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◇◇◇
テツがこっちを見ているかもしれないが、やるしかない。
「ね、テツー、ちゃんと見てるんだよ」
腹を決めてキスしようとしたら、翔吾は不意にテツの方へ向いて言った。
「はい」
テツは抑揚のない声で返事をしたが、俺は翔吾の方へ向いてるから、テツを見る事が出来ない。
「うん、だったらいい」
翔吾は急に活気づいて俺の体を押し倒してきた。
「あ……」
「友也、僕の事好き?」
ソファーに横になった事でテツが視界に入った。
「……ああ」
好きだという気持ちに偽りはない……但し、LIKEだ。
翔吾は笑みを浮かべた後で唇を重ねてきた。
華奢な体はテツと違って悲しいくらい軽く感じたが、翔吾は俺の頭を片腕で抱き込んで唇を貪る。
翔吾はこんな事をして本当に満たされるのか?
こんな事をするのは間違ってると思うが、翔吾が暴挙に出たのは俺とテツの事が原因で、俺にも責任がある。
だから、仕方がない。
翔吾はやっぱり親父さんと同じ香水を使っているらしく、息をすると甘い香りが体中に染み渡るようだ。
柔らかな唇が枯渇したように俺の肌を貪り、掠めるようなキスを落としながら耳へと向かう。
細い指先が胸の突起を摘み上げてきたが……俺は視界の隅に映るテツの事が気になって仕方がなかった。
「友也……、テツの事を気にしてるでしょ」
翔吾は不貞腐れた顔で言ったが、気にするなって言う方が無理な話だ。
だからなにも言えなかった。
「なにも言えないんだ、いいよ、じゃあ、もう脱いじゃって」
俺は命じられるままに起きあがったが、その拍子にテツと目が合ってしまった。
動揺してしまい、直ぐに目を逸らしたが、テツは無表情に俺を見ていた。
意外だった……。
俺はてっきり、もっと辛そうな顔をしているかと思ったのに、狼狽えるようなそぶりは全くない。
「僕も脱ぐよ」
翔吾も服を脱ぎ始めたが、俺は気もそぞろに服を脱いでいった。
真昼間から全裸になって再びソファーに体を横たえる。
翔吾が被さってくると、滑らかな肌が擦れ合って心地よかったが、俺は翔吾の背中を抱く気持ちにはなれなかった。
また文句を言われるんじゃないかと思っていたが、翔吾はなにも言わずに行為に没頭している。
『今はなにも考えちゃ駄目だ』そう自分に言い聞かせて目を閉じたら、勃起したナニが俺の竿を擦り上げてきた。
「う……」
生々しい感触に、萎えていた竿がビクリと反応した。
「ふふっ、これは感じるんだね」
翔吾は腰をグラインドさせてわざと擦り付け、太い竿が俺の竿を左右に転がすようにグリグリ擦る。
翔吾のナニは色こそ淡い色をしているが、華奢な体に不釣り合いな大きさだ。
それでグリグリやられたら……たまらない。
「つ、ぁ……」
擦れ合う度にナニがびくつき、勃ち上がって先走りを零した。
「うぅ……っ」
封じ込めた淫らな疼きが刺激され、さっきまでなにも感じなかった体が、嘘みたいに感じ始めてしまった。
指先が胸の突起を摘み上げただけで体中に淫猥な刺激が走る。
「ハァハァ、あ……っ」
「その気になった? じゃあ、もうやっちゃおっかなー」
翔吾は不自然な位明るく言って起き上がり、俺の足を抱えあげてローションを垂らしていった。
心は翔吾を受け入れる事を拒絶してるのに、体は次に起こる事を待ちわびている。
「テツ見て、ほら……入れるよ」
熱い塊がアナルに触れ、翔吾はテツに声をかけて中に押し入ってきた。
「う"っ……!」
これはマジで洒落にならない。
親父さん譲りのナニは、強烈な圧迫感をもたらし、堪らなくなって首を反らしたら、先端が前立腺に当たって目が眩んだ。
「ん"あ"っ! はっ……ハァハァ」
「うん、気持ちいい、最高だよ友也……やっとひとつになれた」
翔吾は気持ち良さそうに息を吐き出して呟き、俺にかぶさってきたが、首筋にキスをしながら腰を動かしている。
張り出した先端が前立腺を擦り上げ、理性が吹き飛んで制御不能に陥っていった。
「っ、ハアハア、ああっ、あっ……!」
ハラワタを貫く衝撃に堪らず声を上げたら、翔吾は不意に動くのをやめた。
「こんなに感じるのは……テツのお陰だね、テツどう? 今の気持ちを言ってみて」
翔吾はテツに向かって聞いたが、俺は翔吾が止まった事で体が楽になり、気が抜けたようにぼんやりとテツを見た。
「特になにもありません」
テツは俺が翔吾とやってるのを目の前で見てるのに、おかしい位冷めた顔をして答える。
「なにも感じないって事はないだろ、友也を屋敷に連れて来た時から、気に入って目をつけてたくらいだ、僕に取られて悔しい?」
翔吾はムキになって問いかける。
「いえ」
「なにも思わないの? そんな筈ないよね、内緒で会ってた癖に、あのアパートに連れてったんでしょ? あそこはよほど気に入った相手じゃなきゃ連れてかない、ふふっ、知ってるよ、2階はプレイルームになってるしね」
「俺はあくまでも補佐だ、若の面倒をみるのが俺の役目、それだけです」
「ふーん、夢中になってたわりにはやけに冷たいね、親父にびびった? パパには対抗できないもんね」
「おやっさんには拾って貰った恩がある」
「ふふっ、で、親父に掘られた、だからなにも言えない」
「なんとでも仰ってください、俺は与えられた罰を受けるだけっす」
俺は翔吾に貫かれたまま、2人の会話を聞いていたが、テツは一貫して冷静に返している。
居た堪れなくなってテツを凝視したが、テツはさっきとおんなじ表情だった。
何故そんなに落ち着いていられるのか、悲しくなってきた。
「友也……やっぱりテツは遊びだったんだよ、可哀想に、僕が癒してあげるから」
翔吾はここぞとばかりに言った。
けれど、俺はテツがどうだろうが、翔吾に対する気持ちは変わらない。
「俺は……翔吾の事、大切な友達だと、お……思ってる」
「意地っ張りだなー、いいよ、そういう事なら、僕も……意地でも振り向かせてみせる、これ、こないだの薬、ふふっ」
だけど、俺の言葉は翔吾に届きそうになかった。
翔吾は繋がりをほどいて自分の竿に媚薬を塗りたくり、媚薬付きの竿を再び突き込んできた。
腹の奥にズンっ!と重い振動が響き、それだけでもキツかったが、翔吾は俺の両足を肩にかけて被さった。
張り詰めた先端が奥を突き上げ、前立腺とその奥を抉りあげ、S字結腸まで押される感覚がする。
ビリビリとした強い刺激が継続してわきおこり、体中に淫靡な痺れが広がっていく。
「っ……! はああっ! ……あう"っ、ああっ!」
怒張した竿はそのままでも強烈な快感を与えてくるのに、媚薬が効いてきて……気持ち良すぎてわけがわからなくなってきた。
「ふああっ! も、もう……っ! もう……駄目だっ、はあぁっ!」
股間のナニが体液をダラダラと漏らしていた。
「トコロテンだ、ふふふっ、いいよ、堪らない、テツ、ほら見て、トコロテンしたよ」
翔吾は俺の足を肩から降ろして得意げに言ったが、テツは無言のままだ。
「う……、テ、テツ……」
泣きたくなり、テツへ向かって手を伸ばした。
「友也、いい加減にしろ! 駄目だからな! 僕を見ろ!」
翔吾は激昂して俺を怒鳴りつけ、荒々しく突き上げてきた。
「う……うぁっ……! し、翔吾……! やめっ、あっ、ああっ!」
竿が体内を乱暴に往復し、内蔵を打たれるような衝撃に体中が強ばる。
華奢な体が身軽に揺れ動く度に、強靭なイチモツが淫猥な刺激を叩き込み、許容範囲を超える快感に涙が滲み出してきた。
「くっ、ああっ! やめっ、壊れる、っああ!」
「友也、僕のものになれ! なるんだ!」
翔吾は無慈悲に快楽を貪り、繰り返し俺に言い聞かせていたが、俺は意識が飛びそうになって声すら出なくなっていった。
気絶する寸前、奥深く突き上げた竿が俺の中で弾け、放たれる熱が体内に染み渡って体中を蕩けさせた。
朦朧とする中で淫蕩に浸るしかない。
静かな部屋に荒らげた息遣いだけが響いていたが、やがて体の熱が冷めて呼吸が穏やかになると、翔吾はゆっくりと起き上がって体を離した。
「ふふっ……、あははっ! これで僕のものだ、だよな? 友也」
俺は……空っぽになった頭で高笑いする翔吾を見ていた。
その後、翔吾に促されてシャワーを浴び、服を着て何事も無かったかのように3人で過ごしたが、テツは前みたいにふざけて絡んでこない。
楽しそうに話をしているのは翔吾だけだ。
「若ー、いいっすかー?」
俺は無感情に相槌を打っていたが、ノック無しでドアの向こう側からイブキの声がした。
「ああ、どうぞ」
「失礼しまーす」
翔吾が面倒臭そうに答えると、イブキはドアを開けて部屋に入ってきた。
「あの~若、黒木の兄貴が、若に話があるらしいんですが~」
一体何を言うのか、じっとイブキに見入っていたら、イブキは黒木の事を口にする。
「また? もー、しょうがないなー、連れて来て」
「はーい、ただいま!」
翔吾は呆れ顔で返し、イブキは軽い足取りで部屋から出て行ったが、俺は何故黒木がここに来るのか……不思議に思った。
「若、失礼します」
さほど経たないうちにドアをノックする音がして、黒木が頭を下げて遠慮がちに部屋に入って来た。
「黒木、なに?」
「あ、矢吹に、友也も一緒なんっすね、じゃ、またでいいっす」
黒木には1度会ったきりだが、あんなのを見てしまったせいで……印象深い。
だが、黒木はわざわざやって来たというのに、俺とテツがいるのを見て、バツが悪そうに頭を下げて部屋を出て行った。
「ったく……しょうがないなー、ちょっと行ってくる」
翔吾はぶつくさ言って立ち上がると、黒木の後を追って部屋から出た。
「黒木さんが何故ここに……?」
俺はよくわからない状況に、つい呟いていた。
「ふっ、あいつ……、あん時若にやられちまって、若に懐いちまったんだよ、クックック……」
テツは意地悪な笑みを浮かべて言った。
「えっ、なにそれ、懐くって……マジで?」
黒木は翔吾に無理矢理相手をさせられ、嫌々だった筈。
「黒木もバイだが、ウケに回ったのは若が初めてだ……、でー、若に惚れちまったんだよ、どうやら目覚めちまったらしい……、っははっ!」
テツは面白がっているが、俺はさっきあんな目に合わされたばかりだし、黒木を笑う気持ちにはなれなかった。
「テツ、笑い事じゃねーし、これから俺……また翔吾に……」
俺が翔吾に抱かれるのを目の当たりにしたというのに、テツは黒木の事を言ってゲラゲラ笑う。
こんな事になる前はあんなにラブラブだったのに、どうしてそんな風に冷静でいられるんだ?
「悪いが、俺の事は忘れてくれ、おめぇは女でも作れ」
しかも、追い討ちをかけるように突き放すような事を言う。
テツに縋るつもりはなかったが、ただ……せめて慰めて欲しかった。
俺にはテツが何を考えてるのか、さっぱりわからない。
「そんな……テツ、俺」
「俺はクズだ、朱莉を見りゃ分かる」
「嘘だよな? わざと言ってるんだろ?」
「ま、女が無理なら、若と上手くやりな、もういいだろう」
「待って!」
テツは立ち上がってドアの前に歩いて行こうとする。
慌てて追いかけたら、入れ替わるように翔吾が戻ってきた。
「ん、テツ……」
翔吾はキョトンとした顔でテツを見上げる。
「俺はこの辺りで失礼します」
テツは翔吾に頭を下げて部屋から出て行った。
俺は素っ気なく立ち去るテツの背中を見送るしかなく、茫然とその場に立ち尽くしていた。
それから後は翔吾と2人で過ごし、帰りはイブキに送って貰った。
けれど、心が死んだように感情を無くし、イブキのウザイお喋りすら耳に入ってこない。
テツとは、本当にこれで終わりなんだろうか……そんなの信じられなかった。
翔吾に抱かれるのは、割り切ればなんとかなる。
けど俺は……無理矢理別れさせられてもテツの事を諦めちゃいなかった。
なのに、もし本当にテツと復縁できないんだとしたら……何もかもどうでもいいような、酷く投げやりな気持ちになってくる。
帰宅したら、俺は自分の部屋に引きこもっていたが、日が暮れてしばらく経っても姉貴は帰って来ない。
火野さんとデートでもしてるんだろう。
姉貴が羨ましくなってきた。
ベッドに寝転がって天井を見ていたら、電話がかかってきた。
───竜治だ。
翔吾の屋敷に行く前に、帰るのは多分19時過ぎになると報告しておいたので、メールじゃなく直接電話してきたんだろう。
『……はい、もしもし』
『おお、俺だ、今家か?』
『はい』
『今日はどうだった?』
『最悪です……』
『ははっ、だろうな、矢吹はおめぇに何か言ったか?』
『自分の事は忘れろって、女とでも付き合えって言いました』
『そうなのか? ネックレスまで渡したわりにゃ、いきなりバッサリ切ってきたな』
『俺は別に……あてになんかしてなかった、頼ろうとは思ってない、ただ……そんな言い方をしなくても……』
ほんとは竜治に話すつもりはなかったが、溜まった鬱憤が口をついて出ていた。
『ふーん、何を考えてるのか分からねーが、矢吹が相当遊んでたのは確かだからな』
テツは相当遊んでた……。
そう聞いたら益々気分が落ち込んだ。
『すみません、ちょっと話をする気分じゃないんで……』
電話を切ろうと思った。
『待ちな、今から行ってやる』
ところが、竜治は突拍子もない事を言い出した。
『えっ……、けど、もう20時になるし』
『かまやしねぇ、こないだ姉ちゃんを助けた場所で待ってろ、そうだな、今出先なんだが……30分後だ、いいな?』
『あ、はい……』
強引に押されて断れなかった事もあるが、本音を言うと……寂しかったのもある。
だから……竜治の誘いに乗った。
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