32tempted

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32tempted

◇◇◇ 出かける用意を済ませ、竜治に会う為に家を出た。 脇道を抜けたら、いつもテツが迎えに来ていた場所に竜治の車が止まっている。 もうテツや火野さんを気にしてコソコソする必要はないから、別に構わない。 「あの……どうも」 「おう、ほら、早く乗れ」 挨拶して車に乗ったら、竜治は直ぐに車を出したが、どこへ行くつもりなのか……そんなのはどうでもいい気分になって、聞く気にならなかった。 「さーて、どうしたもんか……、飯は?」 「食べたくないので……」 マジで食欲がない。 「ふう、そうか……、矢吹にフラレて……そんなにショックか?」 「別にそんなんじゃないです……」 本当は竜治の言う通りだったが、嘘をついた。 「バレバレだぞ、いいじゃねーか、たかが18で意地を張るこたぁねー、認めちまいな、俺はおめぇより17も年上だ、おめぇが泣き言をいって泣いたとしても……、そんなもん、なんとも思わねーよ、聞いてやると言っただろ?」 竜治はテツよりも年上で35才らしい。 その上妻子持ちだし、やっぱり包容力があるのかな? 優しい事を言ってくれる。 「はい……、俺……今まで色々あったけど、テツがいたから耐えられた、だけど……、もうどうでもいい」 肩の力が抜け、本音を漏らした。 「投げやりになっちまったか、でもよー、カシラはおめぇを離しちゃくれねぇだろ、おやっさんと一緒じゃたちが悪いな、今日はおやっさんは留守だったが、居る時はおめぇ……おやっさんとも寝る事になるぜ、無茶苦茶だな、矢吹も馬鹿じゃねー、勝ち目がねーと分かって、自分なりにケジメをつけたんだろう」 確かに勝ち目はない。 「それはわかってます、でも……それでも良かった、構わねぇ、テツと繋がっていられるなら、それで良かったのに……、テツの前で翔吾に抱かれ……それでテツは俺にあんな事をいきなり言った、ひでぇ……最低だ!」 そんなのはわかっているが、あの状況で別れを告げるとか……酷すぎる。 「おめぇ、矢吹の前でやられたのか?」 「はい……」 「そりゃあ……また、随分酷な真似をしたもんだな、あのカシラ、女みてぇな面ぁしてガタイもひょろひょろな癖に……、意外だな、ま、おやっさんの血をひいてるからな」 「俺は翔吾と友達をやめるつもりはない、だから……あくまでも友達のつもりで付き合います……、抱かれる時は自分を殺します、こっから先どうなろうが……そんなもん、知りません」 「ちょっと待て、友也、こっちぃ向け」 「……はい」 「そいつは俺が許さねー、自暴自棄になるな、確かにつれぇだろうが、頭を冷やして考えろ、そもそも矢吹はおめぇを無理矢理やっちまったんだぜ、あいつは遊び慣れてる、で、おめぇを上手くものにしたんだろうが、おめぇにはおめぇの生き様がある、矢吹に夢中になってそこら辺を一緒くたにするな、若い時はつまらねーもんについ夢中になるが、楽しい事も……つれぇ事も、ほんの一瞬だ、あっという間に年食って、昔の事を笑って語れるようになる、おめぇはまだまだこれからだ」 「そうなんでしょうか……」 「ああ、そうだ、俺が矢吹の代わりに力になってやる、現に俺は……おめぇとおめぇの姉ちゃんを助けたんだぜ、へへー、こんなに心強ぇ奴ぁ他にはいねぇだろ?」 竜治は恩を着せるような事を言って言葉尻で悪戯っぽくニヤリと笑う。 冗談めかして言うのを見たら、重苦しい気持ちが少し楽になった。 「な、飯、食ってねんだろ?」 そしたらもう1回夕飯の事を聞いてくる。 「はい」 「食え、肉だ、肉を食え」 竜治は肉を食えと言う。 「肉ですか?」 「おう、そうだ、肉を食や力がわいてくる」 テツと同じような事を言うからびっくりした。 「あ……」 「それでいいな?」 「はい」 たまたま言ったんだと思うが、なんだか妙に嬉しくなって……素直に頷いていた。 連れて行ってくれたのは、またしても個室完備な店だ。 コソコソしなくていいとは言っても、誰に見られるかわからない。 竜治は『一応用心した方がいい』と言ってこの店にしたのだが、色んな肉料理が食べられる店だった。 俺は焼肉を食べる事にした。 竜治は既に夕飯を済ませていたらしいが、俺に付き合って軽めに小皿をいくつか注文していた。 食事が済んで店を出たら『明日日曜で学校は休みだろ? なら、このまま泊まらないか?』と言う。 もちろんラブホだ。 無理強いしてきたわけじゃないが、今家に帰っても、また気分が落ち込みそうな気がした。 OKして家に電話を入れたら、母さんが電話に出た。 友達んちに泊まると言ったら『舞も今日はお友達の家に泊まるって行ってたけど、あんたまで、まったくー、揃いも揃って……』と文句を言っていたが、どうやら姉貴は火野さんのマンションに泊まるらしい。 姉貴は火野さんとくっついたんだから、もし体の関係を持ったとしても、もう構わないだろう。 とりあえず、母さんは承諾してくれた。 そして、俺は竜治と泊まる事になったが……。 めちゃくちゃ複雑な気持ちになる。 以前テツが、『おめぇと一晩中、朝まで一緒に過ごしてぇ』と……そんな事を言った。 結局それは叶わず、竜治と一緒にひと晩過ごす事になったからだ。 いざラブホに入ったら、ふと気になった。 奥さんや子供は? 家に帰らなくていいんだろうか? 「今日はゆっくり出来るな」 だが、竜治は腕を背もたれにかけてどっかりとソファーに座り、タバコに火をつけて笑顔で話しかけてくる。 夫婦間の事に、ガキの俺が口を挟んじゃマズいような気がするので、余計な事は言わない事にした。 「はい……」 「こっちに座れ」 呼ばれて竜治の隣に座ったら、肩を抱いてきた。 「タバコはいらねぇ」 竜治はタバコを灰皿で揉み消して、俺の肩を抱いたまま片手でネクタイを緩め、器用に外して首から引き抜いた。 「ふう、へへっ……、おめぇとこうしてゆっくり過ごしたかったんだ」 ぐいっと引き寄せられ、倒れ込むように胸板に寄りかかったら、竜治は手で頭の後ろを抱えるように押えつけ、俺の横顔に唇を当ててくる。 「う………」 擽ったくて小さな声が漏れた。 「いいな、おめぇ……可愛らしい面ぁしてるわりにゃわりかしキリッとした眉をしてるだろ、その眉が歪むのが……妙にそそる、美形といやそうだが、男らしさのある美形だ」 「そんなんじゃ……ないです、翔吾の方が美形だと思う」 「ああ、確かに美形だが、カシラは柔和な顔立ちだ、おめぇはなかなか根性座ったところがある、そういうのは顔に出るんだ」 竜治は耳や首にキスしながら俺の事を褒めたが、肌を撫で回す唇と髭のチクチクした感触はヤバイ。 「あ、あの……、シャワー浴びてきます」 早くも腰から背中の辺りがぞくぞくし始め、照れ臭さが入り交じって堪らなくなった。 「一緒に行こう、ここで脱いじまおう」 竜治は一緒に行くと言って潔く服を脱ぎ始めたので、俺も服を脱いでいき、2人して真っ裸になって脱いだ服をソファーへ置いた。 「タトゥーはどうだ、治ったか? 後ろに向いてみろ」 「はい」 「わけぇから傷の治りがはぇーな、これなら掻きむしったりしなきゃ大丈夫だ、矢吹もこんなもんを刻みつけといて、女と付き合えっていうのはあれだな……、ま、タトゥーと言ってもちいせぇし、消そうとおもや消す事は出来るんだが」 竜治は尻を見ながらタトゥーの事を言ったが、消す事が出来るのはなんとなく知っている。 「あの、やり方は知りませんが、そういうのが出来るのは知ってます」 「そうか、やり方はレーザーを使ったり、切り取ったりするんだが、どのみち傷跡が残るな」 「そうですか……」 ……痛そうだ。 「タトゥーとりてぇか?」 「い、いえ……、今のところは」 「そのネックレスをつけて行ったのか?」 消したいかと聞かれて一瞬動揺したが、そういえば……またネックレスの事を忘れていた。 母さんは小言を言うのが忙しく、ネックレスには気づいてない。 だから、ついうっかりつけっぱなしにしてた。 「はい……、あの、外します」 俺はまだテツに対して踏ん切りがつかない。 タトゥーは痛い思いをしてまで消そうとは思わないが、ネックレスを竜治の前でつけてちゃ悪い。 「いいじゃねーか、つけときゃいい、そいつはいい代物だ、手切れ金代わりだと思やちょうどいい」 竜治はたいして気にしてないようだが、『手切れ金』という言葉が胸にグサッと突き刺さった。 「よし、行くぞ」 目を伏せていたら肩を抱かれ、竜治と一緒に浴室へ行く事にした。 竜治は先に浴室に入り、俺はトイレで体の中を綺麗にした後で浴室に行ったが、中に入ると、竜治は浴槽に湯を溜めながらシャワーを浴びていた。 「おう、来たか、こっちへ来な、洗ってやる」 手招きされて傍へ行ったら、竜治は俺の体に湯を浴びせてきたが、洗って貰ってばかりでは悪い。 ざっと洗って貰ったところで声をかけた。 「あの俺……、背中流します」 「ん、そうか? へへっ、じゃやってくれ」 竜治は嬉しげに笑って椅子に座ったが、ラブホ定番のあの椅子だ。 洗う物は置いてなかったので、外からフェイスタオルを1枚持ってきた。 浴槽の湯が溢れそうになっていたので湯を止め、タオルを泡立てて竜治の背後にしゃがみ込んだ。 迫力のある毘沙門天を目の前で見たら、泡をつけていいものか戸惑ったが、思い切って肩の辺りからタオルを当てていった。 ゴシゴシと背中を洗っていくと、刺青は白い泡に覆われていき、竜治は凄く機嫌良さそうにしていた。 「へへっ、下っ端に洗わせるよりゃ100倍もいいわ、いや、それ以上だな」 俺は丁寧に肩から腕、腋の下や腰から尻の辺りまでタオルを当てていき、竜治の背中が泡だらけになったところで手を止めた。 「あのー背中は終わりましたが、これでいいですか?」 「へへー、まだだ」 竜治に聞いたら、竜治は後ろに手を回して俺の手首を掴んできた。 「わっ」 いきなりガシッと掴まれてびっくりしたが、竜治は俺の手を下腹に当てがった。 「前も洗え、タオルじゃなく、両手を使って洗うんだ」 「はい」 床に膝をついて背後から両手を回したら、割れた腹筋が手のひらに触れた。 「それとな、体も使え、おめぇは知らねーだろうが、ソープの阿波踊りだ、あれに近いか? へへっ、体を擦り付ける、ナニも擦りつけておめぇの体で洗うんだ」 竜治は俺にソープ嬢の真似をやらせたいらしいが……実はちょっとだけ知ってたりする。 朱莉さんとは本格的にやったわけじゃないが、なんとなくわかる。 手のひらで体の前部を擦りながら、体を竜治の背中に擦り付けていったが、厚みのある逞しい体をヌルヌルやるのは……妙に興奮する。 ナニを使えと言われていたから、竿を背中に押し当てて擦った。 色とりどりの肌を摩擦するうちに股間が熱くなり、段々気分が昂ってきた。 「おめぇのはカチカチになったな、俺のもだ」 竜治は俺の手を掴んでナニを握らせ、シリコン入りの竿が手の中でビクンと跳ねた。 それに応えるように俺のが跳ね、俺は興奮して衝動的に乳首を摘んだ。 「ここ……、いいですか?」 「ははっ、ああ構わねぇ、続けな」 摘んだ後で一応確認したら、竜治はあっさり承諾した。 片手で凹凸のある竿を扱きながら、反対の手で乳首を弄ったら、竜治は満更でもなさそうに身を任せている。 竿だけじゃ物足りなくなり、大きな玉をやんわりと撫で回していると、竜治は俺の手を掴んで中断させた。 「よし、そのくらいで一旦しまいだ」 シャワーでさっと体を洗い流した後、一緒に湯船に浸かった。 「ほら、きな」 「あ……」 「遠慮するな、抱いてやる」 後ろ向きに抱かれ、子供が抱っこされるような体勢で座らされた。 「なんか……子供みたいで恥ずかしいです」 「俺はな、ガキの扱いにゃ慣れてるんだ、へへっ、気持ちよくしてやる」 竜治は片手を前に回して俺の竿を掴み、ゆるゆると扱き始めた。 「うっ……」 首を下から上に向けてねっとりと舐められ、頭がぼーっと逆上せてきた。 ケツの溝に竜治の竿がはまり込み、溝をグリグリ擦りあげている。 「あ……、ハァ」 「矢吹に夢中になるのはわかるが、俺も悪くはねーだろ?」 ドスのきいた声が脳みその中心まで響き、それが起爆剤となってイキそうになった。 「っ…、イク、あっ……!」 突き抜けるような快感が走り、目が眩んで体が硬直した。 俺は竜治に手でイかされてしまった。 竜治は最後まで絞り出すように手を動かしてくる。 「全部出しな」 「お湯……、汚して……すみません」 「な事気にするな、そら、今度はこっちだ」 力が抜けて竜治に背中を預けたら、抱きかかえられてくるっと前に向かされ、足を開いて太い腰を挟み込んだ。 「次は……俺を気持ちよくさせてくれ」 竜治は焦れたように言って顔を傾けると、貪るように唇を吸ってきた。 堪らず肩を抱いたら、大きな手で尻臀をぎゅっと掴んでくる。 「ふっ……!」 鼻息と一緒に鼻から声が漏れ、顔がかーっと熱くなった。 竜治の竿が下腹に当たって揺れ動き、コツンコツンぶつかっている。 たまらなくなって竿を握ったら、竜治はキスをやめて耳元に顔を寄せてきた。 「このまま入れるぞ」 「じゃあ……、ローション……とってきます」 また気絶するかもしれないが、俺は既に歯止めがきかなくなっていた。 「その必要はねー、ここにある」 すると竜治は背中の方へ手をやり、浴槽の中からローションを取り出した。 「え……いつの間に」 竜治は先に浴室に入ったから、その時に持ち込んでたんだろう。 「準備がいいだろう? やっぱ外だ、このままやったらのぼせちまう、湯から出てやるぞ」 得意げに言って湯から出るように促してくる。 指示に従って浴槽から出ると、壁に両手をついて尻を突き出すように言われた。 すぐに言われた通りの格好をしたら、竜治は俺の後ろにしゃがみ込んで大胆に尻臀を開いた。 「あっ……」 もう抱かれてるとはいえ、そんな事をされたらやっぱり恥ずかしくなる。 「スケベな尻だ」 けれど恥ずかしがってる場合じゃなく、ヌルッとした温かな物が後孔に触れてきた。 すぐに舌だと分かったが、肉厚な舌がヌルっと動き、体がビクンと震えた。 「ひくついてるぜ、入れて欲しいか?」 「ハァ、あっ……あの」 欲しかったが、シリコン付きのナニを食らうと思ったら躊躇してしまい、言えなかった。 「言うのが恥ずかしいか? じゃ言わせてやる」 竜治はアナルにローションを垂らし、指先を挿し込んできた。 「あ、う、くっ……」 襞の内側は敏感な箇所だ。 そこを摩擦されたら、前立腺がじわりと疼き出した。 「こいつが欲しいだろ?」 昂る体を持て余し、壁に指を立てて息を吐き出したら、指の代わりにナニの先端が穴に触れてきた。 「っ……」 期待して身構えたが、竜治は意地悪く先っぽだけ出し入れする。 「どうだ、耐えられねーだろう、さあ、言ってみな」 ぬちゃぬちゃと音を立てて出し入れされたら、我慢できなくなった。 「い、入れて……欲しい」 「よーし、言ったな、気ぃ失うなよ」 竜治はぐっと深く押し入れ、焦らされたせいで強い快感が体を駆け抜け、思わず壁を引っ掻いていた。 「はぐっ……! あうっ……!」 「ゆっくり突いてやる……、今日は時間があるからな」 体中が震えて意識が散漫になっていったが、竜治は止まったまま乳首を摘み上げてくる。 「うくっ、ふっ、ハァハァ」 「ヤラシイ汁をいっぱい垂らしやがって」 竜治は俺のナニを掴んで言ったが、俺はいった後のドライイキ……あの状態に陥っていた。 「ハァハァ、あ、ああ、また……、おかしく……なる」 腹の中から淫らな快感が湧き出し、半立ちの竿がダラダラと粘液を垂らす。 「おい……、そんなに締めたらこのままいっちまうだろ、仕方ねーな、そろそろ種付けしてやるか」 竜治は両側から腰を掴み、竿を往復させ始めた。 「んくっ! あっ、あっ、あっ……」 けれど、ゆっくりとした一定のリズムで突いてくる。 シリコンが前立腺に当たる度に電気が走り、膝がガクガク震えたが、スローペースだから意識を持っていかれる事はなかった。 「よし、イクぞ」 竜治はそのままぐっと奥を突いて止まり、怒張した竿が脈打つのを感じた。 「あ……あ……」 体液が飛び散って腹の中が満たされていく。 「おっと、危ねー」 膝がガクンと折れ曲がって倒れそうになったが、竜治に抱きしめられて倒れずに済んだ。 1回目を終えた後、軽くシャワーを浴びてバスローブを羽織り、部屋に戻った。 「来な」 「はい……」 一緒にベッドに寝転んだら、竜治は腕枕をしてくれる。 「気ぃ失わずに、なんとかもったな」 「初めてです、俺、シリコンには弱いみたいで」 「あははっ、そうか……、ん? という事は矢吹も入れてるのか?」 「いえ、親父さんが……」 「おお、そういや昔ハワイで一緒にクルージングした時に、背中に生首が入ってるのを見たな、へえ、ナニもシリコン入りか、ちなみに……どんなやつだ?」 「リングです」 「おお、リングか、ありゃ効くぞ、おめぇ気絶したのか?」 「はい」 「はははっ、そうか、まあーけど、さっきは上手くいった、進歩だな、気ぃ失わせるのも悪くはねーが、後がつまらねー」 竜治はテレビをつけ、俺は竜治に寄り添ってのんびりと過ごした。 画面に映るのはAVではなく、普通の映画だ。 よく分からないが、古い映画で西部劇だった。 ガンマンが銃をぶっ放すのを漠然と見ていたら、『テツと2人でこんな風に過ごしたかった』……って、そんな事が頭の中に浮かんできた。 内ポケットからイチジク浣腸を颯爽と出したり……。 いかがわしい物を携帯したり。 わざとピンポンを押して俺を慌てさせて喜び。 食わせてやると言って無理矢理弁当を食べさせてきたり。 裸エプロンをやろうと言ったり……。 アパートの2階が変態ルームになっていたり……。 イケメンの癖に超変態だし、すぐにふざける。 『俺の事は忘れろ』って言われても、忘れられるわけがない。 昼間あんな事があって疲れていたせいか、テレビを見ているうちに眠ってしまい、寝ながら竜治に抱かれた。 朧気な意識の中でうつ伏せにされ、押し入ってくるイチモツに呻き声を漏らしたが、背中に被さる重みを感じるうちに喘ぎ声をあげていた。 「眠ってりゃいいぞ、勝手にやる」 「む、無理です……」 勝手にやると言われても無理な話だが、竜治は1回目と同じように一定のリズムでゆっくりと突いてくる。 「へへっ、じゃ、耳だ」 「わっ……あ」 お陰で気を失う事はなかったが、ヌメる舌を耳の穴に突っ込まれたら堪らない。 逃げようとしたら、頭を押さえられてもっと舐められた。 「あうっ、も……、か……勘弁っ、ハァハァ」 結局、浴室で1回、夜中に3回、寝起きに1回、計5回交わり、翌朝の9時頃にホテルを出た。 朝だし、個室じゃなくても構わないだろうという事で、目についたカフェに立ち寄って朝食をとる事になった。 俺はパンケーキにミックスジュース、竜治はサンドイッチに珈琲だ。 「疲れたか?」 「いえ、大丈夫です」 正直言うと疲れていたが、笑顔で誤魔化した。 「そうか、ま、今日はゆっくり休め」 「はい」 「またこんな風に会えるか?」 こんな風にって事はまた泊まれるか? って意味だ。 もしこれがテツなら、即座に頷いていたと思うが、俺は少し迷った後で返事をした。 「あ……、多分」 「そうか、じきに夏休みだろ?」 「はい、あと1週間したら休みに入ります」 「なら、またそん時に一泊できるな」 「はい……」 「よし、決まりだ、楽しみだな」 再び泊まりで会う約束をしたら、竜治は強面な顔で笑顔を見せる。 「ん、友也……?」 黙々とパンケーキを口に運んでいると、聞き覚えのある声がして背筋が凍りついた。 ───姉貴だ。 よりによって同じカフェに来なくても……。 声がした方を恐る恐る見たら、姉貴がこっちに歩いてきたが、火野さんも一緒にいる。 「あっ、あの時はありがとうございました」 姉貴は竜治に気づいて頭を下げて礼を言ったが、俺はパンケーキにフォークを突き刺して……フリーズしていた。 「大した事じゃねー、気にするな」 「あ、はい、本当に助かりました」 竜治が手短に答えると、姉貴はもう一度竜治に向かって頭を下げ、その後で俺に目を向けた。 嫌な緊張感が走った。 何か言われると思って覚悟していたが、竜治に遠慮しているのか、姉貴はなにも言ってこない。 気まずい空気が漂ったが、俺は前を見据えて動けなかった。 「こんなとこで朝飯か?」 「おお、ま、そんなとこだ」 すると火野さんが竜治に話しかけ、竜治は何食わぬ顔で返したが、俺は2人のやり取りを見ながら……姉貴の刺すような視線を感じていた。 「友也、徹夜で手伝いか?」 勘弁してくれって思っていると、火野さんが俺に聞いてきた。 どうやら俺の状況を察してくれて、助け舟を出してくれたようだ。 「はい、そうです」 姉貴に聞こえるようにハッキリと答えた。 「そうか、そいつはたんまりバイト代貰わなきゃな、はははっ、じゃ、木下まただ」 火野さんは冗談めかして言うと、竜治に声をかけて踵を返した。 「おう、またな」 竜治が返事を返すのを見て、なんとか誤魔化せた……と思って姉貴を見たら、思いっきり疑うような目で俺を見ている。 「舞さん、こっちだ」 「あっ……、はい」 焦って目を逸らしたが、姉貴は火野さんに呼ばれて俺達から離れた席へ歩いて行った。 ヒヤヒヤしたが、ひとまず安堵した。 「こんなとこで出くわしちまったが、ま、火野が姉ちゃんに上手く言ってくれるだろう」 竜治は簡単に言うが……。 「はい……」 姉貴は1度竜治との事を疑ってたし、朝早くから竜治と2人きりで飯なんか食ってるから、絶対変に思ったに違いない。 火野さんが上手く話してくれたら助かるんだが……。 ◇◇◇ 俺は姉貴より先に帰宅したが、姉貴は昼になっても帰って来なかった。 寝不足で眠くて堪らず、ベッドに入って寝た。 電話の音で目が覚め、寝惚けたまま電話に出たら火野さんからだった。 姉貴は昼から仕事だったらしく、仕事場に送って行ったと言う。 でも俺は姉貴の日程には興味がない。 それよりも、姉貴は火野さんに絶対何か聞いてると思った。 『そうですか……あの、俺、竜治さんと一緒にいるのを姉貴に見られて、姉貴は疑うような目をしてたんですが、何か言ってました?』 『ああ、まあー、お前の事を心配してたが、舞さんには上手く言っておいた、疑われる事はないだろう、それよりおめぇ……、朝っぱらから木下とあんなとこにいたって事は、木下と泊まったのか?』 『はい……』 火野さんには言ってもかまわないだろう。 『なあ友也、俺は……本当の事をいや、おめぇを金で買った木下が、おめぇとあんまり親しくするのは賛成できねー、ただな、木下はおめぇや舞さんを助けた、だから付き合うのを認めたんだ』 『はい……』 『矢吹の兄貴はどうした、若や親父の事は知ってるが、だからと言って本当に別れたわけじゃねーよな?』 『テツの方から別れを告げてきました』 『兄貴がハッキリいったのか?』 『はい、だから俺は竜治さんの誘いに乗ったんです』 『そうなのか? 兄貴がおめぇに別れを……、そいつは変だな』 『もういいんです、俺、割り切っていきますから』 『ちょっと待ちな、兄貴は理由もなく突き放すような男じゃねー、きっとなにかわけがある』 『火野さん、いつも気にかけてくれてありがとうございます、でも俺は大丈夫です、姉貴の事を引き続き宜しく御願いします』 『友也、待て! 早まるんじゃねぇ、矢吹の兄貴はお前をあっさり捨てるような真似はしねぇ、兄貴を信じろ、木下に深入りするな』 『深入りするつもりはないです、ただ、断わる理由も無い、それだけです』 火野さんは竜治の事をよく思ってないようだが、堅物の火野さんなら、当たり前と言えば当たり前の事かもしれない。 それに、俺だって本当はテツを信じたいし、みっともねぇけど未練タラタラだ。 でも、あんなにキッパリ別れを告げられたら、寂しくて辛くて……耐えられねぇ。 深入りするつもりなんかないけど、心に空いた穴を埋める事が出来るなら、やっぱ竜治に頼りたい。 翔吾の方は何の連絡もなかったのでホッとしたが、日が暮れかけた頃に竜治から電話がかかってきた。 カフェではあまり気にしてないように見えたが、一応姉貴の事が気になってたようだ。 どうなったか聞いてきたので、火野さんが上手く誤魔化してくれたと伝えた。 その後は30分ほどたわいもない話をして電話を切ったが、なんでもない話なのにやたら楽しく感じた。 時計を見たら午後18時。 腹が減ってきたので下に降りて何か食おうと思ったが、その前に……俺はテツから貰ったネックレスを首から外し、カバンの中にしまい込んだ。 次に翔吾の屋敷へ行く時は、もうつけていく必要はないだろう。
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