18still(木下竜治)※また18〇入ります

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18still(木下竜治)※また18〇入ります

◇◇◇ 旅行から帰ってきたテツと、車の中であんな事をやってしまったが、家に着くまでの間に、ああいった場所は市内のみならず、全国的に存在するとテツから教わった。 何故そんな事情に詳しいかは、聞かなくても大体わかったが……一応聞いた。 そしたら、テツは若気の至りだと言った。 テツ自身、ああいったスポットに行くのは久しぶりだったらしいが、自分がフェラしたのも本当に久しぶりだと、そんな事を感慨深げに語っていた。 俺はスポットよりも、フェラがやたら上手い事の方が気になっていたが、そっちは聞くのを躊躇した。 今よりずっと若い10代の頃の話だとしても、テツが親父さんとやってる姿を想像したくない。 次に会うのは金曜日の午後という約束だが、当日にまた連絡するという事だ。 祭日で特に予定はない。 俺は構わないが、翔吾は大丈夫なのかと聞いたら、親父さんと一緒にゴルフに行くと言っていた。 それなら安心だ。 翌日の木曜日、翔吾は学校を休んでいたが、急な予定でも入ったんだろう。 ゴルフの事はたまたまテツが話したが、テツも他の組員も、組絡みの予定を前もって口にする事は殆どない。 俺もその方がいい。 シノギがどうだとか、そんな話は聞きたくない。 それよりも翔吾の事が気になる。 翔吾は俺とテツの関係に、薄々気づいているんじゃないか? だからわざとテツの前でキスをした。 そんな風に思えるんだが、それなら何故テツに俺を送らせたりしたのか……。 さっぱりわからないし、謎すぎる。 休みを前日に控えた日はかったるいが、明日テツと会えると思うと、何気にテンションが上がった。 ところが、下校途中に三上から電話がかかってきた。 三上は先日火野さんに邪魔された事でムカついてるようだった。 今から迎えに行くと言ったが、会ったら何をされるかわからない。 ──火野さん……。 この際、あの人に相談してみようかと思ったが、もし火野さんに頼ったとする。 当然、火野さんは何らかの行動に出るだろう。 万一それが元で、翔吾やテツとの関係に支障をきたしたら……。 そう考えると、今一つ踏ん切れない。 三上との待ち合わせ場所はコンビニ前だ。 そこで落ち合って、自転車ごと三上の車に乗ったが、イラついてるのは一目瞭然だった。 「こないだは余計な奴の登場で予定が狂った、その分きっちり返して貰うぜ」 案の定、開口一番にぶつくさ言う。 俺は何も答えずに黙っていた。 今度こそ地下室かと思って覚悟していたが、車は歓楽街へは行かなかった。 連れて行かれたのは、以前テツと一緒に行ったあのテナント事務所の前だ。 事務所になにか用事でもあるのか? と思ったが、別に聞きたくなかったから聞かなかった。 三上は明かりの消えた不動産屋の前に車を止め、直ぐに車を降りるかと思ったが、座ったまま動こうとしない。 一体何なんだ? と思って三上の方を見た。 「おい、今からここに客が来る、お前にゃ客の相手をして貰う」 すると三上も俺の方を向いたが、耳を疑うような事を言った。 「えっ……客?」 「そうだ、2時間、その客と過ごしてここに戻って来い、客が送ってくれる」 「ちょっと待ってください、それって……まさかウリを?」 「ふん、俺をコケにした罰だ、いいか? おめぇは買われたんだ、客が気に入るようにサービスしろ」 信じられなかったが、本気で言ってるらしい。 いくらムカついたからと言ってウリをやらされるとか、そんな事を承諾できる筈がない。 ……マジで頭にきた。 「そんな勝手に決められても、三上さん、俺はあなたと好きで付き合ってるわけじゃない、それにあなたは……俺とテツの事を知ってるのに……、それで俺にウリをやらせるんですか? それって、あなたこそテツをコケにしてるって事になるんじゃないですか? 以前あんたは……テツがウリをやらせると言ったが、そんなの嘘だ、そんな事を言ったあんたが今俺にやらせようとしてんじゃん、最低だろ!」 怖さよりも怒りが上回り、思いっきり文句を言った。 「っの糞ガキが、生意気言いやがって! おお、おめぇとテツのこたぁよく知ってる、矢吹か……、あいつは昔っから親父に可愛がられてきた、若頭補佐とは言っても、実質はさんざ甘やかされたガキの子守り役だ、たかがガキのもりをするだけで特別扱いときた、けっ……、あいつにゃ昔恥をかかされたからな、真っ当なシノギだけじゃ稼ぎは出ねぇ、だから仕方なく禁じ手を使ったまでだ、だが奴はその事で激昂して俺を殴りやがった、若中がいる前でこの俺を殴ったんだ、親父には伏せてやると言ったが、こっちは面目丸潰れだ、そんとき、矢吹にチクリやがったのが火野だが、奴は相当頭がイカレてるからな、まともに腹を立てるのも馬鹿らしい」 どうやら三上は過去にテツといざこざを起こしたようだ。 それが原因で俺にこんな仕打ちをしているのだとしても、三上の話を聞いたからと言って納得出来る筈がない。 「俺はそういう世界の事はわかりません、だけど、それは逆恨みじゃ?」 禁じ手を使ったと言ったし、テツが怒るのは当たり前じゃないか? 「黙れ! おめぇを若の家で見かけた時、俺はおめぇの事を気にいった、それは事実だ、おめぇとテツの事を知ったのはそれから後だが、奴はおめぇの事を随分気に入ってるようだ、だったらこの機会に奪い取ってやろうと思ったんだが……、おめぇは金をやると言っても素直に従わねー」 「それで……ウリですか?」 逆恨みをした上に俺が従わないからってウリをやらせる。 ……滅茶苦茶な話だ。 「おう、そのひねくれた根性を俺が叩き直してやる、っはは……! これで分かっただろう、分かったらおとなしく従え」 ひねくれ者なのはむしろあんたの方だと言いたかったが……それよりも、ウリをやらされるとか、冗談じゃない。 「嫌です……、俺、ウリなんかやりませんから!」 ドアを開けて逃げ出そうとしたが、ロックされていて開かなかった。 「おいコラ、これを見ろ! 薬を打たれてぇか」 肩を掴まれて強引に三上の方へ向かされ、目の前に突きつけられた物を見た瞬間、体中の血が凍りついた。 「あっ……」 注射器だ。 「こいつを打ちゃ嫌でもサービスする気になるぜ、オラ! 腕を出せ!」 三上は口で針の蓋を外すと、腕を掴んで注射器を近づけてきた。 「い、いやだ! やめてください! そんなの……絶対嫌だ!」 針が肌に触れそうになって、死に物狂いで抗った。 「おとなしく言う事を聞くか! あぁ"? どうなんだよ」 すると、また脅してくる……。 「くっ……」 悔しくて、腹が立って仕方がなかったが、言う通りにするしかなかった。 「わ、分かりました……、だからやめてください」 「本当だな? 一応言っとくが、客も俺らと同業だ、客の前でなめた真似したら責任とれねぇからな、おい、分かったか」 同業……。 嫌な事を言われて念押しされたが……俺は黙って頷いた。 それから5分くらい経った時に、1台の車が駐車場に入ってきた。 やってきたのは、三上と同じ黒のヴェルファイアだ。 車は俺の真横にすーっとやって来て並んで止まり、運転席に座る人物は俺の方を見てきたが、俺は顔をそらして俯いた。 三上は車から降りて隣の車に向かって歩いて行き、助手席に座る俺の横に背中を向ける形で立った。 気になって横目で様子をうかがったら、運転席の男は車の窓を開け、三上は屈み込んで男と話し始めた。 男は三上より年上に見える。 スーツを着てネクタイをきっちり締めているが、短髪で目付きが鋭く、スーツを着ていてもガタイがいい事が分かる。 雰囲気から霧島組の人間ではなく、三上の個人的な知り合いだと思われるが、いくら三上でも同じ組の人間を紹介する事はないだろう。 それよりも俺は、今からあの男の相手をするのかと思うと……金の為に、好きでもない相手と寝るなんて、虫唾が走る程嫌だった。 「おい、降りろ」 話が終わったらしく、三上が振り向いてドアを開けた。 「ふっ、しっかり働いてこい」 車から降りたら、三上がニヤついた顔で俺の背中を押した。 俺はつんのめるように前に踏み出して男の真ん前に立った。 「名前は聞いた、友也、乗れ」 「……はい」 男に言われて助手席側に回り込み、ドアを開けて車に乗り込んだが、力なくシートに背中を預けていた。 「三上、それじゃ2時間後にここで会おう」 「おう、楽しんできな」 男が三上に声をかけ、三上は言葉を返したが、俺は茫然となって前を見据えた。 車が動き出し、事務所前を離れて広い道路に出たが、男はチラチラ俺を見ている。 「俺は木下だ、おめぇ18だって?」 「はい」 「未成年とやったらやべーな、はははっ、で、三上に飼われてんのか」 「いいえ」 「ほお、きっぱり言ったな、あいつの事だ、さては何か弱みに付け込まれたか? まあーそんなこたぁ俺にゃ関係ねーがな、売り専は飽きた、そしたら三上の奴が、カタギで現役高校生が居るって話を持ちかけてきた、2時間で6万はちょいとたけぇが、おめぇなら悪くねー」 男は木下と名乗って俺に年を聞き、勝手にペラペラと喋っていたが、俺はどうでもいい気分だった。 昨夜はテツと楽しくやって、明日は会う約束をしているというのに……。 こんな今時珍しい角刈り頭をした男と、ベッド・インしなきゃならないなんて。 木下と名乗った男は、昔の任侠映画に出てきそうな面構えをしている。 ───三上……あいつ……恨んでやる。 三上に対して腹が立って仕方がなかったが、無情にも車はガレージタイプのラブホへインした。 木下について部屋に入ったら、木下は入って直ぐにセカンドバッグから浣腸を出して手渡してきた。 「やってこい、時間がもったいねぇからさっさと済ませろ」 「はい」 こうなったらヤケクソ、開き直り……だ。 投げやりになったら、自分でもおかしいくらい腹が据わった。 トイレで浣腸とシャワ浣を済ませてトイレから出たが、トイレのすぐ近くに浴室がある。 シャワーの水音がしたので何気なく浴室内に目を向けたら、木下が裸になってシャワーを浴びていた。 浴室はガラス張りだから中が丸見えなのだが、湯気で中ははっきりと見えない。 そんな状態でうっかり木下と目が合ってしまった。 木下は俺を見て手招きしたが、喜んで行ける筈がない。 目を逸らそうとしたが、何か違和感をおぼえてもう一度木下を見た。 裸なのに、まるで服を着ているように見える。 「ん?」 よく見てみたら……それは刺青だった。 しかもタトゥーというようなレベルではなく、全身にビッシリ入ってるやつだ。 『──ひぃぃ…!』 心の中で悲鳴をあげていた。 青や赤が入り交じった模様が、手首や足首まで、びっしりと彫られてるのを見てびびった。 「おい、何してる、早く裸んなってこっちに来な!」 幸か不幸か……ヤクザには随分慣れてしまったが、その手の本格的な刺青を見たのは初めてだ。 威圧感が半端ない。 けど、呼ばれてるし……行かなきゃ仕方がない。 服を脱いで浴室に入り、とぼとぼと木下の傍へ行った。 「ほら来い、シャワ浣は済んだか?」 近くで見る刺青は毒々しい感じがしたが、肩を掴まれて木下の方へ引き寄せられた。 「済ませました……」 「へえ、素人の高校生のわりにゃ慣れてるんだな、だったらシャワー浴びろ」 緊張しながら答えたら、木下はシャワーの湯を浴びせてきた。 「あの、自分で……やります」 手を出してシャワーヘッドを受け取ろうとしたが、木下は渡そうとしない。 「ああ、いい、俺にやらせろ」 湯を浴びせながら体を擦ってくるから焦った。 「いえ、いいです……、ほんとに自分でやりますから」 全身刺青を入れたような人に体を洗って貰うのは、気が引けるというようなレベルではなく、最早恐怖を感じる。 「ひょっとして、刺青が怖いのか?」 「あの……」 「構わねぇ言ってみろ、怒りゃしねーよ」 「はい」 「そうか、こんなもんちっとも怖かねー、ただ肌に傷をつけて色を入れてるだけだ、ただな、俺は気に入ってる、見てくれ」 「あ、これは……」 「毘沙門天だ、色んなご利益がある、縁起物だ」 木下は俺に背中を向けて毘沙門天を見せてきたが、目の前で見た毘沙門天は迫力満点だった。 「へえ……、凄い」 「触ってみな」 俺が刺青にビビってるからか、木下は俺の緊張を解すように刺青に直接触らせる。 「あ、はい……」 怖さよりも芸術作品を眺めてるような気分になったが、寒い季節じゃないのに刺青入りの肌はひんやりと冷たかった。 「ひんやりしてるだろ?」 「はい」 「刺青を入れたら体温調節が上手くいかなくなるんだ、だから肌がつめてぇ」 「そうなんだ……」 「安心したか?」 「あっ、はい……」 木下は刺青について説明してくれたけど、俺はなんとも言えない気持ちになった。 自業自得と言えば確かにそうだが、体温調節が上手くいかなくなるとか、どこか気の毒なような気がする。 背中から手を離したら、木下は前に向き直って俺の体を再び洗い始めた。 「よっしゃ、じっとしてな」 向かい合って立ったが、刺青を間近に見ても……もう怖くはなかった。 木下は俺の体に湯をさっと浴びせてシャワーヘッドを戻し、ボディーソープを手のひらに取って泡立て、肩や首、体の前面に大きく塗り広げて丁寧に洗ってくれた。 ナニに触れるかと思ったが、股間には触れずに背中を向けるように言ってきた。 言われるままに背中を向けると、さっきと同じように肩や腕などを擦っていったが、両手が腋の下を潜り抜けて胸を弄り始めた。 感触を確かめるようにゆっくりと肌を撫で回し、カラフルな柄が入った腕で抱き締めてくる。 ひんやりとした肌が背中に密着すると、淫らな気持ちが湧き起こってきた。 俺は……ウリなんかやりたくないし、木下の事だって嫌な筈だった。 三上を恨んでやろうと、そう思っていたのに……。 指先で乳首を弄られたら……ナニが勃ってきた。 「乳首、感じるんだな? 開発済みか」 耳元で低い声で囁かれ、ゾワっとした感触が背中を這い上がり、体が熱気を帯びたように昂っていく。 「それは……わかりません」 ウリをやらされて感じてるとか、そんな事は認めたくなかった。 「嘘つくな、これはなんだ?」 だが起立したナニを握られ、反射的に肩を竦めた。 「うっ」 「男とやるようになったのはいつからだ?」 木下は俺のナニを扱きながら、突っ込んだ事を聞いてくる。 「高3に……なってから」 「なんだ、じゃあまだ経験あせーな、たった数ヶ月でウォシュレットでシャワ浣、乳首弄られて感じてんのか? 誰に教えられた、三上か?」 「はあ、う」 ゴツゴツした手で根元から絞り上げるように扱かれ、迫りくる快感に体がこわばっていたが、三上に教わったとか……冗談じゃない。 それだけは意地でも否定したかった。 「ち、違います!」 「ほお、それじゃあ、霧島組の誰かか?」 すると更に突っ込んだ事を聞いてきて困惑したが、さっきから木下のナニが尻に当たっている。 肌が冷たいせいか、それはやけに温かく感じたが、ボディーソープに塗れた手で竿を扱かれちゃ堪らない。 「いえ、それは……、い、言えないです」 意識が股間に集中していったが、何とか我慢して答えた。 「ま、そりゃそうだろうな」 俺の体を魔改造したのはテツだが、全部テツの責任かと言えば、実はそうじゃなかったりする。 俺がケツで感じるタイプだったのも、そうなった原因だ。 「なら、これくらいは言えるだろう、おめぇに手をつけたのは、俺らと同業の……ヤクザか?」 木下は幅を広げて聞いてきたが、聞きながら先端を親指の腹でヌルヌル摩擦してくる。 「うっ、くっ」 ナニがビクついてイキそうになってきた。 けど、呆気なくイクのは恥ずかしい。 出来るだけ股間から意識を逸らして答えた。 「あの、は、はい……」 そのくらいなら明かしても大丈夫だろう。 「そうか、悪い奴がいたもんだ、こんなに感じてちゃ、もう元には戻れねぇぞ」 木下は竿を握り直して大胆に扱きあげ、もう我慢出来なくなった。 「あ、あの、イク、イキそう…」 前屈みになって訴えると、木下は竿から手を離した。 「ん、はえーな、慣れてるわりにゃ早漏か? まぁそれも悪くはねぇ、おめぇフェラ出来るよな?」 「あのー、一応出来ますが……、上手くはないです」 フェラ出来るかと聞かれてさらっと答えていたが、そんな事をさらっと言える位、俺は慣れてしまったんだと思った。 自己嫌悪に陥ったが、木下は下手でも構わないからやれと言う。 兎に角、無理矢理だとしても、この人はただ俺を買った客に過ぎないし、悪気があってやってるわけじゃない。 やる事をやろうと思った。 一旦シャワーを浴びてボディーソープを洗い流し、互いに体を綺麗に洗った後でやる事になり、俺は木下の前に跪いた。 だが、目の前に突き出したナニを見て驚いた。 明らかに形がおかしい……でこぼこしている。 先端の真下にボコボコと張り出すように凹凸があり、竿の部分や根元にも同じようなボコボコがぐるりとある。 「驚いたか? そりゃシリコンだ」 「シリコン?」 「ああ、おめぇは知らねぇだろうが、昔は真珠を埋め込んだりした、今はシリコンだ、小さなシリコンの玉を埋め込むんだ、こうすりゃ突っ込まれた方は気持ちいい」 「へえ、そんな事が……」 木下はボコボコについて説明してくれたが、確かに……よく見たら中に球状の物が入ってるのがわかる。 疑問が解消して俺は竿を咥えたが、歪な形をした竿は咥えにくかった。 ボコボコのところに歯が当たりそうになる。 歯を引っ掛けないように気をつけながら、舌を駆使してやっていったら、木下は俺の頭を撫でてきた。 「本当にまだ不慣れなようだな、ま、その方が素人らしくていいがな」 俺は今、やっちゃいけない事をしている。 本来なら、苦渋に塗れて嫌々やらなきゃいけないんだろうが、不思議な事にちっとも嫌だとは思わなかった。 木下が、三上のように乱暴な振る舞いをしなかった事もあるが、体中刺青だらけにもかかわらず、意外と紳士的だった事が好感を抱かせた。 テツには悪いと思ったが、俺は……こんな事を自分から好んでやるつもりはない。 三上の事も含め、ウリをやらされた事をもしテツが知ったら……前に言ってたように三上にヤキを入れるだろう。 三上がどうなろうが俺の知った事ではないが、俺の抱える問題はそう簡単な事じゃない。 だから、俺が耐えてりゃいいだけだが、ウリと言っても……木下のような客なら、三上に付き合わされるよりはずっとマシだ。 「もういいぞ、ベッドに行くか」 「はい」 促されてベッドに場所を移した。 仰向けになって木下と抱き合ったら、被さる体はやっぱりひんやりと冷たい。 熱を帯びた体にひんやりとした肌が重なると、無意識に呟いていた。 「冷たくて……気持ちいい……」 「はははっ、そうか、そりゃ良かった、ただな、汗をかけねぇし、俺にとっちゃ夏はきついな、これを隠す為に長袖長ズボン着用だ、ガキを海に連れてってやるにもひと苦労する、まあーもっとも、そんなこたぁ百も承知の上だがな」 木下は愚痴めいた事を言って笑ったが、今の話からすれば、どうやら妻子持ちのようだ。 年は40位に見えるが、バイセクシャルなんだろう。 ヤクザ屋さんはバイセクが多いような気がしたが、木下は奥さんがいるのに俺を買った。 それとこれとは別物なのか? 俺にはそこら辺の事はわからなかったが、いずれにしても俺には関係ない事で、そんな事を悠長に考える余裕はなかった。 首筋にキスされて髭がチクチク肌を刺してきたが、ざらつく髭の感触はテツの姿と被り、ずっしりとのしかかる体を抱いていた。 唇は柔らかな軌跡を残しながらゆっくりと下へ向かい、無骨な指先が胸の突起をギュッと摘み上げてくる。 「ん、んう、はあ」 頭の中が淫らな欲に支配され、突起を摘まれただけでビリビリとした刺激が走った。 「友也おめぇ、感度いいな、おめぇのような奴はやりがいがある」 木下は顔を上げてニヤリと笑い、唇を乳首にあてがってきた。 舌が突起をねっとりと舐め回し、体に力が入って息が乱れた。 「んくっ……、ハァ、ハァ」 濡れた舌は円を描くように乳輪をなぞり、焦らすように旋回した後で突起を弾いた。 「はっ、あ!」 体がピクリと震え、乳首を弄られるうちにナニが張りを増していった。 「18だとさすがに元気がいいな、さっきから勃ちっぱなしじゃねーか」 木下は添い寝するように寄り添うと、片手でナニを扱きながら胸の突起をしゃぶる。 「う……、あ、ハァハァ、イク」 またイキそうになってきた。 「おめぇ、トコロテンでイケるのか?」 木下はナニから手を離して聞いてきた。 「はあ、は、はい……」 「だったらそっちでイかせてやる」 俺が答えたら、起き上がってベッドのヘッドボードに置いたセカンドバッグを手にして、中からローションを取り出した。 それを見て、俺はシリコンの事が気になってきた。 一体どんな感じなのか、期待と不安が入り交じってドキドキしてきたが、木下はさっきと同じように添い寝してくる。 直ぐにやると思っていたので拍子抜けしたが、顔が真上にきて唇が重なってきた。 「んっ……」 キスするとは思ってなかったので驚いたが、頭を押さえつけて貪るように唇を吸ってくる。 そのまま上に被さってきて、身動き出来ない程の重圧感に息が詰まったが、無理矢理やられてるような気分になって妙に興奮した。 強引に唇を割って肉厚な舌がヌルりと入り込み、傍若無人に粘膜をなぞりあげてくる。 「あ、う……」 さっきまで穏やかに接していたのに、一転して飢えたように荒々しく舌を動かす。 耐えきれなくなって背中をギュッと抱き締めたら、木下はキスをやめてふっと口元を緩めた。 「ちょいと飛ばし過ぎたな、わりぃ、おめぇみてぇな奴ぁタイプだからよ、つい興奮しちまった」 「い、いえ」 頭がぼーっとなっていたが、率直な物言いも好感が持てた。 「よし、それじゃやるか」 木下は枕元に置いたローションを取って起き上がった。 「足を上げな」 「あ、はい」 俺は木下の指図に従い、足を開いて局部を晒した。 テツで慣れているとは言っても、初めて会った相手に局部を晒すのは恥ずかしかった。 顔が熱くなってきたが、鼠径部をなぞる指先が後孔へ触れると、体の中がじわりと疼いた。 「友也、おめぇケツ毛ねーな、それによく見りゃ陰毛が半分ぐれぇなくなってる、こりゃ永久脱毛か?」 木下はローションを塗りたくり、指の腹で穴をグ二グ二解しながら聞いてきた。 「は、はい」 「三上……は違うな、あいつはそんな事に金を使わねー、おめぇの惚れた相手は、おめぇの体を開発した奴だ、だとすりゃこの脱毛もそいつに言われてやった、当たりか?」 脱毛の事を聞いてきたが、具体的に言わなければ大丈夫だろう。 「は、はい……」 「そうか、俺はやらねぇが、たまにいるな、証を残す奴が……、こいつは俺のモノだと誇示する為だ、印を刻まれた方はそいつを忘れる事が出来なくなる、一昔前は囲った女に墨を背負わせる奴がちょくちょくいたな」 木下は話し終えて指を体内に入れてきた。 節くれ立った指がズプッと突き刺さり、粘膜を摩擦する感触に体がこわばった。 「あ、うっ……」 「ここはかなりイけそうだな……、それなら前立腺はもっと感じるんじゃねーか?」 木下は指を動かして前立腺を探し始め、あっという間にそこを捕らえた。 甘く痺れるような刺激に吐息が漏れたが、鼠径部の辺りを下から上へ向かってペロリと舐められ、思わずシーツを握り締めた。 「う、あ……」 木下は敏感な箇所を舐めながら、前立腺を叩くように刺激してくる。 「ハァ、あっ、ああ」 俺は擽るような刺激に戸惑いながら、太い指で前立腺を押し回され、両方からくる刺激に体が急激に昂っていった。 「おめぇ、毛が薄いからよ、舐めやすくていいな、へへっ」 「あ、あの、あっ、うくっ、ああ……、ハァハァ、あ、あのっ、もうイかせてください!」 これだけ責められたら、もう限界だ。 「おっと、トコロテンでイかせるって言っただろ、こいつの出番だ」 木下は行為をやめて膝立ちした。 俺の足をぐいっと持ち上げると、ナニにローションを塗っていく。 ボコボコのナニを見て、思わず唾をゴクリと飲み込んだ。 「よし、入れるぞ」 心臓がバクバクして堪らず目を瞑っていると、先端が穴に触れてきた。 「いいか? いくぞ」 「は、はい」 声をかけられて返事を返したら、硬い肉塊が体内をぐっと押してこじ開けた。 反射的に体が硬直していたが、竿が体内に入り込み、堪らず声を上げていた。 「う、うあっ、あっ、ああっ!」 シリコンの突起が粘膜を強く摩擦し、未知の感触に体中がゾクゾクして総毛立つ。 なのに、木下はズンと深く突き上げてきて、凄まじい快感が襲ってきた。 「ひっ!あぐ、う"っ!」 股間のナニが脈打って体液を飛ばし、体中がガクガク震え出した。 「おおーいったか、いいな、いいイキっぷりだ、これぞトコロテンって感じだな」 木下は体を倒して俺の上に被さり、荒っぽく頭をゴシゴシ撫でてきたが、俺は震える手で木下の腕を掴んで訴えた。 「あっ、あのっ、ハァハァ」 体内に埋まるナニは、中に入ってるだけで体中を痺れさせる。 「ん、どうした?」 「これ、やばいです……、う、動かないで……ください」 これで動かれたら、どうなるかわからない。 「バカ言うな、動かねーでどうやってイけって言うんだ? 動くぞ」 けど、木下は体を揺らし始め、俺はとんでもない快感に呑まれた。 「ああ"、ダメだ、ダメだから! あっ! あっ!」 襲い来る強烈な刺激から逃れようと藻掻いたが、シリコンの突起が有り得ない快感をもたらす。 「こりゃたまらねぇな、震えるほど感じるとは、タチ冥利に尽きるわ」 刺青だらけの体が揺れ動くたびに、シリコンが体内をゴリゴリ擦り上げ、竿の先端、中央、根元に埋められたシリコンが、敏感になった前立腺を容赦なく擦り上げる。 「待っ、ハァハァ、もう、ダメだ、し、死ぬ、死ぬうー!」 テツにも快楽攻めをされたが、シリコンが与える快感は破壊力が凄まじい。 気持ち良すぎて涙が滲み出してきた。 俺は達した後にドライイキしていたが、達した後で延々快感が続くのはきつい。 もう許して欲しかったが、木下はキスしてきた。 「う"っ!」 舌が入り込んで口の中を好きに弄り、苦しくて堪らなかったが、苦しさは更なる快感を煽った。 「あ"……っ、が」 ヌメる舌が喉を塞いで呼吸を乱し、前立腺から来る焼けるような快感に体中が痺れ、震えが止まらない。 快楽から逃れようとしても、腕や肩を掴むのが精一杯だった。 俺は散々喘ぎ、しまいには掠れた喘ぎ声を漏らしていた。 出口の見えない快楽の連鎖に……意識があやふやに霞んでいった。 「おい…、おい! 目ぇ開けろ!」 ───顔をペちペち叩かれた。 「う……、ハァ、ぁ……、テツ……?」 以前テツに快楽地獄に堕とされた事がある。 だから、ついテツかと思って名前を呼んでしまったが……。 「んん? 今、名前呼んだな、テツ……って、ひょっとして……補佐の矢吹テツの事か?」 木下はめざとく今のうわごとを聞いていたようだ。 「ふ……、あ?」 「聞いちまったぞ、おめぇの惚れた相手はあの矢吹か」 迂闊だった、テツとの関係を知られるのはマズい。 「え…? い、いえ……、違います」 「さっきテツって呼んだじゃねーか」 「あ、それは……、矢吹とか……知りません、別人です」 俺は必死になって否定した。 「誰にも言わねぇから、教えろ」 しかし、木下はしつこく聞いてくる。 「すみません、俺の相手は哲二です」 咄嗟に嘘をついた。 「ほおー、同業だと言ったよな、どこの組だ?」 「あの、本当にすみません……、だけど、そういう事は何も話せません」 俺は気を失っていたので木下がいつイったのか、全く分からなかったが、木下は俺の中で果てていたようだ。 たった今それに気づいたが、今はそれどころじゃない。 「ふうー、そうか……、わかった、つまらねー事を聞いて悪かったな」 木下はため息をついて残念そうな顔をしたが、追求するのをやめて諦めてくれた。 恐らく……木下と会うのは、今回が最初で最後になる……と思う。 大丈夫だ、テツと付き合ってる事がバレる事はない。 「シャワー浴びるか、もっとゆっくりしたいが、じきに時間がくる、おめぇを返さなきゃならねぇ」 「はい……」 促されて一緒にシャワーを浴びたが、激しい交わりのせいか、足元がよろついた。 「おい、しっかりしろ」 「あ、すみません……」 シャワーを浴びる間、木下は俺の体を支えてくれた。 服を着る間も、部屋を出る時も、腕を掴んで支えてくれる。 全身刺青だらけなだけにやけに優しく感じたが、車に乗ってラブホを離れたら、木下はどこか落ち着かない様子を見せていた。 タバコを吸いながらハンドルを握り、気もそぞろに前を向いている。 俺は流れる景色を眺めていたが、意識はこの場にはなく、明日の事を考えていた。 木下が優しくしてくれたからと言って、体を売った事に変わりはない。 ───やっぱショックだった。 だから出来るだけその事を考えないようにして、楽しい事だけを考えようとしていた。 「な、友也」 すると、後10分くらいで事務所前に着くという時になって、それまで無言だった木下がタバコを消して話しかけてきた。 「はい」 「おめぇの相手が、矢吹だと仮定しての話だが……、おめぇ、あいつらの諍いに巻き込まれてるんじゃねーか? 俺は三上が矢吹の事を悪く言ってたのを聞いた事がある、三上はああいう奴だからな、くだらねぇ事で根に持ったりする、いっそ矢吹に打ち明けたらどうだ? どう見ても好きでウリをやってるようにゃ見えねぇ、それとも……矢吹に相談できねーわけでもあるのか?」 木下は客だし、また機会があったら……とか、誘ってくるんじゃないか? と、チラッと思ったが、そうじゃなく、俺の事情を全く知りもしないのに、三上との事をほぼ言い当てた。 正直驚いたが、木下は俺よりも三上との付き合いが長いようだし、それでそんな事を言い当てたんだろう。 「あの、俺にはなんの話か……よく分からないので」 けれど、俺には知らないふりをするしかない。 「そうか……、いや、だったら今の話は忘れてくれ、2時間6万じゃそう気軽に呼ぶわけにはいかねーが、また会えたら……おめぇが気を失うぐれぇやりてーな」 木下はため息混じりに忘れろと言い、冗談めかしてニヤリと笑った。 この人は俺を買った人間だけど、根は悪い人じゃなさそうだ。 俺の事を心配して気にかけてくれた。 その気持ちが嬉しかったので、御礼代わりに笑顔で返した。 「あ、はい……」 事務所前に戻ってくると、三上の車が止まっていた。 「それじゃ……」 「おう、またな、今日は楽しかったぜ」 木下に頭を下げて車を降りかけたら、木下は背中越しに声を掛けてきたが、三上が俺の傍に歩いてきたので振り向く事が出来なかった。 「よし、友也、こっちへ来い」 手招きされて三上の後ろへ歩いて行くと、木下は窓を開け、三上は屈み込んで木下に話しかけた。 「楽しめたか?」 「ああ、よかったぜ、充分楽しめた」 「くっくっ……、そうか、それなら良かった、また呼びたくなったらいつでも電話しろ」 「おお、そうさせて貰う、ただな、おめぇにひとつ言っておきたいんだが、友也は素人だ、客は選んでやれ、無茶はさせるな」 「なんだ? 友也が何か余計な事でも言ったか」 「そうじゃねー、何も話しちゃいねーよ、あんまりやりすぎるとパクられるぞって言ってるんだ」 「おう、その辺は気をつける」 「ならいいが……、それじゃぼちぼち行くわ、また会おう」 木下は俺を一瞥して車を発進させた。 俺は木下の車が走り去るのを見送り、三上に言われて三上の車に乗った。 三上は直ぐに車を出したが、何も言わずに黙っている。 木下から6万も巻き上げて……さぞ気分がいいんだろう。 涼しい顔をする三上を見たら、段々腹が立ってきた。 「こんな事させて……あんた本当に最低だ」 「ふっ、これでおめぇも朱莉と一緒だ、テツは一時あの女に入れ上げてたからな……、どこで捕まえたのか知らねぇが、ある日奴はカタギの素人女を連れてた、一見地味だがいい女だった、それがあの朱莉だ、朱莉は矢吹と付き合ううちに変わっていった、見た目も中身もな、しまいにゃ薬に手を出すようになっちまって、その挙句……男狂いの淫乱だ、ソープは今の朱莉にとっちゃ天職なんだよ、おめぇもそうなるんだ、よかったな、っはは!」 ムカついて言ったら、三上は朱莉さんの事をしたり顔で言ったが……意味が分からない。 「何を言ってるのか……さっぱり分かりません、それって、何がテツのせいなんですか? 付き合って変わっていったとしても、テツがそうしたわけじゃないんでしょ? それに俺は朱莉さんとは違う」 「なら聞くが、おめぇは奴と付き合って何も変わってねーと言えるのか? 俺に向かって生意気な口を叩いてるが、おめぇはたった今ウリをやらされたんだぜ、普通のガキならそんな口を叩く余裕なんかねー筈だ、それが平然と俺に文句を言う、おめぇは既に変わっちまったって事だ、矢吹に逆上せて何も分からなくなってる、俺は優しいからな、わざわざおめぇに忠告してやってるんだ、どうしてそうなったか……よーく考えてみるんだな」 何か言い返してやりたかったが、三上の言った事を真っ向から否定できなかった。 どうしようもなく腹が立つのに、情けなくて……惨めな気持ちになってきた。 そんな事はねー、悪いのは三上だ。 テツのせいじゃねーって……。 繰り返し、心の中で唱え続けていた。
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