリ舌ぁ絡めてきやがって、『早くー』って……ねだったのは誰だ? ああ"? 言ってみろ」
テツは惚れた腫れたの部分に拘ってるらしく、俺が惚れたって言わないのが気に食わないようだ。
「あの……、あれはー、きっと体が勝手にそう言わせたんだ、だから言っただろ? 今の俺は本当の俺じゃねーって……」
けれど、俺は最初にそう言った。
「コイツ! 都合よく逃げようったってそうはいかねーぞ、久々に技ぁかけてやる!」
テツは納得がいかないらしい。
技をかけると言って絡みついてくる。
「え、いや……、裸で技はちょっと」
真っ裸で格闘技の技をかけられるとか、小っ恥ずかしいにも程がある。
「うるせー!」
なのに、テツは問答無用で背後から絞め技をしてきた。
「あ“……当たる! アレが当たってるから! ちょっ、ふにゃふにゃしてきめーし」
萎えたナニが当たってなんとも言えぬ感触だ。
「きめーだと? へへー、これでどうだ」
だが、卍固めのような技をかけてくる。
「ちょっとなにやって……、うわ、マジで変態だろ、あっ、あのさー……なんか変化が起こってるような」
横っ腹の辺りにアレが当たってるが、明らかに硬度を増している。
「あーあ、また復活しちまった、よし、バックだ、四つん這いになれ」
「え、四つん這い?」
「そうだ、さっさとやれ」
「やだな~やりたくねぇ」
こないだ三上にやらされたし、やりたくねぇ。
「なんでだよ」
「なんか動物みてぇだし」
適当な事を言ってやめさせようと思った。
「なに言ってる、もうな、お前の体はぜーんぶ見ちまったんだ、今更だろ」
「そうだけど、普通にやればいいじゃん」
「んにゃろ~!」
テツはイラッときたのか、俺をうつ伏せにして背中にのしかかってきた。
結局、寝バックで2回目をやる事になった。
「う……!ううんっ!ああ、あ、あっ、ああ!」
俺は乗り気じゃなかったが、半ば無理矢理やられてしまい、やってるうちにまた腹の中が疼きだした。
体は俺の意思を無視して昂り、またしてもドライイキしていた。
淫靡な痺れに喘いでいると、テツは座ってやると言い出した。
この体勢も調査済みだが、やるのは初めてだ。
まだまだ初心者マークの俺は、テツに導かれて下からテツを受け入れた。
「おい、腰を動かしてみろ」
テツは両腕で俺の腰を抱いて言ってくる。
「ん、くっ……、ハァ、あっ、む、無理…だ、動けねー」
ドライイキした状態だし、力が入らない。
「そうか、ならしがみついてろ」
テツは俺の体をしっかりと抱いて上下に揺さぶった。
「ああ、も、もう、か、完全に……イカレた」
また頭が馬鹿になり、意味不明な事を口走って体を揺らしていたが、気づいたら体内のナニが脈打っている。
「友也……」
名前を呼ばれ、ふらつきながら頭を起こした。
「な、なに……?」
「おめぇみてぇな奴は……初めてだ」
テツは息を乱しながら言うと、俺の項を掴んで唇を塞いだ。
俺は力の抜けた手をテツの背中に回し、熱気をはらんだ熱いディープキスを交わした。
2回目を終えた時、俺はまた腕枕をして貰ったが、激しく交わったせいで体が酷くダルい。
腕枕だろうがなんだろうが……もうどうでも良くなっていた。
「おお、日付けが変わっちまったな」
テツは壁掛け時計に目をやって呟き、俺はその時になって初めて時間が気になってきたが、姉貴には伝えてるし、何を言われようが構わない。
それよりもテツの方が心配だ。
「俺は大丈夫だけど、テツは……マズいんじゃね?」
「ああ、まあ…、大丈夫だ、若の扱いにゃ慣れてる」
テツは特に焦るわけでもなく、落ち着いた様子で俺を抱いていたが、俺はやっぱり翔吾の事が気になった。
「そっか、けど……キリがないし、そろそろ帰ろうかな」
「そうか、ま、そうだな……、それじゃ、シャワー浴びるか」
本音を言えば……まだテツと一緒に居たかったが、翔吾の事を抜きにしたとしても、俺はただの高校生で……テツは霧島組の若頭補佐だ。
互いに立場は違うけど、互いに好き放題自由にやれるわけじゃない。
楽しい時間は終わり、シャワーを浴びた後でテツと共にアパートを出た。
帰りの車中で姉貴から電話があった。
姉貴は本当に友達の家にいるのか、頭ごなしに疑ってきたが、俺が電車で出かけたと思っているからだ。
もう終電の時刻をとっくに過ぎている。
そこで俺は考えた。
姉貴には翔吾の事を細かく話してない。
だから、思いつきで翔吾に兄弟がいる事にした。
その兄弟に車で送って貰うんだ……と嘘をつき、姉貴がごちゃごちゃ言う前に一方的に電話を切った。
「姉ちゃんか?」
電話を切って即マナーモードにしたら、テツが聞いてきた。
「ああ、うん……」
「マジで親代わりだな」
「まあ……」
「彼氏とはそろそろ別れたか?」
「なんで別れる事が前提なんだよ」
「へへっ、お前の姉ちゃん、タイプだ」
「ちょっ……、まだ狙ってるのか?」
「いいや、いい女にゃ目がないだけだ」
もう諦めたかと思っていたのに……まだ姉貴の事を狙ってる。
タトゥーを入れる事を承諾したのに頭にきた。
「そんな事言うなら、タトゥーやめるからな!」
「はははっ! ああ、手ぇだしたりしねーから、安心しな」
タトゥーをやめると言って怒鳴ったら、テツは笑い飛ばして受け流したが、一体何を考えてるのか、俺には今ひとつテツの頭の中がわからない。
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