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「小野田、風切って歩けよ。俺の相棒だってこの街に知らしめるお前のデビューだ」
昨日中西に声を掛けれれ二つ返事で制服を脱いだ小野田は一張羅の背広にステンカラーコートを羽織っていた。帽子は格子柄のハンチング、中西からのプレゼントである。ホシを追うとき後ろから目立つようにと選んだ柄である。
「はい」
憧れの刑事デビューである。それも伊勢佐木中央署切っての中西班長代理の声掛けである。
「坂東橋の蟹屋に礼をする。そしたら署に戻り10時になったら福富町を警邏する。お前が俺の相棒だってことをやくざや呼び込みの目に焼き付ける」
「はい」
小野田は何を言われても嬉しくて『はい』の返事をしていた。蟹屋に着いた。中を覗いて昨日水を出してくれた仲居を見つけて手招きした。
「おばちゃん、昨日はありがとう。お陰で悪党退治した」
「そうかい、力水になったんだ。そりゃよかった」
「一杯やりたいとこだがこれから仕事だ。今夜、そうだなあ終い際になるかもしれねえけど二人で来るから席を用意しといてくれる」
「あいよ」
二人は署に戻った。
「西」
田中課長に呼ばれた。中西は一人で出向いた。
「あいつはまだ正式な辞令が降りてないからな、あんまりヤバい事させるなよ」
田中課長は小野田を心配していた。中西の元相棒だった並木の二の舞はごめんだと釘をさした。
「分かってますって、無駄死にはさせません」
「何だ、無駄死にって、意味のある死も駄目だよ」
「だから分かってますって、頑張ります」
「おい、西」
中西は一礼して田中課長の前から立ち去った。
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