都橋探偵事情『擬態』

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「気になさらないでください。商売柄人を見る目が付きましてね、大概当たるんですよ」 「すごいんですね」  女は皮肉った。 「ところで誰からここを紹介されましたか?」 「氷見のスナックのマスターです。人捜しなら都橋と訊いたそうです。それで」  徳田は笑ってしまった。 「そうですか、そりゃありがたい」  女は便箋を横にして書き出した。 「それと娘さんの情報、最後に会ったのはいつですか?」 「7年前です。これがそん時の写真です。15歳です」  茶髪に染めた中学生である。口を開けて大笑いしているので素顔は想像しにくい。 「娘さんにしかない特徴はありますか?」 「髪は短かかったと聞きました」  聞いたと言うことは情報があって横浜に来たことになる。 「気になっていたんですが、どうして氷見から横浜に来て捜されているんですか?」  有力な情報が無ければわざわざ出向いてこないだろう。 「うちの子に似ていると電話があったんです」 「誰からですか石川さん?」  便箋にしたためた名前を見て言った。石川は急に名を呼ばれたので顔を上げた。そして答えを躊躇った。 「氷見の同級生です。言われたんです。警察に相談に行くなら名前を出さないで欲しいと。色々とあるんだと思います」 「私は警察じゃないから安心してください」 「でも教えたら行くんでしょ?」 「それが近道ですからね」  石川はボールペンを置いた。
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