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34tempted(この回も18〇回、3P入ります、苦手な方は回避願います)
◇◇◇
親父さんと会った後、帰る前に翔吾の部屋に寄ったが、黒木はちゃんと黒服を着てソファーに座っていた。
翔吾は黒木の向かい側、自分の隣に座れと俺に言ってきたが、俺は何か嫌ーな予感を覚えながら座った。
なんとなく黒木から目を逸らしていたが、翔吾は黒木の事など眼中に無いといった様子で、初っ端から親父さんとの事を聞いてきた。
仕方なくざっくり話したら、苛立つように舌打ちして……いきなりキスをしてきた。
その瞬間、向かい側から殺気を感じた……。
しかし、どうしようもない。
キスを終えた時には、鋭い眼光が真っ直ぐに俺を睨み付けていた。
そんなに睨まれても困る……。
俺だって、本当は翔吾とこんな真似をしたくない。
だが最悪な事に、翔吾は黒木に俺を送らせると言う。
めちゃくちゃ焦った。
『イブキ君は?』と聞いたら、今買い出しで留守だと言い、『じゃあ寺島さんは?』と聞いたら、事務所に行ってると言う。
結局、黒木に送って貰う羽目になった。
黒木の車に乗る前、遠慮してるふりをして後ろに座ると言ったが、黒木は前に乗れと言う。
絶対何か文句を言うつもりだ。
嫌だけど……仕方なく助手席に座った。
話す事がないから黙っていたら、やっぱりというか……黒木の方から話しかけてきた。
「おめぇ、若に惚れてるのか?」
「いえ、こんな事言ったら翔吾に悪いけど、友達だと思ってます」
「じゃ、ハッキリ断れ」
「断りました、黒木さん……ホテルで一緒だったんだし、知ってるんじゃないですか?」
「わりぃ、あん時は真面目に聞いてなかった」
「最初は俺を見て面白がってた癖に……」
「あぁ"? 今なんか言ったか?」
「いえ」
「じゃ、嫌々か」
「俺はそういう関係になっても、翔吾とは友達でいたい、それだけです」
「そうか、だったらいい、矢吹とは連絡とってねーのか」
「はい」
「俺はその件に関しちゃよく知らねぇ、ひとまず、おめぇの気持ちを聞いて安心したが、俺の前で若とイチャイチャするな」
「いや、そう言われても、俺は奴隷みたいなものだから……、なにも言えません」
「くっ、奴隷か……、羨ましい」
「えっ……?」
「……ったくよー」
「あのー、今、羨ましいとか……聞こえたような気がしましたが?」
「空耳だ」
黒木は案の定翔吾の事を聞いてきた。
俺は嘘偽りない気持ちを明かし、黒木も一応納得はしたものの、それでも……イチャつくのを目の当たりにしたら、この先同じようなシチュエーションになった時に、黒木はまた嫉妬するんじゃないか?
翔吾の奴隷になりたいらしいし、これは本気で翔吾に惚れている。
その後黒木は何も言ってこなかったので、俺は無駄な気を使わずに無事家に帰る事が出来た。
だけど、その日から翔吾とは会えなくなった。
組関連の付き合いもあるらしいが、親父さんのシノギ関連で色々と覚えなきゃいけない事があるらしい。
親父さんは不動産業、産廃業、風俗など、手広くやってるらしいが、表立ってやってるわけじゃなく、名義は全く別の人物だったりするようだ。
◇◇◇
目的もなくダラダラと過ごすうちに、あっという間にまた1週間が過ぎていた。
竜治からのメールは、くるのが当たり前となっている。
夜中にきたやつを朝起きてチェックするのが日課だ。
この日も朝起きてメールを開いてみたら、『今日、昼からデートしないか?』と書いてある。
結びにハートの絵文字つきだ。
思わず顔がニヤケていたが、デートをOKしたら面白い写真を撮ったから送る……と返してきた。
写真って……一体なんなんだろう? と思いながら開いてみると、真っ裸で吊り下げられた男が写っていた。
パッと見ただけで結構なインパクトがあるが、体中傷だらけで血が滲み、顔は赤黒く腫れ上がって誰だか分からない状態だ。
酷たらしい写真に思わず目を背けたくなったが、どこかで見た事があるような気がして、じっくりと見てみた。
このガッチリとしたガタイに坊主頭……。
───三上だ。
ぐったりと項垂れていて、意識を失ってるように見えるが、ハッキリ言って……生死すら危ういように思える。
唖然として背筋が寒くなった。
特に説明はないから詳細は分からないが、直ぐにメールを閉じた。
竜治は憂さ晴らしになると思って、わざわざ写真を送ってくれたんだろう。
確かに俺は三上に酷い目にあわされたし、三上がどうなろうが知るか! って、そう思った。
だけど、この写真を見てせいせいした気分になるか? と聞かれたら……むしろ逆だ。
破門、絶縁されるという事は、こういう事なんだと思って……ゾッとした。
約束の時間は、午後1時。
今日も家には誰も居ないから、家の前に迎えに来て貰う事にした。
2階の窓から下を眺めていると、見慣れた黒いヴェルファイアがやって来た。
ふと『降りて来ないかな……』と期待したが、竜治は車から降りる気配はなかった。
───当たり前か……。
苦笑いして、楽しかった思い出を振り切って下へ降りた。
車に乗ったら、竜治は俺を見てニヤリと笑う。
「ちょっとだけ久々だな」
「そうですね……」
俺が答えると、納得したように前に向き直ってアクセルを踏み込んだ。
「写真見たか?」
「はい」
「すっきりしただろう」
「ええ、まあ……」
「なんだ、浮かねー面だな」
「俺は……、三上さんにムカついてました、ただ、なにもあそこまで……」
「それだけ恨みを買ってたって事だ、奴がでけー面が出来たのは霧島のおやっさんのお陰だ、絶縁されたら丸腰もいいとこで……これまで奴に痛い目に合わされた連中……、ま、三上の場合、殆どが下っ端やチンピラだが、今まで自分の事を兄貴と呼んでた奴らから報復される、この稼業も一応人望が大事なんだ、奴がああなったのは、自業自得ってやつだ」
「そうですか……」
「おめぇの事は氷山の一角だ、あいつは下っ端の女にまで手をつけるクズだ、仲間の女に手を出すのはルール違反もいいとこだが、ゆすりたかりにゃ長けた野郎だったからな」
三上は霧島組でも大なり小なりリンチを受けたに違いないが、それだけじゃなく、絶縁された事で今まで自分がカモにしていた連中から、手酷いリンチを受けたらしい。
竜治の話を聞いたら報復されても仕方がないと思ったが、竜治が『野郎だったからな』……と過去形で話し終えた事が気になった。
「まあ、もう済んだ事だ、奴がどうなろうが、おめぇが気に病むこたぁねー」
三上がどうなったのか、思い切って聞いてみようかと思ったが、先に言われてしまい、聞く勇気がしぼんでいた。
「はい……」
何となく言葉が途切れてしまい、行先は竜治に任せて黙っていたが、車は街からどんどん離れ、辺鄙な山の方へ向かって行く。
夏休みに泊まりで合う約束をしていたし、ひょっとして……と思って聞いてみる事にした。
「こんな山の中に行くって事は……まさか温泉?」
「ああ、今日は泊まるぞ、いいな?」
「え……」
やっぱり当たっていたが、初めから決めつけて言われたらちょっと困惑する。
「駄目か?」
「い、いえ……いきなりだったんで」
「夏休みに入ったら泊まると言ってただろう」
「あ、はい……」
「じゃ、いいな」
「はい……」
また母さんに嘘をつかなきゃならないが、それはいい。
今たまたま翔吾が忙しくしてるからいいけど、もし暇にしてたらいきなり言われても無理だ。
まぁでも、運良く真面目に若頭をやってるし、竜治の誘いを断わる理由はなかった。
夕方頃になって着いたのは、山の中の温泉宿だ。
夏休みで日曜日という事もあるのか、日中は家族連れで賑わっていたようだが、子供は休みでも、親の方は明日は月曜日で仕事だろう。
土曜から宿泊していたと思われる家族連れは、俺達と入れ替わるように殆ど居なくなった。
俺と竜治は2間ある、1階の広い和室に居た。
母さんには直ぐに連絡した。
俺はこんな風に誰かと会う時は、スマホの電源を落としている。
翔吾に疑われたりしたら面倒だから『姉ちゃんが煩いから、電源切ってる事がちょくちょくある』と言ってある。
母さんに電話を入れた後で電源を切った。
昔ながらの温泉宿は、景色が見渡せるテラスがあり、テーブルと椅子が置いてある。
竜治は座敷に胡座をかいて座っていたが、俺はテラスの椅子に座り、外の景色を眺めていた。
なにもないただの山だが、自然を満喫できるのは悪くない。
ただ、大して面白くはないので、暮れゆく景色を見ているうちに、どことなく物悲しい気持ちになってきた。
テツに襲われた事は、親父さんに抱かれた事より鮮明に記憶に残っている。
ラブホに止まった時も似たような事を思ったが、テツと一緒にこういう場所に来てみたかった。
「ここの風呂はな、ちゃんと温泉をひいてある、いちいち浴場に行かなくてもちゃんとバストイレ付きの部屋だ、しかも風呂は岩風呂風にしてあるからな、雰囲気も悪くねーぞ」
「そうですか……」
竜治の説明を聞いても、今ひとつテンションが上がらない。
「ちっとも楽しそうじゃねーな」
竜治は俺の側にやって来て真後ろに立つと、両肩をがしっと掴んできたが、ずっしりとかかる重みにため息が漏れた。
「日が沈むこのくらいの時間って、意味もなく憂鬱になるんですよね……」
俺は誰もが言いそうな事を言い訳にした。
「俺じゃ不足か?」
でも、嘘は見抜かれてるらしく、問いかけられて胸がチクリと痛んだ。
「いえ……、そんな事は」
「矢吹はそんなによかったか?」
竜治にはバレバレだったらしい。
「いえ、そういうんじゃ……」
「ま、いい……、あんまり遅くなってもアレだ、露天風呂にでも浸かるか」
「あ、はい」
竜治はテツの事を言ってきたが、しつこく追求してくる事はなかった。
カバンを金庫に入れて立ち上がったら、先にシャワ浣を済ませておけと言われ、もしかして風呂でやるつもりなのか? と思ったが、聞にくいので黙っていた。
体の準備を済ませ、竜治と一緒に露天風呂に向かった。
竜治はこの宿の女将とは顔馴染みらしく、宿に着いた時に女将が出てきて親しげに話をしていた。
それとなく2人の会話を聞いていると、予め予約を入れていた事が分かった。
「おい、木下じゃねーか」
露天風呂に向かう途中、廊下で誰かが後ろから竜治を呼んだ。
「おお、如月……、なんだこんなとこで……骨休めか?」
竜治と共に立ち止まって振り返ったら、強面な男がニヤついた顔で立っている。
「へへっ、まあな」
「女か?」
「そんなとこだ、おめぇは……」
「ああ、こいつはな、親戚のガキだ、休みで退屈そうにしてたから、連れて来てやった」
「へえ、……のわりにゃおめぇとは似てねーな」
「そりゃ親子でも似てねー事もあるんだ、別におかしかねーだろ」
「けどよ、おめぇ……自分とこのガキは一緒じゃねーのか?」
「ああ、カミさんが他へ連れてった」
「ふーん、そうか……」
「ま、ゆっくり楽しみな、俺は露天風呂に行ってくらぁ」
「お、おお……、おめぇもな、それじゃまた」
如月という男は、開襟シャツから刺青を覗かせていたので、同業の知り合いだという事はわかったが、竜治は如月に俺の事を親戚の子供だと言った。
奥さんにバイセクなのを隠してるから、バレたらマズいんだろう。
けど、如月は俺を怪訝な顔で見ていた。
「あの……、今のは」
「ああ、ありゃうちのもんじゃねーが、知り合いだ」
「そうですか……、あの……、大丈夫でしょうか……見られたらマズいんじゃ」
「あいつは……おめぇんとこの人間で特に親しくしてる奴はいねーからな、大丈夫だ」
「そうですか……でもあの、竜治さんは奥さんに……」
「心配するな、こまけー事をいちいち気にしてちゃキリがねぇ、どこにも行けなくなっちまう、はははっ」
俺は知人に遭遇した事で竜治の事が心配になったが、竜治はあんまり気にしてないらしく、笑い飛ばして軽く流した。
「あっ、竜さん、露天に行かれるの?」
それからさほど歩かないうちに、また背後から声をかけられた。
「おう」
「またタオルもって来てないんでしょ?」
「おお、よく分かってるな」
「もう竜さんったら、あたしが用意するのをあてにしてるでしょ」
「ここの女将は美人な上に気がきくからな」
「いやですよー、うふふっ、お上手言って……、わかりました、はい、2人分のタオルと浴衣」
「おう、わりぃな」
「お食事はお酒を先にお召し上がりになられますか?」
「だな……」
「じゃあ、何かおつまみを見繕ってお出しします、じゃ、ごゆっくりどうぞ」
「おお」
声をかけてきたのは宿の女将さんだった。
そう言えば、タオルや浴衣は部屋に置いてあったような気がするが、女将さんは竜治が持ってきてない事を分かっていたかのように、手にしたタオルと浴衣を竜治に渡した。
しかもちゃんと2人分ある。
竜治はそれだけここを利用してきたという事だろう。
とにかく、竜治に持たせたら悪い。
「あの……、俺が持ちます」
「ん、そうか」
タオルと浴衣を受け取って脱衣場へ行ったら、客は誰も居なかった。
ロッカーにカバンと脱いだ服を入れて鍵をかけ、鍵のバンドを手首に通した。
腰にタオルを巻き、竜治について浴場へ入る扉の前に歩いて行ったら、竜治がサッシの引き戸を開けた。
すると、目の前はかなり広い露天風呂になっていた。
岩風呂というのか、天然石で出来ていて湯船の中にもいくつか岩がある。
周りは木々に囲まれてるから、景色はいまいちかもしれないが、いかにも露天風呂といった感じでいい雰囲気だ。
かけ湯をしてざっと体を洗い流し、竜治を待って一緒に湯船に浸かった。
「ふう、気持ちいいな」
「そうですね」
俺は竜治とは人1人分くらい間をあけて、肩まで湯に浸かっていた。
出来ればこういう場所でいかがわしい行為をしたくなかったからだ。
「こっちに来な」
だが、やっぱりそうきた。
「あのでも……誰か来るかもしれないし」
いつ誰が来るとも分からないし、側に行きたくない。
「じゃ、その岩の後ろに回れ」
ところが、上手い具合に大きな岩が近くにある。
「あ、はい……」
「ほら、来な」
仕方なく岩の後ろ側に回り込んだら、竜治は側にやって来て腕を引っ張ってくる。
「あ、あのっ……」
後ろから抱き寄せられて焦ったが、初っ端から首筋に噛み付くようなキスをする。
「こういう場所でやるのがおつなんだよ」
おつだとか言われても……いつガラッと扉が開くか、気が気じゃなかったが、竜治は起立したナニを俺の尻の谷間に当てがった。
「へへっ……」
竿の凹凸がケツの溝をグリグリ摩擦し、艶かしい感触に嫌でも体が反応してしまう。
「んっ……」
「このまま……入れるぜ」
竜治は前戯もそこそこに本番をやると言い出した。
本当にここでやるつもりらしい。
誰か来たらどうしようってハラハラするが、部屋でヤル準備をした時点でOKしたも同然だし、今更拒否るわけにはいかなかった。
「ローションねーからな、ちょいと痛てぇぞ、けど……いっぺん出しゃあとは楽になる」
先端がアナルに触れ、意識がそこに集中した。
「あ……」
「さすがにきついな」
竜治はグイグイ押してきたが、ローション無しじゃ入りそうになかった。
「ん……」
なのに体の奥がじわりと熱くなる。
俺の体は、勝手に竜治を求めている。
竜治は片腕で俺を抱いているので、太い腕に掴まったら、擦れ合う箇所にヌルッとした感触を感じた。
「先走りでいけるか? はえーとこおめぇん中に入りてぇって……涎を垂らしてるぜ」
竜治は乳首を摘み上げて先端を繰り返し押し付けてきたが、何度か繰り返すうちに先端がズブリとはまり込んできた。
「んんっ!」
襞が内側に捲れ込んで微かな痛みを感じたが、体内を蹂躙する圧倒的な存在感に熱い吐息が漏れた。
「あ……っ、ハァ」
「先走りが潤滑油になったな、このままいくが、大丈夫か?」
竜治は先端だけ入れて止まっているが、中途半端に咥えたままじゃ逆に辛い。
「大丈夫です……、やってください」
「それじゃいくぞ、しかし……ローション無しでやったら中が相当絡みついてくるな、やべーぞ、もう出ちまいそうだ」
軋みながら竿が奥へと進み、股間の竿がビクリと反応したが、ローションが無い分、体内の竿の形状がリアルに伝わってくる。
声が出そうになるのを必死に堪えたが、我慢できそうにないから手で口を塞いだ。
「ん"……! くっ、んっ……」
「よーし入ったぜ、最初はゆっくりだ」
竜治は根元まで入れると、膝をついて足を踏ん張り、俺の両膝を抱え上げて上下に揺らし始めた。
「あ"っ、くっ!ハァ、ん!」
湯船の中はある程度深さがある為、膝小僧は湯面から出ているが、体は胸から下が湯に浸かった状態だ。
体が揺れると周りの湯が緩やかに波立った。
竿はゆっくりと長いストロークで出入りしているが、竜治は興奮しているのか、いつもに増して竿が怒張しているように感じる。
「わざわざ溜めておいたんだぜ、孕むぐれぇ中にたっぷり出してやる」
低い声で被虐心を煽る事を言われ、下腹部が熱くなって前立腺が疼いた。
「んん……は、ぁっ……!」
駄目だ。
どうしても声が漏れてしまう。
「出すぜ、奥に種付けしてやる」
堪らず仰け反ったら、竜治は俺をしっかりと抱え直して抽挿を早めていった。
湯面がちゃぷちゃぷ波立って湯の飛沫が飛び散り、顔にかかって目や鼻に入ったが、俺は震える手で口を塞いで喘ぎ声が漏れるのを阻止した。
「いいか? イクぜ」
ズンと響く衝撃に一瞬目が眩み、裏返った声が漏れた。
「ひ……ぐっ!」
体内に熱い体液が飛び散り、腹の中をグッと押されて股間の竿が痙攣した。
「あっ……! ぐっ……! ふう、はあ、ハァ」
竜治は抱えた足を放し、背後から俺を抱き締めて竿を突き入れる。
「はあ、たまらねぇな……、お前、気絶しなくなったな、へへっ、おめぇを俺の色に染めてやるからな」
息を荒らげながら言ってきたが、俺の色に染めると言われても、俺は素直に喜べなかった。
けれど、体内で脈動を感じたら、気持ちよすぎてそんなのはどうでもよくなってくる。
「あ……はあ……ふっ、ハァハァ」
「エロい穴だな……、咥えたまんまひくついてるぞ」
竜治は指で結合部に触れ、たった今いたぶられたばかりの体がじわりと疼いた。
「ん……っ」
「一発じゃおさまらねぇ、まだやるぞ」
温泉の熱気と体の熱が一緒くたになり、頭がぼーっとして惚けたまま頷いたら、ガラガラっと引き戸が開く音がした。
誰かが入って来たらしい。
胸から下は見えないとはいえ、男2人が密着してるのを見たら、明らかにおかしいと思うだろう。
「あの……」
前のめりになって竜治から離れようとしたが、逆にぐいっと引き戻された。
「かまうか、文句は言わせねー」
「あの、で、でも……」
竜治は見られても構わずやるつもりらしいが、俺は焦りながらそれとなく聞き耳を立てた。
かけ湯をする水音から、やって来たのは1人だけのようだったが、さっき会った如月という事も有り得る。
「もしかして如月さん……じゃ?」
「やつは今頃女とやってる最中だ」
小声で聞くと、竜治は答えながら竿を引き抜いた。
繋がりが解けて俺は安堵したが、強引に反対側に向かされて座位の体勢にさせられた。
竜治はすぐに竿を入れようとしたが、俺は体を捩って抵抗した。
見られながらやるのは何度か経験したし、見られるとは限らないが、ここは露天風呂で不特定多数の人が利用する場所だ。
いくらなんでもさすがに嫌だった。
「だ、だめ……です…」
「へへっ…」
侵入を阻止しようとして足掻いたが、竜治は片腕で易々と俺を締め付け、握ったナニを穴にねじ込んだ。
「ふっ! う"っ……!」
中に出された体液が侵入を容易にし、竿がズブズブっと奥に入り込んできた。
「っはっ! ……んっ……んっ!」
後からやって来た人はまだ体を洗っているらしく、今の所は大丈夫だと思って安心したら、顎を掴まれて無理矢理唇を塞がれた。
「んふっー、んんっ……!」
息苦しさから逃れようとしても、頭の後ろを押さえ込まれて動けない。
湯気の熱気に包まれながら、ねじ込まれた舌に口内を掻き回され、暑さで酸欠になって頭がクラクラし始めた。
「ふっ……ぁぐ…う…」
「もっと狂え……、狂わせてやる」
竜治はニヤリと笑って強く突き上げ、我慢出来ずに声が漏れた。
「あぐっ! うあっ……!」
「そうら……派手に乱れろ」
続けざまに荒々しく揺さぶられたら、周りを気にする余裕がなくなり、湧き上がる快感に嬌声を上げるしかなかった。
「あうっ! ああっ……! ううんっ! あぁっ!」
「おい、兄ちゃんよ」
だが暫く突いた後、竜治は不意に動くのをやめて誰かに声をかけた。
「あっ、すみません!」
分厚い肩に縋りついて竜治と同じ方向へ目を向けたら、俺と同い年くらいの若い男がびびって逃げようとしていた。
「待てコラ!」
「あの、すみません! なにも見てません、どうか許してください!」
竜治の刺青を見たら、大概の人は怖がるだろう。
男はタオルで股間を隠して湯の中に立っているが、顔をひきつらせてペコペコ頭を下げている。
「おめぇ、さっきからずっと見てただろう、こういうのに興味あるのか?」
「いえ、その……」
「怒りゃしねぇよ、どうなんだ、言え」
「は、はい……」
「よし、こっちに来な」
あとからやってきた男はこの男に間違いないが、竜治は男を手招きして呼び寄せる。
男は怯えた様子で側にやって来ると、恐る恐る湯に浸かった。
「おめぇ、いくつだ?」
「20歳です」
「男とやった事あるのか?」
「いえ……」
竜治が男に質問すると、男は恥ずかしそうに答えた。
俺は何故竜治がわざわざ男に話しかけるのか、不可解に思ったが、竜治はニヤリと笑っていきなり立ち上がった。
「んっ……!」
落ちそうになって咄嗟に肩にしがみついたが、竜治は俺のケツを抱え込んで竿を突き入れる。
「あうっ……!」
小休止で静まった体が叩き起され、堪らず声をあげていた。
「友也、こいつに見せてやりな、おめぇが気持ちよくなるとこをよ」
竜治は俺の尻を男の方へ向け、見せつけるようにナニを出し入れする。
「ああっ、待っ! あうっ!」
他人にそんなとこを見られるとか、恥ずかしくて顔から火が出そうだったが、股が竜治の腰にぶつかる度に竿が勢いよく突き刺さる。
「そうら、そろそろドライに堕ちるぜ」
竜治は尻臀を鷲掴みにして竿を突き入れ、俺は羞恥心に塗れながらドライイキしていた。
「っ、あぁっ! や、やめっ!」
体がガクガク震え出し、もう見物人どころじゃなくなった。
「おい、これがドライイキってやつだ、へへっ、面白ぇか?」
竜治は俺の真後ろにいる見物人に話しかける。
「はい……、た、堪んねーっす」
男は声を上ずらせて答えた。
どうやらそっちのけがあるらしく、丸見えになった結合部を見て、興奮しているようだった。
「おい、兄ちゃん、次はおめぇにやらせてやる、今から種付けするからな、よく見てな」
竜治は言ったそばから尻臀をがっちりと抱え、体内を激しく突き上げてきた。
「うあっ……! あぁっ! 待っ……、激しっ……! んああっ!」
シリコンが弱点をまともに擦り上げ、蕩けそうな快感が体中を嬲り、竜治にしがみついて太い首を抱き締めた。
「いくぜ、奥に飛ばしてやるからな!」
竜治は息を弾ませて竿をねじ込み、張り詰めた竿が脈打って体液を飛ばした。
「あうっ! はあっ……あっ……ハァハァ」
熱い迸りが流れ込んでくると、ふっと力が抜けて手が離れそうになったが、竜治は俺を抱いて湯船に体を沈めた。
「駅弁……よかったぜ」
満足そうに言って大きな手で頭を撫でてくる。
「はあ、はあ、あうっ……」
竜治の肩にぐったりと寄りかかり、体内を満たす体液に満たされていたが、俺の穴はまだひくついて竿を締め付けている。
「へへっ、まだ欲しいのか、ったくエロいなーおめぇは……、よし兄ちゃん、立ってみな」
「あ、はい……」
「今の、興奮したか」
「い、いえ、その……」
「やらせてやる、3Pだ」
「え、でも……いいんですか」
「へへっ、初体験させてやるよ」
竜治は見物人と一緒に3Pをやると言い出した。
本来の俺なら絶対拒否るが、肉欲が先に立って拒否出来なかった。
竜治に抱えられて湯から出された。
「友也、四つん這いだ」
よろつきながら床に四つん這いになると、男は竜治に指図されて俺の後ろへ回り込んできた。
「入れてみな」
「は、はい……」
男の息遣いが聞こえてくる。
初めての事に緊張と興奮で昂っているんだろう。
竜治に促されて、ナニを中へ突き入れてきた。
「うぐっ!」
一気に突っ込まれ、目の前に火花が散って床に額をつけたが、男はぎこちない腰使いですぐに動き出した。
「わ、あ……」
「おめぇ、童貞か?」
「はっ、はい、はあ、はあ」
「そうか、ゆっくりと突いてみろ」
「は、はい、はあ、はっ、でも……、も、もう出そうっす」
「ははっ、そうか、初めてなら仕方ねぇな、中にぶちまけてやりな」
「い、いいんっすか?」
「構わねー、やれ」
竜治が中に出すように言うと、男は乱暴に竿を出し入れし始めた。
男の腰が尻にぶつかる度にパンパンと乾いた音が響く。
「くっ……! う"っ……! あ"っ! ハァハァ、うぐっ!」
床に手をついて衝撃を受け止めたが、乱暴で闇雲な突き上げは、トロトロになった体内に快楽を与えてくる。
「あ、出る! うっ……うぅっー!」
男は華奢な体に似合わず、力強く貫いてイキ果てた。
俺の腰を引き寄せてナニを思いきり突き入れ、肌に指を食い込ませて俺の中に熱い体液を放った。
脈打つ竿は、竜治のような圧倒的な存在感は無いが、勢いよく跳ねて体液を撒き散らした。
「あふっ、っ、ああっ……!」
股間で揺れる竿が、萎えたまま淫液を垂らしている。
「友也ぁ……、おめぇ最高にいい面ぁしてるぜ、兄ちゃんはおめぇが初めての相手だ、きっちり種を搾り取ってやりな」
竜治は俺の体を撫で回して言ったが、俺は石の床のひんやりとした感触を感じ、うっとりとしていた。
「はあ、はあ、あ……っ」
男はナニを引き抜くと、その場にへたりこんだ。
初体験をして気が抜けたんだろう。
俺は体内から溢れ出す体液を感じ、茹だるような熱気に包まれていた。
「あっ………ハァハァ」
竜治に2回、見知らぬ男に1回、計3回も種付けされたのに、体はジリジリと焼けるように疼いている。
「うっ……」
力が抜けて横向きに倒れてしまったが、竜治に仰向けに寝かされた。
「はははっ、まだくたばるのははえーぞ、連続で種付けだ」
竜治は俺の両足を肩にかけて被さり、真上からナニを突き入れてきた。
「っあっ!」
ズンっと重い衝撃が腹の底まで響き、鞭で打たれたような強烈な快感が走ったが、竜治は熱々になった体内をグチャグチャに掻き混ぜる。
「これだけ濡れてりゃ少々乱暴にやっても大丈夫だ、どうだ、シリコンが当たるだろう」
凸凹した竿が肉襞を摩擦してハマり込み、結合部から体液が飛び散り、雄臭い淫臭が辺りに漂った。
雄臭い淫臭は、鼻腔を通り抜けて脳内まで達し、麻薬のように意識を狂わせる。
「ふっ……、あぁーっ、あうっ! ああっ!」
竜治は起き上がって膝をつき、男を呼び寄せて俺の顔のすぐ脇に座らせた。
「よし、友也、兄ちゃんのをしゃぶってやれ」
男は膝をついて前屈みになり、握ったナニを唇に押し当ててきた。
淡い色をした先端は、先走りを垂らしてドクンと跳ね、俺はそうするのが当然のように男のナニを頬張った。
男は肩をピクリと震わせ、恥ずかしそうに目を伏せたが、ナニはガチガチに起立している。
先走りを舌で舐め取り、微かに塩気を帯びた粘液を飲み込んで、竿を大胆に吸い上げた。
「うっ……、はああっ、だ、だめだ、出る!」
男は情けない表情をして口走り、竿が大きく首を振って体液をピュッと飛ばした。
「っ、ん、うう……!」
口の中にパッと生臭い体液が広がり、舌に粘りつく粘液を飲み込んだら、竜治が体を倒してかぶさってきた。
男はすっと身を引いたが、竜治は3Pに興奮しているのか、色黒な顔をほんのりと赤く染めている。
「兄ちゃんのはうめぇか?」
ニヤついた顔で問いかけながら、シリコンで前立腺をゴリッと擦り上げた。
「ん"ぐっ!」
うめき声が漏れたが、間髪入れずに俺の膝を抱え上げて腰を大きく揺らし始めた。
「イクぜ、兄ちゃんのを足して4発目だ」
「う、あっ、ああぁっ……!」
激しい抽挿に顔を左右に振って悶えたら、猛る竿がぐっと奥を抉って体液を放った。
熱い体液が力強い脈動と共にドクドクと流れ込み、染み入る熱が体中を淫らに痺れさせた。
「っあ……、はあ、はあ、ああっ……ああぁっ!」
溜まった熱がどっと溢れ出し、汗が噴き出してきた。
竜治が満足して竿を抜き去ると、俺は竜治に支えられて湯に浸かったが、竜治は俺の目の前にやって来て男を自分の横に立たせた。
「両方いっぺんにしゃぶれ」
それから俺に命じてきたが、俺は言われるまでもなく、両手で竿を握って交互にしゃぶった。
我を忘れて夢中でやっていると、若い男が俺の後ろに回り込んで俺の腰を掴んだ。
男は無言で俺のケツを浮かせると、ナニを挿入してきた。
「ん"ふっー!」
粗野な突き上げに体が硬直したが、俺は異常な興奮状態に陥って、竜治のナニを喉奥まで咥え込んだ。
竜治は深く息を吐いて、俺の頭を優しく撫でてきた。
「おめぇ、咥えんの上手くなったな」
優しく語りかけてきたが、俺は体内を激しく突かれて昂り、夢中で竿に貪りついた。
すると、口の中の竿がドクンと跳ねて体液を飛ばした。
「うっ、もういっちまったじゃねーか、はあ、いいぜ、最高だ」
「んぐっ……」
俺は吐き出される粘液を飲み干したが、意外にも竜治の方が先にいって、後ろの男はまだイキそうにない。
竜治は満足したら俺から離れ、湯に浸かって岩にもたれかかった。
「ふう、兄ちゃんはわけぇから元気だな」
どうやら先に離脱したらしいが、若い男は荒々しく腰を打ち付けてくる。
「くはっ、あうっ!」
湯が飛び散って視界が揺れ動き、首を反らして悶えたら、男は腰を強く打ち付けて止まった。
「うっ、くっ!」
脈動と共に放たれる熱は、終わりのない快楽を与えてくる。
「ハァハァ、あ……、あうぅ……」
それからしばらくの間、俺は若い男に抱かれていた。
座位で男に貫かれ、抱き合ってキスをした。
「ん、んん……」
「っ、また出そう……」
混濁する意識の中で男を見たら、ズンっと奥を突かれ、ナニが体液をダラダラと吐き出していった。
俺はまたトコロテンをしていた。
「ふあっ……あふっ……!」
強烈な快感に呑まれ、訳が分からなくなってガクンと力が抜けた。
───気づいた時は若い男は居なかった。
俺は気を失っていたらしく、竜治の膝に抱かれて洗い場でシャワーを浴びせられていた。
「う……、俺……」
「おお、気ぃ失っちまったからな、ぬるめの湯を浴びせてやったんだ、大丈夫か?」
「は、はい……」
「ちょうど都合のいい奴が来て、楽しめたな」
竜治は楽しげに言ったが……体の熱は完全に冷めている。
俺はちっとも楽しくなかった。
起き上がって竜治から離れようとしたが、目が眩んで足元がふらついた。
「まだ立つな、倒れちまうぜ」
見知らぬ相手と3Pをやってしまい、ショックを受けていたが、感じまくった事は……もっとショックだった。
「すみません……、俺、先に出ます」
「おい、どうした、何か気に食わねぇ事があるなら、はっきり言え」
こんな事……テツなら絶対にやらないと思う。
「いえ、あの……、少しだけひとりにさせてください」
今は竜治から離れたかったが、腕を掴まれて無理矢理引き止められた。
「そうはいくか、あんなに感じてたのに、ひょっとして……3P嫌だったのか?」
竜治からしてみれば、ちょっとした遊びのつもりだったんだろう。
だけど、こんな事をされたら……さすがに嫌だ。
ひとりになって頭を冷やしたかったが、竜治は手を離そうとはせず、詫びを言った上で、こんな事は2度とやらないと約束した。
そこまで言われたら……折れるしかなかった。
風呂を出て部屋に戻った後は、奥の座敷に布団が並べて敷かれていた。
この旅館は、竜治の都合に合わせて動いてくれるらしい。
それから程なくして、ちょうどいいタイミングで酒や料理が運ばれてきた。
貝細工が施された座卓に料理が並べられたが、竜治はまず酒に手をつけた。
テツはよくビールを飲んでいたが、竜治は日本酒だ。
しかもテツとは違って、酌をしなきゃいけないような……変な使命感に駆られてくる。
「遠慮せず、ほら食え」
「いえ……あの、気が付かなくてすみません……、お酌します」
「おう、そうか? そいつはいいな、じゃついでくれ」
「はい……」
うちの父さんは、家で酒は飲まない。
誰かに酒をつぐとか、そんな事は初めてだ。
青いガラス製の洒落た徳利を持ったが、注ぎ方とか……マナーを知るわけがない。
片手で掴むのは何となく無作法な気がして、右手で徳利を掴み、左手を徳利の底にあてがって猪口に酒をついだ。
「へへっ、わりぃな」
竜治は照れ臭そうに笑みを浮かべ、ついだ酒をひと息に飲み干した。
満更でもなさそうなので引き続き酌をしたが、料理を食べるように言われ、酌をしながら料理をちょこちょこつまんだ。
すると、暫くして女将が挨拶しにきた。
着物をびしっと着こなした若女将は、竜治と同い年くらいに見えるが、お世辞じゃなく、本当に美人だ。
女将が去った後にまた違う料理が運ばれてきたが、竜治は少し酔っているようだった。
「友也ぁ、おめぇー、俺の妾になれ、男妾だ」
「え……」
いきなりとんでもない事を言い出し、呆気にとられたが、酔っ払いのいう事だから真に受けない方がいい。
「あのー、無理です」
キッチリ断った。
「そうか、そりゃー若頭と親父、2人してつるんでちゃ厳しいか……、うーん、しかし、言わなきゃ分からねー、バレなきゃいいんだからな、やっぱりなれ!」
「いや、あの……無理なんで」
「矢吹か、ったく、奴はおめぇをふったんだ、諦めろ!」
「テツの事はもういいと思ってます、ただ、あなたは初めに言いましたよね? 自分は奪おうとは思ってない、スリルが楽しいとか……、俺は遊びだと思ってましたが?」
「友也、おめぇ……、よくそんな口がきけるな」
「あの、助けて貰った事は感謝してます、それは嘘じゃなく本当です、けど……、そんな簡単に惚れたり出来るものじゃないし、第一、あなたには奥さんや子供がいる」
「そんなもん関係ねー、いつまでも矢吹に執着しやがって、何故俺になびかねー、言ってみろ!」
「テツは……確かに無理矢理だった、だけど……それまでに、そうなる前に……一緒に過ごした時間がある、だからです」
「っ……」
本当は、酔っ払い相手にこんなにムキになって言うつもりはなかった。
けれど、酔っていた筈の竜治は言葉に詰まって押し黙ってしまい、俺は……申し訳なくなってきた。
「あの……、生意気な事言って……すみませんでした!」
「いや……いい、俺は三上の件で人望が大事だと言ったが……、まさにそういう事か、おめぇを落とすには、随分時間がかかりそうだ」
頭を下げて謝罪したら、竜治は決まりが悪そうに苦笑いしながら言った。
「すみません……」
俺はただ謝るしかなく、もう一度頭を下げた。
夜遅くなって食事も終わり、シメに出されたデザートを食べていると、誰かがドアをノックした。
「木下、ちょっと邪魔してもいいか?」
「おお、構わねー、入りな」
竜治はあれからほどほどに飲んでいたので、程よい感じでホロ酔いをキープしている。
ただ、暑いと言って諸肌を脱いでいた。
やって来たのは如月だったので、俺は遠慮して、竜治の脇から離れて座り直した。
「どうした、女とよろしくやってんじゃねーのか」
「へへっ、まあな、あれから楽しんでたが、ちょいと中休みだ」
如月は浴衣の前をだらしなくはだき、喋りながら竜治の隣に座ったが、何気なく俺の方をチラッと見た。
「そうか、で、いつまで泊まるんだ?」
竜治はそれに気づいて何食わぬ顔で如月に聞いた。
「明後日にゃ帰る、しかしよー、まだ高校生くらいだろ? 温泉なんか来ても退屈なんじゃねーか? なあ、っと……名前は……」
だが、如月は俺に話を振ってきた。
「友也です」
「おお、友也か、温泉は面白ぇか?」
単なる好奇心なのか、特別な仲だと疑っているのか……その辺はよくわからないが、如月がこの部屋にやって来たのは、俺の事が気になったからじゃないのか?
「はい」
「おい、よしてくれ、俺は親戚だから慣れてるが、おめぇみてぇな厳つい男に気安く話しかけられちゃ、友也が縮み上がっちまう」
竜治は冗談めかして如月の意識を俺から離そうとする。
「厳つい? よく言うぜ、おめぇの方がよっぽど厳ついじゃねーか、背中に毘沙門天なんか背負ってよー」
「ははっ、おめぇの龍は生きてるか?」
「おう、ピンピンしてるぜ、見せてやる、へへっ、どうだ」
如月はまんまと乗せられ、自分も諸肌を脱いで背中を晒した。
「はははっ、確かにイキがいい、艶々してらぁ」
如月の背中には昇り龍が描かれていたが、2人は刺青の話題で盛り上がり、その後はシマがどうだとか、マージンがどうだとか、どこぞの誰がどうしたとか……俺には分からない話をし始めた。
俺は眠くなってきて、座ったままうつらうつらしていたが、竜治が気づいて先に寝てろと言うから、先に布団に入って眠った。
「友也、眠ったか?」
「ん……」
夢の中に居たら竜治の声がして、重い瞼をこじ開けた。
「腕枕してやる、来な」
掛け布団をはぐって手招きしているが、俺はふと時間が気になった。
「あ……今何時……ですか?」
「1時だ、ほら、来い」
「あ、はい……」
もっと寝たような気がしたが、意外と時間が経ってなかったらしい。
「よし、今日は何もせずに、このまま抱いて寝てやる、俺もな、おめぇとの時間を作る事にした」
竜治は意気込んで言ったが、腕を借りながら何気なく見たら、はだいた浴衣をちゃんと着直している。
3Pに及んだ事は、やっぱりどこか蟠りを残していたが、そんな事を言われたら……水に流してもいいような気がしてきた。
「俺、あんな失礼な事言って、ほんと……申し訳ないです」
「ん、ああ、もういい、俺もな、酔った勢いでつい言っちまったのがいけなかったんだ」
「あの……今更だけど……、俺、竜治さんに買われて良かった、もし違う人だったら、今頃どうなってるか」
「そんなこたぁもういい、それよりな、その手……やめといた方がいいぞ……、またやりたくなっちまうだろ」
俺は話しながら、無意識に竜治の懐の中に手を入れて肌を弄っていた。
竜治は困った顔をして言うと、俺から目を逸らした。
「俺は……構いません」
「構いませんって……、あのな、俺がこんなに堪えるこたぁ滅多にねぇんだぜ、なのによー、勃っちまったじゃねーか、ったくよー」
「はい」
「はいじゃ分からねー、どっちだ、やっちまっていいのか?」
「だから、その……大丈夫です」
「よし」
竜治はガバッと起き上がって、俺の上に乗っかってきた。
「おい、評価下げるなよ」
「あ……、はい、大丈夫です」
評価と言われて思わずクスッと笑って言ったら……乱暴に唇を塞がれた。
貪るように吸われると、無節操で淫奔な体が性懲りも無く昂り、のしかかる大きな体に制圧される事を望む。
俺は本当に欲しい物を頭に描きながら、与えられる刺激に喘ぎ声をあげ、竜治の巧みな愛撫に悶え、懲りもせずに欲しがって……、惰性で快楽に溺れた。
きっと適当にやれる。
明日は明日の風が吹く。
悦楽に耽り、成り行きに任せるしかなかった。
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