13tangle

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13tangle

◇◇◇ あれから色んな事が頭の中をぐるぐる回っていたが、結局、気持ちの整理がつかないままダラダラと金曜日を迎えた。 昨夜遅くにテツから久々に電話があり、約束通りタトゥーを入れると言ってきた。 なので、俺はこの日、テツに言われたように仮病を使って学校を休んだ。 喉が痛いし、腹を下してると言ったら、母さんは風邪じゃないかな? と言ってすんなり信じてくれたが、姉ちゃんは疑っていた。 とは言っても、姉貴も仕事があるから俺にかまってる余裕はない。 俺は2人が居なくなった後で起き上がり、顔を洗いに下へ降りた。 顔を洗ったらキッチンへ行き、冷蔵庫を漁って食い物を物色した。 適当な物を出してレンジでチンして食ってると、テーブルに置いたスマホから着信音が鳴った。 テツからだ。 夕べ電話してきて、早めに迎えに行くと言っていたので、慌てて口に頬張ったパンを飲み込んで電話に出たら、今から迎えに行くと言う。 壁掛け時計を見るとまだ9時だ。 いくらなんでも早すぎやしないか? 今、朝飯を食ってる最中だし、早すぎだと文句を言ったら、テツは急に不機嫌になり、ぶつくさ言ってやたら絡んでくる。 イラッときて「じゃあ、タトゥーはやめる」とつい口走っていた。 実のところ俺は……朱莉さんのタトゥーを見た事で、タトゥーを入れる事に抵抗を感じていた。 『おい、今更なにを言い出すんだ』 「だって、タトゥーなんか彫ったらずっと残るし、消せないじゃん」 『そんな事は端から分かってる筈だ、びびってんのか?』 「ああ、そうだ……」 『そんな勝手が通用すると思うな、いっぺん約束したこたぁ守って貰う、おい、今から行くからな、待ってろ』 「えっ、行くって……まさか家に来るつもりじゃねーよな?」 『家には誰もいねぇ筈だ、俺にはわかるんだよ、家の真ん前に車をつけてやる、今日はレクサスだ』 「ちょっと待って……! もし誰かに見られたらマズいし」 『うるせー! 逃げたら承知しねぇぞ、おとなしく待ってろ!』 テツは恫喝して電話を切ってしまった。 ここ最近は怒鳴られる事がなくなっていたが、久しぶりに怒鳴られた。 そんなに怒らなくても……。 逆に腹が立ってきたが、ぼさっとしてたらマズい。 人気のない閑散とした住宅地だが、一応ご近所さんの目があるし、厳つい車を家の真ん前につけられたら困る。 しかし、止めようがない……。 だとしたら、素早く車に乗ってさっさと家から離れる。 そうするしかないだろう。 ゆっくりと出かける用意をするつもりだったが、テツのせいで急に忙しくなった。 急いで食事を済ませ、2階に駆け上がってボサボサの髪を直し、クローゼットから適当な服を引っ張り出して着た。 「はあ、はあ……」 休まずに動き続けたせいで……息があがった。 電話を切って20分しか経ってないし、まだ来ないだろうと思ってベッドに寝転がったら、微かに車が走る音が聞こえてきた。 平日のこの時間帯は車も疎らにしか通らないが、翔吾の屋敷から出てくるとなれば、20分でここに来るのは不可能だ。 気にせずに寝転んでいると、家の前に車が止まった気配がした。 「え、まさか……」 起き上がって窓から下を眺めたら……黒いレクサスが門扉の真ん前に止まっている。 こんなに早く来たのは、屋敷から来たんじゃなく、何か用があって出かけてたのかもしれない。 「マジかよ、もう来たのか? ほんとに真ん前に止めてるし……」 窓から離れようとした時、車からテツが降りて来るのが見えた。 「ちょっ……なにして、なんで降りるわけ? ああもう!」 冷や汗をかきながらベッドから飛び降りると、部屋から飛び出して真っ直ぐに階段を降りていったが、階段を降りる途中でピンポンが鳴った。 車だけでも気を使っているというのに、黒服を着た怪しげな男が玄関先に立ってピンポンを押すのは……とんでもなくマズい。 玄関にダッシュして扉を開けた。 「テツ、なにしてんだ、家に来たらマズいだろ」 せめて車に戻って欲しかったが、テツは玄関に入ってきて家の中に入ろうとする。 「うるせー、あがらせて貰うぜ」 「え、ちょっと待った、俺、すぐに出るから車に乗ってて」 姉貴の事も含め、俺はこれ以上テツに個人的な事を知られたくなかった。 「別にいいじゃねーか、姉ちゃんの部屋ぁ見せろ」 テツの体を押して家にあがるのを阻止したが、訳の分からない事を言って執拗に上がろうとする。 「なに言ってるんだよ、駄目に決まってるだろ!」 「俺がうろつくと困るか」 「え、いや、俺は……その」 「なんだ、言ってみろ」 「俺は翔吾やあんたの事をそういう目……、つまりヤクザって意味だけど、そんな風に見てるつもりはない、けど……家族は別だ、俺の事で家族に迷惑かけたくねー」 「ふっ、そんな事でムキになってるのか」 「悪い……、兎に角車で待っててくれ、直ぐに行くから」 「分かったよ、それじゃおとなしく待っててやる」 一体何をしたかったのかわからないが、思ってる事を正直に話したら、テツは納得して車に戻っていった。 用意はほぼ終わっていたので、財布とか必要な物をショルダーバッグに詰めて家を出た。 即車に乗ったら、テツは直ぐにアクセルを踏んで家の前から離れたが、やっぱりタトゥーは躊躇してしまう。 「テツ、さっきも電話で言ったけど、やっぱタトゥーは無理だから」 「あのな、もうスタジオに向かってるんだぜ、俺は惚れた相手にゃ必ず印を入れる事にしてる、名前が嫌なら記号にしてやるわ、おお、ハートマークなんかいいぞ、お前の尻にゃピッタリだ、あははっ!」 ダメ元で訴えたら、ふざけるように言って笑い飛ばしたが、必ず印を入れると聞いて……三上が話してた事が頭に浮かんできた。 あの時俺は『コレクションみたいなものなのか?』って……そう思った。 「テツ、俺、あんたのコレクションにはなりたくねーから」 「ん、コレクションだと? おめぇなに言ってるんだ」 それは心の隅に引っかかってた事だ。 一旦口にしたら、聞かずにはいられなくなった。 「じゃあ聞くけど、今まで何人にタトゥーを入れさせたんだ?」 「さあな、忘れた」 とぼけて誤魔化すテツを見たら、無性に腹が立ってきた。 「ほら、そうやって忘れてんじゃん、惚れたとか言っても別れたら意味ねーじゃん、ものにして印をつけて……、結局はあんたが満足してるだけだろ、だからコレクションだって言ってるんだ」 自然と朱莉さんの事が頭に浮かんできて、ついテツを責めていた。 「生意気な口ききやがって、おめぇのようなガキになにがわかる、なにもわかりゃしねぇ!」 テツはまた俺をガキ扱いしたが、恋愛経験はなくてもちゃんと分かってる。 「ああ、俺はガキだ、だけど……いい事と悪い事の区別くらいはつく」 「なにがいいてぇ、おい、おめぇ……何か知ってるのか?」 遠回しに言ったつもりだが、テツは目ざとく疑ってきた。 「いいや、さっき言ったように、あんたを満足させる為にタトゥーを彫るのはごめんだって、そう言ってるんだ」 言い過ぎたと思って焦ったが、素知らぬ顔で言い返した。 「ふーん……、そうか、どうしても嫌か」 「ああ、嫌だ」 「そうだな……、分かった、じゃタトゥーは今回は先延ばしにしてやる」 テツは暫く考えた後で、ひとまず諦めてくれたようだ。 「先延ばしか、うん、まぁ……」 とか言っても先延ばしだし、いずれまた言い出すだろうが、ここでしつこくゴネて本気で怒らせるのはマズい。 それで納得する事にした。 「その代わり美容外科だ、永久脱毛して本物のパイパンにしてやる」 だが、安心したのも束の間……また妙な事を言い出した。 「美容外科? 永久脱毛?」 「おお、レーザーや針で毛根を破壊して毛を生えなくするんだ」 タトゥーよりはマシだが、微妙だ。 「あのさ……、そこまでパイパンに拘る? じゃあ自分がやればいいじゃん」 そんなに好きなら、自分がつるっつるにしたらいい。 「馬鹿、俺はこれでいいんだよ」 「なんで俺だけ?」 「俺がそうしてーからだ」 「どうしても、何か残したいんだな……」 「おう、あたりめーだ、それにタトゥーは別としても、永久脱毛は普通にやる奴増えてるんだぜ」 何故そこまでして痕跡を残そうとするのか、俺には理解不能だったが、永久脱毛をやる人が増えてると聞いてちょっと興味をひかれた。 「それほんと?」 「ああ、嘘じゃねー、けどよー、おめぇが自分でやるには無理がある」 「なんで?」 「金がかかる、下の毛だけで2、30万はみといた方がいい」 「ええ、そんなに?」 「おうよ、それを俺が出してやるっつってんだ、有り難く思え」 「う、うーん……、そうなのかな……」 自分でやったら結構な金がかかると聞いて驚いた。 それをテツに出して貰えるなら……お得なように思えてくるが……。 テツは今から行くと言って、早速タトゥーのスタジオに電話してキャンセルすると、すぐに美容外科に電話をして今からやってくれと頼んだ。 電話の途中で『針とレーザーどっちがいい』と聞かれたが、針は痛そうだからレーザーにした。 電話を切った後、テツが色々な事を説明してくれた。 まず2週間おきに通わなきゃいけないという事。 それから、俺は毛深い方じゃないから5回位やれば終わるだろうと言ったが、全部終わるまでに2ヶ月半はかかる。 その度にズル休みは出来ないと言ったら、テツはその医者とは懇意にしてるから夜間もやってくれると言い、夜に会った時に俺をクリニックに連れて行くと言った。 1回に要する時間は4、50分程度という事だ。 それからしばらく走って、町外れにあるクリニックに到着したが、なんとなく狐につままれたような気分だった。 なんか、上手く丸め込まれたような気がする。 クリニックの中に入ると、白衣を着た医師が笑顔で出迎えた。 テツと親しげに話をしているところを見ると、テツはお得意様といった感じだが、これまでに何人ここに連れて来たのか……。 複雑な気持ちになった。 とにかく、面倒な手続き無しで早速脱毛する事になったが、医者は男だから局部を晒すのは抵抗ない。 レーザーを当ててる時はちょっとチクッとしたが、大した痛みじゃなかった。 医者は『君は毛量が少ないから、3、4回で済むだろう』と言っていた。 台の上に寝ているうちにあっという間に終わり、40分もかからずに終了してクリニックを出た。 テツはハンドルを握りながら、今日はゆっくり出来ると言う。 タトゥーを断った時は腹を立てていたが、俺が永久脱毛をする事を承諾したので随分機嫌が良さそうだ。 「で、何処に行くつもり? 俺は夕方には帰りたいんだけど?」 今日は学校をズル休みしている。 そんなんで出歩いて深夜に帰宅したら、さすがに母さんも不審に思うだろう。 「そうだな、何処へ行くか……、な、デートするか?」 「なに気色悪い事言ってるんだよ……」 「はははっ、別に構わねーだろ」 「翔吾は……大丈夫なのか?」 「ああ、普通に学校に行ったぞ」 「そっか……、けど、屋敷に居なくていいわけ?」 「代わりに寺島を留守番させてる」 「そうなんだ、こんな事言ったら怒られるかもしんねーけど、テツだからいいかな……」 「ん、なんだ?」 「あの人、寺島さんって、ちょっと頼りないよな」 「ああ、まあな、ちょいと抜けてるが、ま、あれはあれでいい、大事なのは心の1番下んところだ」 「下って?」 「根っこだ、そこがぐらついてる奴は信用できねー、いざって時に腹を据えられるかどうかだ、普段上手い事言って立ち回っていても、いざって時にゃコロッと変わる奴もいるからな」 「そっかー、なるほど……」 「お前はしっかりしてるな」 「え? なにが?」 「年のわりにゃしっかりしてる」 「そうかな、俺は……親の期待に応える自信はねーし、就職だって……なんか面倒で、フリーターでもしようかなって、そう思ってる、全然ダメだよ」 「友也、うちに来い、霧島組だ、ここんところ人材不足だからなー、待遇いいぞ、おめぇなら……親父が嫌というほど可愛がってくれるだろう」 「な、何言ってるんだよ……、待遇とか可愛がるとか……いらねーから、大体、ヤクザなんかになったら……母さん号泣するよ」 「あははっ、そうか」 気づいたら、テツとたわいもない会話を交わしていた。 初夏の日差しは熱く感じたが、滅多にない位爽やかな気分だった。 このままデートするのも悪くないな……って、そう思っていると、テツは何気にラブホテルへ向かって行く。 「あの……結局それ?」 「嫌か?」 問いかけられて一瞬迷ったが、まだ1回しか行ってないし……興味はある。 「い、いいや……別に」 決してやりたいわけじゃない、探究心が勝っているだけだと、自分で自分に言い訳した。 1回経験したから、ガレージに車をとめて部屋に入るまでは、周りをキョロキョロ見回す事はなかったが、靴を脱いで部屋に入った途端、部屋の中を見回していた。 前に行った部屋とは雰囲気が違う。 全体的に黒で統一され、スポットライトが照らす薄暗い部屋の中に、ベッドがどーんと置いてある。 それだけならさほど変わりはないが、部屋がかなり広く、ベッドと反対側のスペースは敷物の無い床になっていて、そこに奇妙な台が2つ置いてあった。 早速傍に行って観察した。 ひとつは変わった形状をした腰位の高さがある台で、もうひとつはブランコのような形をしている。 そう言えば、三上が地下室にブランコがあると言っていたが、これの事か……? もうひとつの方は椅子のような形をしているが、ビーチチェアみたいな感じだ。 「へへー、なんだかわかるか?」 台を手で弄りながら顔を近づけてじっくり見ていると、テツが後ろからやって来た。 「わかんねーけど、エロい事をする為の台?」 「そうだ」 「わっ……」 背後からいきなり抱きしめられて驚いたが、そのまま腕を掴まれてぐいっとテツの方に向かされた。 「な、この台使って楽しもうぜ」 「あ、あの、でも……浣腸ないし、シャワ浣だけじゃ無理だよ」 ラブホに浣腸は売ってないし、準備が出来なきゃ無理だと思った。 「ふっ、これを見ろ」 「えっ……」 すると、テツは内ポケットに手を突っ込んで颯爽とイチジク浣腸を取り出し、俺の目の前にかざした。 「持ってきたんだ……」 「おう、ぬかりはねー」 しかもカッコつけたポーズで片手に浣腸を握り、得意げな顔で言った。 「ちょっ、待って……、ぷっ、くっ、あははっ!」 ガチで格好いいだけに……ギャップが凄い。 「何が可笑しい」 「いや、だって、内ポケットから浣腸って……、あははっ!」 「別にいいだろ」 思わず吹き出していたが、テツが使うのはいつもイチジク浣腸だ。 前から気になってはいたが、この際聞いてみようと思った。 「い、いいけど、テツ……、それ、まさか自分で買いに行くんじゃ……、ぷっ、駄目だ、想像したら笑える」 テツが薬局に浣腸を買いに行く姿を想像したら、笑いが止まらなかった。 「馬鹿、下っ端が買いに行くに決まってるだろ、なんてこたぁねー、屋敷にゃ普通に置いてあるからな、ほら、おめぇは盛ってんのを見たから知ってるだろ」 しかし、屋敷で見たあの光景……。 厳つい顔をしたガチムチな2人が交尾してる姿を思い出し……そのお陰で笑いがおさまった。 それからすぐにヤル準備を始めた。 テツはシャワーを浴びると言って浴室に行き、俺は浣腸を終えた後で、シャワ浣をウォシュレットでやってみる事にした。 実はもっと簡単な方法がないか、シャワ浣についての詳細を調査済みだった。 ウォシュレットでやるのは初めてだったが、悲しい事に湯の入れ加減とか、そういうのを体が覚えていた。 初めてなのに、ウォシュレットでシャワ浣を上手くやり遂げる事ができた。 やる事を済ませて浴室に行ったら、テツは浴槽に湯を張って体を伸ばし、のんびりと湯に浸かっている。 「シャワ浣やるのか?」 「トイレで済ませた」 「ん、ウォシュレットでか?」 シャワ浣の事を聞かれ、ちょっとマズいような気がしたが、ま、いっか……と思って頷いた。 「あ、うん……」 「お前、やけに慣れるのがはえーな、まさか浮気してるんじゃねぇだろうな?」 やっぱマズかったようだ。 テツは体を起こして聞いてきた。 俺は好きで三上と会ってるわけじゃないし、シャワ浣について三上に教わったわけでもないが、回数を重ねれば嫌でも慣れてくる。 シャワーヘッドを握り、湯を出してシャワーを浴びながら、なんでもないふりをして答えた。 「そんなわけないだろ、あっ、それより、ボディソープつけたら嫌なんだよな?」 「おお……、な、友也、三上の野郎がおめぇに目をつけてたが、まさか奴がちょっかい出してるんじゃねーだろうな」 ボディソープの事で話題をそらそうとしたが、テツはギクッとするような事を言う。 「なわけねーし……」 「だといいが、人のもんに手ぇだしやがったらただじゃおかねぇ、あいつにゃ何かとムカついてるからな、やきを入れてやる」 もし三上との事がバレたら、ヤバい事になりそうだ。 俺は手早く体を洗い終え、シャワーヘッドをフックに戻し、すぐに湯に浸かってテツに抱きついた。 「怖い事言うなよ、俺は……あんたしか」 甘えるようにテツの肩に顔を預け、何とかテツの気をひこうとしたら、テツは俺の背中を抱いて乗ってきた。 「おお、いいぞ、続けろ」 「あんたの……」 「なんだ、早く言え」 「ナニが好きだ」 「あのな、お前……、ったく、しょーがねー奴だな、分かったよ、ああそれで構わねー、俺のナニに惚れたか?」 「ああ……惚れた」 何とか誤魔化す事が出来て良かったが、本当はナニだけじゃ済まなくなっている。 有り得ない事だが、どうしようもなくテツに惹かれていく自分を止める事が出来ない。 もう認めざるを得なくなってきたが、朱莉さんの姿を思い出す度に歯止めがかかる。 だけどこんな事……同性に惹かれるのは初めてで……やっぱりよく分からない。 分かるのは、今はテツと抱き合っていたいという事だ。 項を掴まれてキスされたら、意識が現実から離れていった。 湯船の中でディープキスを交わしながら体を弄り合う。 背中を撫で回して腰から尻へ手を滑らせると、テツの手が俺の尻臀をやんわりと揉んだ。 「逆上せちまうな……」 「うん……そうだな」 キスの合間に会話を交わし、手を前に回してテツの股間を弄ったら、海藻のように揺らぐ毛が手の甲を擽ったが、すぐに指先がナニを捕らえた。 ギュッと握って指の腹で先端を撫でると、竿がビクンと跳ねる。 「そんなに俺のが好きか……」 テツはキスを中断して、息を乱しながら聞いてきた。 「もう……これは貰った、あんたが俺を所有物にするなら、俺はここを貰う」 唇がテツの唇に触れる寸前まで顔を近づけて宣言した。 「へへー、俺は浮気するぜ」 テツはニヤついた顔で意地悪な事を言う。 「酷いな、俺は浮気しちゃ駄目なんだろ?」 「当たり前だ」 「テツだけ……狡い」 「おお、俺はズリぃし、おめぇにひでぇ真似をした、けど、それでもお前は俺のものになった、俺のいう事を聞いておとなしく抱かれてりゃ可愛がってやる」 自分勝手で強引……まるで独裁者だ。 「すげーな、そこまで言う?」 「今から証明してやる」 「証明って……」 自信たっぷりに言われて苦笑いしたが、再び唇を塞がれて力が抜けていった。 「ん……、ふっ……」 貪るように吸われると……胸の鼓動が高鳴ってくる。 堪らず吸い返したら、焦らすように唇を離して啄むように吸ってくる。 肩を抱いて追いかけるように吸えば、また貪るように吸ってきた。 俺はテツに翻弄されていた。 隙をついて舌が入り込み、口蓋をなぞりあげて口内を蹂躙する。 むせ返るような熱気の中で、俺は行為にのめり込んでいった。 「おい、部屋に……戻るぞ」 もっと続けたかったが、耳元で囁かれたら頷くしかない。 「あ、ああ……」 部屋に戻ったら、テツは奇妙な台に俺を拘束した。 ブランコの形をした台ではなく、もうひとつの方だ。 テツはこの台を分娩台だと言ったが、俺は似てるけど違うと思った。 開脚した状態で革ベルトで両足を固定され、腕も肘掛けに乗せられてベルトでがっちりと固定された。 ローションは部屋の中に自販機が置いてあった。 俺は自販機を見に行きたかったが、拘束された後だったので動けない。 テツに聞いたら、アダルトグッズの自販機だと言った。 めちゃくちゃ見たい。 なのに、テツは早速アナルにローションを塗り込めてきた。 拘束されて恥ずかしい格好をさせられているのに、ナニはイキイキと起立している。 「もうこんなにしやがって、おめぇやっぱりドMだな」 テツは指先で後孔を弄りながら言い、竿がビクンと跳ねて我慢汁を垂らした。 「あんたが……そうしたんだろ、俺を変態にした」 「いいや違う、俺はちょいと手助けしただけだ、Mなのもここが感じるのも、生まれつきだ」 テツは話しながらナニの根元に何かを巻き始めた。 「何それ?」 「ふっ、ドMのお前にゃたまらねぇ物だ」 皮でできた小さなベルトのような物に見えたが、テツはベルトをギュッと締めあげる。 「んんぅ!」 反射的に体が強ばったが、テツはベルトを巻いたまま、俺の体中に指を入れてきた。 「へへー、いくぞー」 太い指にはたっぷりとローションが塗られている。 そこから先は……苦悶と苦難の道が待ち受けていた。 「う、あ……!」 「前立腺は……ここだな」 「んっ! ううんっ!」 「これをこうやって……」 「うあ……ちょっと、待っ」 「へへー、たまらねぇだろ」 「あっ……、あ……くっ!」 「おい、どうだ、感じるか」 「う、うわっ! い、イク…! う、ううっ!」 トコロテンを経験して以来、俺は早漏気味になっている。 「うぅっ!」 前立腺から生じる刺激でイキ果てていた。 「ハァ、ハァ、あっ、あっ……」 けど、何かおかしい。 「なんも……出ねぇ、んっ、あ、あ、ちょっと……これ……」 飛び散る筈の体液が飛び散らず……。 「んっ! ハァハァ! くあっ、あ……」 何も出ないのに、射精感がおさまる気配がない。 「ふっふっふっ、根元に巻いたベルトのせいでイケなくなる、快楽地獄だ、たっぷりと味わえ」 テツは恐ろしい事を言った。 「ま、マジで? うぁ……、ハァハァ、あ、あ、ああ!」 下腹に締め付けられるような快感が走り、イキたいのにイケない状態で強い快感が継続してわき起こる。 「ほーら、どうだ、へへっ」 なのに、テツは容赦なく指の腹で弱点を攻めてくる。 「ハァハァ、ああ、そこ駄目……だからっ、あ、くっ!」 堪らなくなって藻掻いたら、手足にベルトが食い込んだ。 勘弁してくれと繰り返し頼んだが、テツはやめようとはせず、そうするうちにナニが痛くなってきた。 あまりの辛さに涙目になってテツにやめるように頼んだ。 「ふ、はあ、あ、もう、無理、マジで、無理……頼む……」 必死の形相で頼んだら、テツはようやく指を抜いてくれた。 「まあ、許してやるか」 地獄から解放されて体が楽になり、安心して体の力が抜けていた。 「はっ、はあ、ああ…」 だが、ふと見ればテツはナニを握って俺の中に入れようとしている。 「ちょっ、待って! 今は……、少し休ませて」 「あめぇな」 やめるように言ったが、反り返った竿が体内を抉りあげ、一瞬目の前が真っ白になった。 「う……!やめっ……、やめて! 死ぬ、ほんとに死ぬー!」 「あーあ、こりゃナニが痛そうだ」 「あっ……! ハァハァ、ああ、ベルト……、そ、それ……とってー! ああもう、うぅっ、涙出てきたー」 テツにはちょくちょく泣きたくなる程責められるが、今回はマジで涙が溢れ出してきた。 「友也、おめぇ泣くなよ、な、ほら」 テツは上に被さってきて、優しげな言葉とは裏腹に頭を押さえつけて唇を塞いだ。 「ふっう、んんんっ……! う"ぐっ……!」 息が詰まって意識が飛びそうになったが、気絶する寸前でテツは体を起こした。 「おい、気ぃ失うんじゃねーぞ」 朦朧としていると、ほっぺたをぺちぺち叩かれた。 「はあぁ、顔……いてぇ」 下に目を向けたら、テツがナニに巻いたベルトを外していた。 ベルトが外された瞬間……堰き止められた体液が勢いよく飛び出した。 「ぅうう!」 それは有り得ないくらい飛んで、顔に飛び散ってきた。 「お前、顔射好きだな、2度目だぞ」 テツは俺を見てニヤニヤしていたが、快感に痺れた体がビクビク痙攣して、もうどうでもいい気分だった。 「か、体が、俺……、駄目だ、き、気持ちいい」 仄暗い天井を惚けた顔で見つめていた。 「顔が汚れちまったな」 テツは顔についた体液を手で拭ってくれる。 たった今、嫌というほど虐められたのに……優しくされたら堪らなくなる。 「台は……もういいだろ?」 「ああ、よし、ベッドだ」 テツは拘束を外し、俺を台からおろしてベッドに連れて行ってくれた。 ベッドに上がったら正常位ですぐに体を重ね、俺はドライイキしてしまったが、テツも昂っていたのか、さほど経たないうちに深く突いて止まり、息を荒げていき果てていた。 「はあ、これがたまらねぇんだよな」 何もかも、全てを忘れられる瞬間だ。 俺はテツとひとつになって、与えられる快楽を貪った。 体が落ち着きを取り戻したら、テツは俺に腕枕をしてきた。 寄り添ってたわいもない会話をポツリポツリと交わし、2人だけの穏やかな時間を満喫した。 暫く経ってシャワーを浴び、ラブホを出た。 車に乗り込むと、テツは俺の家に向かって車を走らせたが、夕方までにはまだ少し時間がある。 「腹減ったな……」 「おお、そうだったな、よし何か食いに行こう」 昼飯抜きだったので腹が減って無意識に呟いたら、テツは焼肉屋に連れて行ってくれた。 昼をすぎた中途半端な時刻だし、店は空いていて人目を気にする必要はない。 テツは焼けた肉を小皿に取り分けてくれたりしたが、多分翔吾の面倒をみてきたから、そんな事をしてくれるんだと、勝手にそう思っていた。 口には絶対出さないが、俺はちょっとしたデート気分を味わった。 帰り際、テツは家の前まで送ると言ったが、夕方は人通りも増える。 「ごめん、有り難いけど……、やっぱ誰かに見られたらマズいし」 「そうか……わかった」 来た時は家に上がろうとしたくらいだ。 また文句を言うかと思ったが、すんなりといつもの場所まで送ってくれた。 車が定位置に止まり、俺は車から降りようとしたが……やめた。 「焼肉まで奢って貰って……なんか悪いな、ありがとう」 ちょっと照れ臭かったが、ひとことお礼を言わなきゃ気が済まない。 「そんなこたぁいいんだよ、気にするな、それより若の事なんだが……」 テツは笑顔で答えたが、不意に翔吾の事を持ち出してきた。 「翔吾がどうかした?」 「もし若が何か勘ぐるような事を言ったら、これまで通りとぼけて誤魔化してくれ」 「そうするつもりだけど……、ひょっとして何か言われたとか?」 「いや、そうじゃねー」 翔吾にバレたんじゃないかと心配になったが、テツは軽く受け流してそれ以上何も言わなかった。 たまたま念を押しただけか……。 「そっか、じゃまた連絡待ってるから」 俺は次に会う事を期待して言った。 「お前から言うとはな、へへっ、いよいよ俺にハマってきたな」 すると、テツはしたり顔で言ってくる。 「え、あ、いや……、そうじゃなく……その」 痛いところを突かれ、狼狽えてどう答えていいか分からなくなった。 「冗談だ、また連絡する、いいか、おとなしく待ってろ、浮気するなよ」 テツはニヤリと笑って言うと、次の約束を口にして俺に釘をさしてきた。 「それはテツの方だろ……、俺はそんなのねーし」 俺は逆に言い返して誤魔化した……。 「そうか、なら安心だ」 テツは俺の言葉を信じて頷いた……。 「それじゃ、また」 ひとこと言って車を降りたら、振り返らずに家に向かって歩いたが、俺が脇道に入るまでテツは車を止めて俺を見ている。 俺が脇道に入ると、走り去る車の音が聞こえてきた。 胸が痛くて堪らなくなった……。 立ち止まって振り返り、既に走り去ってしまった車に向かって呟いた。 「……ごめん」 テツが過去に何かやらかしていたとしても、今嘘をついてるのは俺の方だからだ。
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